LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社(福岡県福岡市)は、2026年3月以降に入社する新卒および中途社員を対象に、入社時研修で「生成AI研修」を必修化する。生成AIを業務の前提スキルと位置づけ、プロンプトのテクニックに偏らず「思考設計」から学ぶ独自の研修プログラムを新設した。入社初期からAI活用を組み込み、社員がより本質的な価値創出に注力できる体制づくりを進める。
同社は「生成AIを使う前に考えを設計する」ことを重視し、目的・制約条件・評価観点を整理してから実務演習に進む構成を採る。AIの特性理解と、思考を構造化する力を育む狙いがあり、議事録作成やアイデア出しなど日常業務を想定した演習を実施する。福岡に本社を置き、LINEヤフーグループの運営業務を担う同社では、入社時点から生成AIを利用できる環境を社内に整えている。
社員調査で約4倍の利用定着差
2025年12月23日〜26日に実施した同社のインターネット調査(全国の会社員22〜28歳、n=527)によると、入社時点で生成AIを業務利用できた人の47.2%が、上司に提出する資料やメールを「ほぼ毎回AIでチェックしてもらう」と回答した。入社後に利用可能になった群では12.3%にとどまり、使用習慣の定着に約4倍の差がみられたという。調査は因果関係を示すものではないが、初期利用環境と活用固定化の関連をうかがわせる結果となった。
同社では、基礎→設計→実践という段階構成で学習を進める仕組みを採用し、入社早期からの実務活用を想定したプログラムとした。資料にはAI音声を組み込み、オンライン研修でも理解しやすい設計となっている。
この取り組みは、LINEヤフーコミュニケーションズが全国各地(八戸、東京、高知、北九州、大分、那覇)に拠点を持ち、多様な業務運営を担う中で、グループ全体の業務標準化や人材育成を支える施策の一環である。社員数は2025年4月時点で1,599人。
思考設計を中核にした研修設計と運用
研修は3段階構成をとる。まずAIを「相棒」とするマインドセットを形成し、人間とAIの役割を理解する。次にアウトプットの質を高める「思考設計」の手法を学び、最後に議事録作成やメール文案といった業務場面で応用する実技演習を行う。AIが確率的予測で回答する仕組みを理解し、意味づけや価値判断は人が担うという認識を共有する狙いだ。
運営体制では、社内の「生成AI活用タスクフォース」が研修設計を担い、環境整備と教育設計を担当している。担当者の塩川恭浩氏は、生成AIを「社員の思考を拡張し判断・設計を支える存在」と位置づけ、「生成AIを使える人材ではなく、生成AIを使って価値を生み出せる人材の育成を目指す」と述べている。プログラムは入社初期研修内で必修化されている。
導入形態は社内独自研修として常設され、eラーニングと集合研修を併用する。参加対象は2026年3月以降入社の新卒および中途社員に限定される。明示された範囲では、外部企業との共同開発や提供委託については発表されていない。
同研修は今回が初の導入で、今後の展開や他部署への拡大計画も現時点では公表されていないが、入社時点でのAI活用標準化に向けた初の全社的な制度として位置づけられる。
同社は、研修で得た知見を現場で活かすため、業務運用と教育施策を連携させている。採用・社内教育のタイミングに合わせ生成AI環境を提供し、実務と学習を一体で進める体制を取っている。
