ライオン株式会社(東京都台東区)は2月12日、化成品子会社のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社(同区、以下LSC)およびその子会社PT. IPPOSHA INDONESIA(インドネシア)の全株式を、株式会社アドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドが組成する特別目的会社・株式会社AP88(東京都港区)へ譲渡すると発表した。譲渡契約は同日付で締結し、効力発生日は6月30日を予定する。LSCは譲渡後も既存取引条件を維持し、取引先への影響はないと説明している。
ライオンは「中期経営計画Visio2030 2d STAGE」で掲げる「収益力の強靭化」を進めており、今回のLSC株式譲渡は事業ポートフォリオ見直しの一環と位置づける。界面活性剤中心の化学品事業から高機能材料へ発展した同社を、カーブアウト案件で実績のあるアドバンテッジパートナーズグループのもとで一層の成長を図る。ライオンは事業構造改革を進める中で、コア事業への資源集中を加速させる狙いだ。
189億円規模の取引、6月末に譲渡完了予定
譲渡価額は189億円を基礎に最終調整を行い確定する予定で、6月30日に株式譲渡を完了させる計画だ。
LSCの2025年12月期売上高は269億円で、ライオングループ内における化成品事業の中核を担ってきた。対象には、LSCが90%、ライオンが10%を保有する子会社PT. IPPOSHA INDONESIAの残り10%分も含まれ、グループとして完全に資本関係を解消する。譲渡実行後、LSCおよびIPIはライオンの連結範囲から除外される見通しである。
譲渡先のAP88は2026年2月に設立され、代表取締役は西村隆志氏。経営コンサルティングや有価証券の取得・保有・運用などを目的とする特別目的会社であり、その親会社はアドバンテッジパートナーズが管理するAP88ホールディングス。
今後はファンド傘下で独立した化学品メーカーとしての成長戦略を描くことになる。
化学品事業の再編とライオンの経営戦略
ライオンは長年にわたり家庭用品、医薬品、化学品の3本柱で事業を展開してきたが、近年はグループの重点領域を日用品・ヘルスケア関連にシフトしている。化学品事業については、2020年代前半から複数の国内外拠点で資本再編を進めており、22年の出光ライオンコンポジット株式譲渡や26年初の豪州事業拡張なども同じ方針に沿う動きだ。
LSCは1963年の設立以来、界面活性剤などの工業用薬品を中心に成長してきたが、2015年の統合再編を経て高機能素材の開発企業へ転身していた。
こうした中で、原材料コストの変動や環境対応技術の強化など、化学メーカーを取り巻く市場変化が加速。
ライオンでは、事業特性に応じた柔軟な経営体制を整えるため、非中核事業の分離や外部資本との連携を推し進めており、今回のカーブアウトもその延長線上に位置づけられる。背景には、グローバル市場で高機能化学品の需要がある一方、規模の経済や技術投資競争が激化している現状がある。
アドバンテッジパートナーズの再成長支援に期待
アドバンテッジパートナーズは、国内で多数の製造業カーブアウト案件を手がけてきた投資ファンドグループであり、企業価値向上や事業再構築を支援する実績を有する。LSCの譲渡に際しても、事業基盤の独立・自立化を支える戦略投資家としての役割を担う。
取引条件に変更はなく、取引先に対しては従前の契約関係が維持される予定で、請求処理や支払条件も従来どおり継続される。LSCは譲渡後も既存事業の安定運営を行いながら、新たな成長投資の機会を模索するとみられる。
一方で、化学品市場では環境対応や安全規制強化など新たな課題も顕在化している。特に日本国内では、労働安全衛生法改正による自律的な化学物質管理への移行が進むなど、メーカーに対し製造・販売段階でのリスク評価強化が求められている。
ファンドによる独立経営下で、こうした法規制や国際基準への対応をどう整備するかが、LSCの事業継続性を左右する主な論点となる。
事業最適化と新たな市場対応が焦点
ライオングループは今後も中期経営計画の方針に基づき、本業であるヘルスケア・パーソナルケア領域への資源集中を進める方針を打ち出している。化学事業の再編は収益体質の強化と財務健全性の確保を狙うものであり、今後も一定の資本取引を通じてポートフォリオ管理を深化させる可能性がある。
業界関係者の間では、今回のLSC株式譲渡が、国内化学メーカーのカーブアウト再編の流れを象徴する事例との見方もある。
一連の動きを踏まえると、ライオンはグループ経営全体の再構築を着実に進めつつあり、化学事業の独立化を通じて選択と集中をさらに鮮明にしている。
今回の措置は、製造業界におけるファンド主導型再編の一端を示すものであり、同種の取り組みが他社にも広がる可能性があるだろう。
