株式会社マネーフォワード(東京都港区)は『マネーフォワード クラウド債権管理』に新機能「消込候補提案機能」を導入した。従来の自動照合機能では処理しきれなかった振込依頼人名の表記ゆれや金額差異をAIが自動判定し、入金消込作業を効率化する。これにより、経理業務の手作業を減らし、債権管理の精度向上を狙う。
新機能の提供主体はマネーフォワードで、同社の「クラウド債権管理」サービス上に追加された。入金消込では請求情報と入金情報を突き合わせる工程が不可欠であるが、表記の不一致などの理由で自動処理できない案件が多く生じていた。AIを活用した今回の拡張により、人手による個別確認を最小化し、対応の迅速化を実現する。同社はクラウド会計・経理領域の中心サービスの一つとして、AI実装の幅を広げる取り組みを進めている。
AIが表記ゆれを判定し効率化
マネーフォワード クラウド債権管理では、これまで一括で入金消込を行うAI照合機能を提供していたが、振込依頼人名の表記違いを含むケースや、毎回異なる名義での入金などには対応できなかった。
今回の機能拡充により、AIが表記ゆれを自動学習のもと判定し、候補となる取引を提示する仕組みが加わった。加えて、請求と入金の金額が一致しない場合も、振込手数料や税込・税抜処理の違いを加味して候補を抽出する。
この提案機能によって、「どの請求に紐づく入金か」をAIが複数候補として自動的に提示するため、担当者は候補選定のみで完了できる。これまでの手作業削減に加え、入金処理の遅延や照合作業の属人化を防ぐ効果も見込まれる。
実装はクラウド上の既存データベースを活用し、顧客側のシステム構成を変えずに利用できる形式をとる。
入金手段の多様化が背景に
同機能の導入背景には、企業間取引での入金手段多様化と、それに伴う経理処理の煩雑化がある。バックオフィス業務のうち入金消込は、銀行振込・ネットバンキング・中間決済など複数経路の入金が並行することが多く、取引先によって表記が統一されないケースが頻発していた。これまでは表計算ソフトなどを併用し、人手で補完する作業が不可欠だった。
マネーフォワードは、この非効率の要因をAI技術で解消する方向を強めており、契約書レビューや経費精算支援など他のクラウドサービスにも順次適用を広げている。
背景には、同社が展開するAIエージェント群「マネーフォワード クラウド with AI」構想がある。AIを部署の一員のように機能させ、既存の業務フローのなかで学習・判断を担うモデルの実装が進められている。
クラウド基盤で連携を拡大
マネーフォワードのクラウド債権管理サービスは、同社のクラウド製品群とのデータ連携を基調としている。入金消込だけでなく、請求・入金・回収状況を一元で管理できるのが特徴だ。
AI提案機能追加後も同じ基盤で運用可能なため、企業は新たなシステム導入を伴わずに精度向上を享受できる。
同社のクラウド会計・債権系ラインナップには、「クラウド請求書」「クラウド債務支払」「クラウド経費」などがある。すべてがAPIおよびクラウド経由で統合され、金融機関・外部システムとのデータ連携を標準装備している。
今回対象の債権管理領域は、商流の最終入金確認を担うため、他のモジュールとともに業務データの整合性を確保する役割を持つ。
経営層のコメントと波及
マネーフォワードによると、経理・債権管理担当者の業務時間削減と精度改善の両立を重視した設計になっているという。従来型の業務プロセスを完全には変えず、AIが補助的に提案する設計とすることで利用者の心理的負担や習熟コストを低減した。社内では「AIがもう一人の作業者として支える仕組み」と位置づけている。
同社グループはAIソリューション企業「マネーフォワコンサルティング株式会社」との連携で、企業の業務フロー最適化支援を展開中である。これまで500社超のバックオフィスコンサルティングを行っており、その知見を今回の機能にも反映させた。業務の属人化解消と情報の一元管理が中核テーマとされている。
今後の注目点
マネーフォワードは今後もAI活用範囲を段階的に拡張し、債権管理を含むバックオフィス領域の自動提案化を進める方針を示している。
近年、AI導入を支援する「AXコンサルティング」サービスを拡充しており、SaaS運用だけでは効率化しきれなかった領域にAIを浸透させる動きが見られる。各クラウド製品間での学習データ共有が進めば、入金照合や契約管理など複数プロセスの統合提案が現実味を帯びる。今回の新機能は、同社が進めるクラウドAI化路線の次の段階を示したものといえる。