株式会社宮崎太陽銀行(宮崎県宮崎市)は2月9日、取締役会で自己株式の取得を決定した。普通株式を上限31万株、総額7億円を上限として福岡証券取引所で買い付ける。取得期間は2月10日から翌年2月9日までの1年間で、経営環境の変化に対応した効率的な資本政策を進める狙いだ。
同行が市場を通じて自己株式を取得するのは、経営の安定化と株主への還元強化を同時に進める資本政策の一環。福岡証券取引所での通常取引に加え、立会外取引による買付も含める。発行済み株式総数(自己株式を除く)の5.86%に相当し、調達コストや自己資本比率を勘案した柔軟な運用を掲げる。同行では、今回の決定を中長期的な企業価値向上の一環と位置づける。
31万株・7億円を上限に市場買付
取得対象は普通株式で、上限は31万株、総額7億円と設定された。取得期間は2026年2月10日から翌年2月9日まで。取得は福岡証券取引所での市場買付方式を採用し、立会外買付による取引も並行して実施する。
買付株式は発行済み株式総数(自己株式を除く)約528万株の5.86%にあたる。2025年12月末時点の自己株式保有数は5万6571株であり、取得後には保有比率の増加が見込まれる。
同行は「経営環境の変化に応じた柔軟な資本運営を実現する」ことを目的に、取得方針を明示。
金融庁が6月に改正した「金融商品取引法に関する内閣府令」では自己株式取得の取引要件が一部緩和されており、同様の市場買付を促す制度対応の流れも背景にある。法的枠組みに基づいた透明な運用方針を示したことで、市場との対話強化につなげる構えだ。
効率的な資本政策を推進
同行の経営戦略資料によると、「株主還元」「地域社会・顧客」「従業員」の三者にとっての企業価値最大化を目標とする。
自己株式取得はその中で資本効率とROEの改善を支える施策と位置づけられており、地域金融機関としての安定的なリスクテイクと収益性向上の両立を狙う。
これまで同行は累進配当政策に転換し、2024年4月に配当を前年より10円引き上げた。2025年度にも5円増配を見込み、総還元性向を30%程度とする方針を掲げている。
株主還元の柱は配当と自己株式取得の二本立てで、内部留保を生かした機動的な資本活用を続けてきた。2025年5月には11億円規模の自己株買いを完了しており、今回の7億円上限決定はその延長線上にある。
南九州で高シェア、ROE・収益性も改善
宮崎太陽銀行は、宮崎県内に73拠点、鹿児島県内に6拠点を持つほか、福岡・熊本・大分・大阪・東京にも営業拠点を展開している。南九州地域の貸出シェア・預金シェアいずれも30%を占め、地場経済に密着した地銀として存在感を持つ。
2025年3月期の自己資本比率は8%以上、ROEは5.14%と中期経営計画の目標を上回る水準を確保した。
2024年度の経常収益は738億円と前期比111億円増、当期純利益は93億円で40%超の増益となった。資金利益や有価証券配当が寄与し、経費抑制も進んだ。貸出金残高は2兆2464億円で前期比601億円の増加。一般貸出金利回りは1.325%まで上昇し、金利正常化局面での収益構造改善が鮮明となっている。
同行は「金利のある世界」での本業強化を掲げ、法人・個人向け貸出の双方で安定成長を確保している。
背景に「株主還元の持続力」確保
背景には、地銀各行の共通課題である資本効率の改善と持続的な株主還元の確保がある。金融機関の自己株取得は、PBR(株価純資産倍率)0.3倍前後と低位にある株価に対して、資本削減によるROE改善と市場評価向上の両面で効果があるとされる。
同行の時価総額は約130億円、発行済株式590万株規模であり、今回の取得上限7億円は年間利益の約1割に相当する。
金利上昇による貸出利回り改善が進む一方、金融再編や人口減少による手数料収益の頭打ちが見込まれるなか、自己株式取得は将来の成長投資と還元のバランスを取る施策として位置づけられる。
自社株を安定的に保有しつつ、資本政策の機動性を高める点が注目される。
中期経営計画「First Call Bank」との整合
同行は現在、「First Call Bank」(ファーストコールバンク)をスローガンとした中期経営計画の最終年度を迎えている。取引先や地域社会から最初に相談される銀行を目指し、コアビジネスである貸出・預金・コンサルティング営業の深化を進めてきた。
同行資料によると、個人セグメントはボリューム拡大と金利上昇に支えられ、法人セグメントでは信用リスク管理を強化してRORA改善を図っている。
また、生産性向上にも取り組み、生成AIを活用した融資稟議書作成の自動化を全店に展開。年間業務時間の約95%削減を実現した。
こうした効率化によって人件費を抑制しつつ、一人当たり人件費の増加や初任給引き上げにより人的資本への投資を拡大している。2025年度には6.5%の賃上げを実施するなど、持続的成長に向けた再投資が進んでいる。
環境・社会への資金供給方針も整備
同行は「特定事業等に関する投融資方針」を掲げ、気候変動リスクに配慮した資金供給を明文化している。省エネルギー・再エネ分野や医療・福祉・教育への融資を推進する一方、児童労働など人権侵害を伴う事業や、環境破壊の懸念が大きい事業への投融資を行わない立場を明確化。
脱炭素社会への円滑な移行(トランジション)対応についても、発電効率や地域影響を総合的に判断する方針を示している。
こうしたESG対応型の投融資基準を整備することで、地域内外の企業支援とガバナンス強化の両立を図っている。
自己株式取得による株主価値向上と、サステナビリティ重視の経営戦略を同時に展開する姿勢が確認できる。
今後の焦点は資本効率とガバナンス
宮崎太陽銀行は、今回の取得を通じて資本余力を適度に調整しつつ、地域への安定的なリスクテイクを維持する方針を強調している。
中期経営計画で掲げたROE5%の目標を維持した上で、総還元性向30%を指標にした資本運営を継続する見通しだ。金融庁が自己株式取引に関する内閣府令改正を施行する時期に合わせており、制度改正を踏まえた実行計画となる。
地銀再編や金利政策転換など外部環境の変化も続くなか、今回の決定は、同行が「規律ある資本政策」と「地域支援の持続性」の両立を重視する姿勢を再確認するものといえる。
今後は取得の進捗と財務基盤への影響、加えて次期経営計画への反映が注目される。
