株式会社LIXILは、浴室の製品ライフサイクルにおける「つくる」「つかう」「もどす」の3つのステージを紹介する特設サイト「リクシルのバスツアー」を公開した。製造工程のCO₂排出量削減や節水・断熱に関する製品開発、廃FRPの再資源化を一体で示す構成とする。情報開示の統一で、調達・施工・保守に関わる関係者の判断材料が増える可能性がある。
特設サイトでは、製造段階での再生可能エネルギーへの転換や工程効率化、使用段階での節水・省エネ設計、廃棄段階でのリサイクル手法を、浴室を軸に整理している。LIXILは全国3工場で浴室を製造し、工場側の省エネ施策や物流のモーダルシフト、部品検索・購入導線の整備なども含め、浴室の運用から更新までを俯瞰できる形をとる。こうした整理は、浴室サーキュラーエコノミーの取り組みを「工程別」に見える化する狙いを明示した動きとなる。
LIXILがCO₂47%削減
LIXILは、筑波工場(茨城県)、上野緑工場(三重県)、佐賀工場(佐賀県)の3工場で浴室を製造している。3工場における2025年3月期のCO₂年間排出量は、2019年3月期比で47%削減となった。算定は電力・燃料使用量にCO₂排出係数を乗じる形で示し、購入電力は電力事業者別係数、燃料は温対法制度における係数を用いる。
製造工程では、床材や浴槽のプレス工程で、筑波工場と上野緑工場が2台同時に製造可能なタンデム成形を取り入れた。大型成形設備では、アイドリングストップ、蒸気・エアーのロス診断、サーモカメラを用いた日々の点検を挙げた。工場内のエネルギー転換としては、食堂のガス厨房から電気厨房への置き換え、体験入浴用給湯器の電気化、一部建屋での太陽光発電導入を示している。
物流では、資材調達や工場間輸送の一部をトラックから鉄道・船舶に転換するモーダルシフトを導入した。2023年実績として、年間336台分のトラック運送をモーダルシフトし、年間216.8tのCO₂排出量を削減したとしている。
使用段階では「節水」と「断熱」を軸に挙げた。節水性能の高いシャワーヘッド「エコアクアシャワーSPA」は、水に空気を含ませる設計で、手元で止水ができるスイッチ付きの場合に従来品より約50%の節水となるとしている。浴槽では、半身浴ができるベンチ付きの節水型浴槽「エコベンチ浴槽」で、1600サイズの場合に満水容量を従来より35L削減できるとしている。断熱では、浴槽とフタの両方に保温構造を採用した「サーモバスS」を挙げ、年間で約42kgのCO₂排出量削減(試算)を示した。数値は目安であり、記載どおりの削減を保証するものではないとしている。
維持管理の情報提供では、浴室のお手入れ方法の公開に加え、部品購入の導線として「LIXILストア」「LIXILオンラインショップ」を用意した。浴室ドア上部の管理ナンバーシールにある製造番号を「LIXIL部品ナビ」の検索欄に入力し、適合部品を案内する仕組みも示している。
廃FRP全量を再資源化
「もどす」の領域では、浴槽素材として普及するFRP(繊維強化プラスチック)をめぐる処理の難しさを示した。FRPは熱硬化性樹脂にガラス繊維などを組み合わせた複合素材で、素材分離によるリサイクルが難しく、不要となったFRPの多くが埋め立てや焼却処分となっている状況を挙げている。LIXILは浴室工場で、製造工程内で排出される廃FRPを粉砕し、セメントの原燃料にするサーマルリカバリーを採用してきた一方、熱回収(焼却)に頼らないリサイクルの推進を検討していた。
この流れの中で、2025年1月10日より、再資源化事業計画認定企業である宏幸株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:高谷宗良)と協業し、LIXIL筑波工場から排出される廃FRPをすべてマテリアルリサイクルすることが可能になったとしている。これにより、LIXILの浴室工場全体のFRP廃棄量の約半分が再資源化され、浴室工場全体の廃棄物の再資源化率は86.2%になるとしている(23年4月~24年3月実績より)。
梱包分野では、製品輸送時の保護フィルム使用量を減らす目的で、繰り返し使える「リターナブルコンテナ」を導入している。1995年から導入し、2023年には保護フィルムの使用量を前年比2.5トンまで減らしたとしている。コンテナに製品をまとめて納めることで、手積み作業の削減や、大型トラックから現場に向かう小型トラックへの載せ替えの円滑化にも触れている。
材料面では、浴室ドア(一部のドアを除く)で、循環型低炭素アルミ「PremiAL」を標準採用している。原材料にリサイクルアルミを使用し、アルミ新地金のみで製造した場合と比較してCO₂排出量を約50%削減するという社内試算を示した。
協業と工程が可視化
今回の取り組みは、特設サイト上で「つくる」「つかう」「もどす」を紹介し、製造・利用・再資源化の工程を一体で説明する形をとる。工場側では、3拠点での製造と、工程効率化や電化・太陽光導入の取り組みが示される一方、物流はモーダルシフトの実績が明記される。再資源化では、筑波工場の廃FRPを宏幸株式会社との協業でマテリアルリサイクルに切り替える枠組みが示され、対象範囲が「筑波工場から排出される廃FRP」と特定されている。
一方で、廃FRPの再資源化については、マテリアルリサイクルの具体的な用途・処理フローの詳細には踏み込んでいない。使用段階の削減効果についても、サーモバスSの算定条件とともに「目安であり保証しない」との留保が付され、実使用でのばらつきを織り込む書きぶりとなっている。
浴室サーキュラーエコノミーを「つくる・つかう・もどす」で分解して示した点は、環境負荷の論点を工程別に切り分け、社内外の実装単位に落とし込む整理手法として読み取れる。LIXILは製造段階で2019年3月期比47%のCO₂削減を提示し、物流ではモーダルシフトによる216.8t削減(2023年実績)を併記した。こうした複数工程の数値提示は、工場運用と輸送手段の変更を同じ枠に収め、削減の内訳が「工程改善」「エネルギー転換」「輸送設計」にまたがることを示す。
「もどす」では、FRPが複合素材であるため分離が難しく、埋め立てや焼却処分が多いという制約を明記した上で、筑波工場の廃FRPを全量マテリアルリサイクルへ切り替える協業を置いた。熱回収に依存してきたサーマルリカバリーから、マテリアルリサイクルへと処理の軸を動かすには、再資源化事業計画認定企業との連携という制度適合の枠組みが要素として入る。浴室工場全体のFRP廃棄量の約半分が再資源化され、再資源化率が86.2%となるという記述は、工程内廃材の処理設計が工場全体の廃棄物指標に影響し得ることを、数値で示す形になっている。
