三菱ロジスネクスト株式会社(京都府長岡京市)は2月13日、2025年度第3四半期(2024年4〜12月期)の連結業績を発表した。売上高は4827億円で前年同期比3.6%減、のれん等償却前営業利益は164億円で同36.9%減、四半期純利益は8億6000万円と91.1%減となった。北米市場での販売減少や関税負担の増大が影響し、主力地域の米州事業が大きく落ち込んだ。
今回の決算は、日米の関税政策や為替の変動を背景とした米州事業の減速が響いたもの。欧州とアジアでは工場集約効果と販売再編が寄与したが、米州での販売コスト増加や価格競争の激化が全体業績を圧迫した。同社は、物流装備・フォークリフトを中心とする総合物流機器事業を展開しており、米州での需要鈍化が収益全体を左右する構造にある。
米州減速と為替影響で営業利益36.9%減
地域別では、日本の売上が約1431億円(全体の30%)、欧州が17%、米州が48%、アジア・中国が5%を占める。国内の需要は堅調だったが、北米向けノックダウン部品供給の減少で国内事業は減益。欧州ではスウェーデン工場の閉鎖を伴う生産集約策が奏功し増収となった。
これに対し米州では、米国関税政策を背景に販売競争が激化し、販売コストや関税負担を価格に転嫁しきれず、販売台数が前年同期を下回った。
欧州とアジア・中国の増収をもってしても、米州の落ち込みと円高ドル安の影響を相殺できなかった。全社ベースでも営業利益率は3.4%に低下し、前年度の5.2%から大きく後退した。前年同期に発生したエンジン認証の出荷停止影響が解消されたものの、景気不透明感による投資抑制が続いたためである。
営業CFは改善も投資CF増 資産増・純資産57億円増
キャッシュ・フローでは、営業活動に伴う資金流入が325億円と前年を上回った一方で、有形固定資産の取得支出などにより投資活動による流出は268億円に拡大した。結果、フリーキャッシュフローは57億円の黒字に転じた。円安による為替換算差額の増加で純資産が増加し、総資産は前期末比77億円増の5198億円となった。
貸借対照表では、流動資産が2927億円と前期末比77億円増加した。これは為替換算や現預金増加の影響による。固定負債の増加と買掛債務減少の相殺により、負債全体の増加は19億円にとどまった。自己資本比率は24.9%と前期末の24.2%から小幅改善し、ROEは0.9%と前年の7.2%を大きく下回った。
フォークリフト市場の地域差顕著に
世界のフォークリフト出荷台数は2025年上半期で約121万台、うちバッテリー車率は78%と高水準を保っている。中国が40%を占め、日本は4%、米州は18%を占める。米州では関税政策の影響で出荷が減少し、代理店在庫の調整局面が長期化している。
これに対し、アジアと中国では物流自動化需要を背景に同比11.4%の増加となった。
特に中国は景気減速の中でも物流機器需要が堅調で、電動化と省人化へのシフトが継続している。欧州では生産集約の効果により利益体質が改善しつつあり、為替影響を考慮しても収益貢献度が増した。
一方で米州の不振を補うには至らず、全社ベースでは減収減益となった。
背景に三菱重工グループの事業再編
同社は三菱重工業株式会社の物流機器事業を承継して2017年に発足。グループ内ではフォークリフトや産業車両分野を担う中核子会社と位置付けられてきた。三菱重工は2024年以降、成長領域をエナジートランジションや防衛、原子力などに重点化しており、物流機器事業の資本構成を見直す方針を採っている。
2025年9月、三菱重工は日本産業パートナーズが設立したLVJホールディングス2合同会社との間で、三菱ロジスネクストの非公開化に向けた契約を締結。公開買付価格は1株1537円と定められ、三菱重工は保有する約64%の株式を自己株式取得方式で同社に譲渡する予定とされた。公開買付けは2026年1月に開始され、完了後同社は上場廃止となる見通しである。
物流自動化需要が引き続き業績を左右
同社はリーチ式バッテリーフォークリフトを日本で初めて製品化したメーカーであり、近年は自動化・自律化機器やAGV(無人搬送車)を組み合わせたソリューション事業も強化してきた。2024年度には愛知機械テクノシステムとの協業により小型AGVブランド「CarryBee」シリーズの販売を開始しており、工場・倉庫分野の省人化需要に対応している。
ただし、2025年度は世界的な物流市場の二極化が進んでおり、北米の利上げ継続や関税政策による需要減速の一方、アジア・欧州では脱炭素物流設備投資が底堅い。海外売上比率が6割を超える同社にとっては、為替と地政学リスク管理が収益安定化の鍵となる。
経営陣の見解と今後の注目点
間野裕一社長は、資料で「米州の環境は厳しいが、欧州・アジア・中国での事業再編の成果が表れ始めている」と説明した。営業キャッシュフローの改善を背景に研究開発・生産効率化投資を維持しつつ、需要地域での製販連携を強化する方針を示している。
2026年以降の見通し
三菱重工は2026年3月期から三菱ロジスネクスト事業を非継続事業に分類しており、売却完了後、単体では約400億円の特別利益を計上する見込み。ロジスネクスト自体は、非公開化後も独立経営体制のもと、物流ソリューションを軸に自律型物流への転換を加速させる計画を進めている。投資ファンドの支援を得て、リース・レンタルや直販網の再編を行う見通しだ。
フォークリフト市場を巡っては、EV化と自動搬送化が同時に進む過渡期にあり、米国や中国の市場構造が今後の業績変動要因となる。今回の決算はグローバル競争下での体質転換の端緒と位置づけられ、非公開化を経て収益構造の再構築が注目される。
