株式会社商船三井は10日、Schoeller Holdings Ltd.と、2027年に竣工予定の洋上風力事業用オフショア支援船(SOV)2隻を共同保有する方針を示した。あわせて、本船を運航するDeutsche Offshore Schifffahrtに出資することを決めた。欧州でのSOV事業参画は初めてという。
枠組みは、商船三井とSchoeller Holdings Ltd.が共同保有するSOVを、ドイツを拠点とする洋上エネルギー分野の船舶開発・商業運航会社Deutsche Offshore Schifffahrtが運航する形をとる。商船三井は台湾でSOV事業を展開しており、今回の取り組みはアジアでの事業に続く形で欧州に参画する狙いを示した。
SOV2隻を共同保有
共同保有するSOVは2027年の竣工予定で、造船所はCSSC Huangpu Wenchong Shipbuildingとした。全長は96.25m、前幅は20mで、最大乗船人員は120とする。ダイナミックポジショニングシステム(自動船位保持機能装置)や、モーション・コンペイセイション機能を持つ特殊なギャングウェイ、クレーン装備を特徴に挙げている。
SOVは、洋上風力発電所のメンテナンス技術者を複数の洋上風車に派遣する用途を想定し、多数の宿泊設備を備え、一定期間の洋上活動が可能なオフショア支援船と説明している。建設中から試運転、商業運転開始直前までのフェーズでの運用を想定する場合、より大きなクレーン能力や作業デッキを備えるとしている。
事業運営面では、商船三井がDeutsche Offshore Schifffahrtに出資し、本船の運航を同社が担う形を示した。共同保有の相手先は、キプロスを拠点とするグローバル海運会社Schoeller Holdings Ltd.とした。欧州でのSOV事業参画は初めてで、洋上風力の運用体制に影響が及ぶ可能性がある。
運航に用いるSOVには、洋上風車との距離を常時安全に保つためのダイナミックポジショニングシステムや、風車技師を洋上風車のプラットフォーム上に渡すために船体動揺を吸収するギャングウェイが搭載されるとしている。これら特殊機器の安全な取扱いに関連し、SOVに乗船するには資格および一定の訓練を受ける必要がある点も示している。
商船三井は、欧州全域で洋上風力発電が中長期的なエネルギー政策の重要な柱として位置付けられ、強力な政策的支援も伴う中で、大規模な洋上風力プロジェクトの拡大が続いていると説明する。これを受け、SOVに対する将来的な需要拡大が見込まれるとの見方を示した。
独DOS運航へ出資
今回の欧州参画は、商船三井が台湾で積み上げてきたSOV運用の延長線上に置かれる。商船三井は2022年3月10日に、台湾大彰化洋上風力発電所向けとしてアジア初の新造SOV「TSS PIONEER」を竣工させた。さらに2023年11月22日には台湾向け2隻目のSOVの造船契約を締結し、2024年6月28日には台湾向け3隻目のSOVの造船契約締結も公表するなど、アジアでの船隊拡大を進めてきた経緯がある。
欧州側の運航パートナーとなるDeutsche Offshore Schifffahrtは、SOVの運航実績を持つとされ、同社の船隊は2024年時点で10隻以上とされる。SOV共同保有の相手先となるSchoeller Holdings Ltd.はキプロスを拠点とするグローバル海運会社で、洋上風力向けSOVプロジェクトの共同保有実績を持つ。商船三井は、SOVに先行する取り組みとして、グループ会社MOL Car Carrierが2024年に欧州で風力関連CTV(Crew Transfer Vessel)の運航開始を公表しており、オフショア分野での欧州事業基盤の構築を進めてきた。
外部環境では、欧州連合(EU)が2023年に洋上風力発電容量を5.4GW追加したとされ、2030年に向けた導入目標も示されている。国際エネルギー機関(IEA)は2024年に欧州の洋上風力市場規模について言及し、政策支援としてREPowerEU計画を挙げている。英国ではCrown Estateが2025年の洋上風力入札に関してSOVの運用を巡る要件を示したとされ、国・制度ごとの調達設計が船舶運用の条件に影響し得る状況も指摘されている。
国内の海運大手の動きでは、日本郵船が2024年に欧州洋上風力向けSOVの建造契約を公表し、欧州市場参入を示した。商船三井は、2050年までのネットゼロ・エミッション達成を目指すとともに、海運市況に左右されにくい非海運事業の比重を高める方針を掲げている。中期経営計画2026(2023年5月公表)では脱炭素事業強化を明記し、洋上風力関連事業を成長分野に位置付けている。
運用面での焦点は、共同保有と運航の分担をどう組み立てるかにある。今回の枠組みでは、SOVは商船三井とSchoeller Holdings Ltd.が共同保有し、運航はDeutsche Offshore Schifffahrtが担う形を示している。SOVの運用には、ダイナミックポジショニングシステムや特殊ギャングウェイなどの搭載機器に関連し、乗船者側で資格および一定の訓練が必要になる点も示されている。
商船三井は台湾でのSOV事業展開に続き、Schoeller Holdings Ltd.との共同保有とDeutsche Offshore Schifffahrtへの出資を通じて、欧州SOV事業参入を進める構図となっている。取引管理の観点では、共同保有相手先と運航会社が分かれる枠組みを踏まえ、出資先が担う運航範囲と、SOVの安全運用に必要な資格・訓練の取り扱いが実務上の注目点となり得る。
