リーガルテック株式会社(東京都港区)は、特許AI分析プラットフォーム「MyTokkyo.Ai」と知財特化型AIプラットフォーム「IPGenius」を活用し、大手製造業との実証実験を4月から開始する。特許ビッグデータのAI解析による経営判断支援の効果を検証し、日本企業の知財戦略の高度化を目指す。
実証実験では、AIトランスフォーメーション時代における知財活用の構造変化を踏まえ、知的財産を競争優位へ転換するための判断基盤の高度化を進める。社内データをIPGenius内のIDX上に載せ、知財創出を目的とする社内データベース(DB)を構築し、MyTokkyo.Aiによる知財調査機能と組み合わせることで、日本の製造業による新技術の創出と知財化を高速で回し続けるインフラの構築を実証の核とする。
大手製造業と4月開始
リーガルテックが提示する枠組みは、特許ビッグデータをAIで解析し、その結果を経営判断に結びつける点に特徴がある。活用する基盤は「MyTokkyo.Ai」と「IPGenius」で、両者を組み合わせて運用する。
同社は、世界で進む変化について、AIを単なる業務効率化のツールではなく、意思決定の前提情報を整理し、判断を支える存在として位置づける。AIが競争環境や技術動向を構造的に可視化することで、企業間の競争の在り方そのものが変容しつつあるとの見方を示す。MyTokkyo.Aiは、特許ビッグデータを解析し、競争優位性や技術ポジション、事業・投資への影響を可視化することで、知財を経営判断へ接続する基盤の提供を狙う。
リーガルテックは従来から、AI・データ技術を活用した法務・知財領域の高度化支援を主力事業としてきた。AIエージェント型知財プラットフォーム「MyTokkyo.Ai」の開発・提供を進め、自律的に調査を遂行するAIエージェントとして進化させている。内部LLMの高度化により、調査計画の自動設計、再探索ロジックの強化、ノイズ削減性能の改善を実装し、自社テストでは前回比2倍以上の精度向上を確認したという。
また、特許・技術・市場情報を横断したAIエージェント分析に加え、判断理由を含めた意思決定の記録・整理を通じ、組織に残る「判断のOS」の構築を目指している。今回の実証では、特許情報の整理と分析を日常的な意思決定プロセスに組み込む運用の具体化を進め、特許データ解析を経営判断に接続する実務フローまで踏み込む。
リーガルテックは、特許の活用が出願や防御にとどまりやすい現状に対し、競合・市場・技術動向を俯瞰し、知財を国際競争力へ接続する判断基盤を提供する方針を掲げる。日本企業では、特許が出願・管理の枠組みにとどまり、経営や事業戦略に十分に結びついていないことや、競合との関係性が体系的に整理されていないことが実装上の課題として意識されている。AX時代に、膨大な情報を迅速かつ体系的に整理し、戦略判断へ結実させる能力の確立が迫られるなか、同社は製造業と連携した実証に乗り出す。
実証では、知財調査の実務と、社内データを含む情報基盤の統合運用を組み合わせる。IPGenius側の基盤であるIDX上に社内データを集約し、知財創出を目的とする社内DBを構築する工程を中核に据える点が特徴となる。これにMyTokkyo.Aiによる知財調査機能を組み合わせることで、新技術の創出と知財化を連続的に回すインフラの構築を図る。
外部環境に目を向けると、知財情報を戦略判断へ結びつける基盤整備やAI活用は、製造業に限らず各分野で具体策が相次ぐ。例えばストックマークは製造業向けAIエージェント「Aconnect」に「技術文献要約」機能を追加し、技術課題から要因仮説、解決策までの思考プロセスをロジックツリー形式で可視化し、各ノードに根拠となる論文・特許をひも付ける構成を採用した。法務領域では弁護士ドットコムが、みずほ銀行に法律特化型AIエージェント「Legal Brainエージェント」を提供し、膨大な法律相談データや判例、専門書を学習基盤としてハルシネーションの抑制を徹底する。
研究開発に近い領域では、FRONTEOが日本化薬の創薬アセットの価値最大化を目的とした共創プロジェクト契約を締結し、2024年11月に概念実証(POC)を開始する計画を示した。自然言語処理に特化したAI「KIBIT」を用い、解析情報をマップ化する特許技術の活用などを打ち出している。AIを用いた情報統合と、実証を通じた運用の具体化を進める動きが、各領域で加速している状況だ。
背景には、日本が世界有数の技術力と特許出願数、研究開発投資の高水準を維持しながら、国際市場では海外企業が特許を戦略的に活用して高付加価値化を実現する事例が目立ち、日本企業が価格競争に陥るケースが少なくないという構図がある。技術力と競争力の間にギャップが生じているとの問題意識が強まり、知財を戦略的判断へ接続する仕組みの成熟度の差が論点として浮上している。
IPGenius連携の枠組み
実証実験は、「MyTokkyo.Ai」と「IPGenius」を組み合わせて運用する。中核には、社内データをIPGenius内のIDX上に集約し、知財創出を目的とする社内DBを構築する工程を置く。特許ビッグデータ解析の結果を、この社内DBと組み合わせて運用する設計とし、知財と事業・財務情報を統合した判断基盤の高度化を図る。
リーガルテックは、特許が経営判断に十分に接続されていないこと、知財と事業・財務の間に分断があること、判断基準が体系化されていないことを構造的課題として示す。一方、海外の先進企業では、特許を出願や防御の対象にとどめず、どの技術に投資するか、どの市場で優位を確立するか、どの企業と連携するかといった経営判断の基盤として活用する動きが進んでいると分析する。実証では、こうした先行事例を踏まえつつ、日本の製造業の実務に即した運用モデルの確立を目指す。
同社は、AIが意思決定の前提情報を整理し、判断を支える存在となることで競争の在り方が変わるとの認識を示し、知財活用の構造変化に対応した判断基盤の整備を急ぐ。特許情報の整理と分析を経営判断プロセスに組み込む運用を具体化し、MyTokkyo.AiとIPGeniusを連携させた形で、どの業務範囲で知財調査と意思決定の記録・整理を連動させるかが今後の論点となる。
