日本メドトロニック株式会社(東京都港区)は、治療抵抗性高血圧に対するカテーテル治療で用いる「Symplicity Spyral腎デナベーションシステム」について、2026年1月23日に開かれた厚生労働省中央社会保険医療協議会総会で、2026年3月1日からの保険収載が決定したと発表した。これにより同システムを用いた腎デナベーション(RDN)は保険診療下での提供が可能となり、薬物療法で血圧コントロールが難しい患者への新たな治療選択肢が臨床現場で実用化される。
日本メドトロニックによると、今回の公的医療保険収載は、同社が10年以上にわたって行ってきた腎デナベーション技術の開発と臨床研究の成果を受けたものである。RDNは過剰に活動する腎神経に高周波エネルギーを供給しその活動を抑える治療で、薬剤抵抗性の高血圧患者に対して非薬物療法の補助的手段として位置づけられている。
約4,300万人の高血圧患者に新たな治療手段
日本高血圧学会の推計では、国内の高血圧患者は約4,300万人に達し、日本人のおよそ3人に1人が高血圧とされる。薬物療法や生活習慣改善で対処可能な場合もあるが、実際にはコントロール率が低く、追加的介入手段の必要性が指摘されてきた。今回の保険収載により、対象となる医療機関でRDNが標準治療の選択肢に加わることになる。
Symplicity Spyral腎デナベーションシステムは現在、世界70カ国以上で商業使用が承認されており、30,000人超の患者に用いられている。欧米調査では降圧剤を3剤以上服用する患者の約45%がRDNを検討すると回答しており、非薬物療法としての導入意欲が確認されている。
臨床現場に向けた安全な運用体制も
同システムは鎮静下で腎動脈にカテーテルを挿入し、高周波エネルギーを送り神経活動を抑制する。手技後は体内に器具が残らず、動脈への影響を最小化する構造となっている。日本では薬事承認(医療機器承認番号:30700BZX00207000)を経て保険収載が正式に認められた。
同社の尾崎洋子コロナリー&リーナルデナベーション・ディレクターは、「科学的エビデンスに基づく技術を臨床に提供することに意義を感じる」とコメントした。
販売開始日と提供範囲、運用上の条件
Symplicity Spyral腎デナベーションシステムは、保険収載が有効となる2026年3月1日から医療機関向けに販売が開始される予定だ。対象となるのは、治療抵抗性高血圧の患者に限定され、適正使用指針に定められた条件を満たすことが必要とされている。再販や数量制限に関する情報は現時点で公表されていない。
同社は、医療従事者に対する適正使用情報の提供や教育活動を通じ、安全で適切な治療実施を支援する体制を整える方針を示している。体制構築の段階で医師向けトレーニングや関連ガイドラインの運用支援が含まれる見通しである。
制度運用の枠組みと医療機関への影響
今回の保険収載は、厚生労働省中央社会保険医療協議会総会での承認を経て正式決定しており、同会議録によると価格評価は原価計算方式により算定された。これにより、RDN関連手技が診療報酬上の評価対象となり、医療機関は保険診療として実施できるようになる。今後は、保険請求区分や施設基準の届出対応など実務面での運用が焦点となる。
医療機器の適正使用と指針適合が求められるため、各施設では学会などが公表する合意事項(日本高血圧学会など3学会による適正使用基準)に則した判断体制の整備が重要とされている。これにより、RDNを行う医療チームの構成やフォローアップ体制も一定水準で統一される見込みだ。
日本メドトロニックは、今回の保険収載を機に、薬物抵抗性高血圧への新たな非薬物療法導入を推進する立場を明確にしており、同社の既存循環器領域製品群と併せた治療支援体制を引き続き整備していく方針を示している。