株式会社LegalOn Technologies(東京都渋谷区)は、日本光電工業株式会社(東京都新宿区)に、法務特化型AIエージェントを搭載したProfessional AI for Legal「LegalOn」を導入した。契約審査の事前段階から生成AIを活用し、審査プロセスの効率化と統制の両立を図る。
日本光電工業は、「LegalOn」に搭載された法務特化型AIエージェント「LegalOnアシスタント」を用い、法務相談、マターマネジメント、リーガルリサーチ、契約書レビュー、契約書管理などのタスクを支援させる。定型的な業務から専門性の高い審査までを一元的にカバーし、効率的かつ正確な審査プロセスを構築することで、事業推進を後押しする狙いだ。運用面では、事業部門での初期レビューやリスク抽出に生成AIを用い、契約審査の事前段階を効率化する構想を掲げる。
「LegalOn」8,500社突破
「LegalOn」は、グローバルでの有償導入社数が2026年3月時点で8,500社を突破した。LegalOn Technologiesは2017年4月に設立され、2019年に日本初のAI契約レビューサービス「LegalForce」をリリース。その後、「LegalOn: World Leading Legal AI」「Legal Learning」「CorporateOn」へとサービスを拡充してきた。提供開始から6年半でARR(年間経常収益)100億円を突破しており、リーガルテック市場で存在感を高めている。
導入企業側の日本光電工業は、1951年の創業以来、医用電子機器を医療現場へ提供してきた。東証プライム市場上場企業で、従業員数は3,893人(グループ6,114人)、資本金は75億4千4百万円(いずれも2025年3月31日時点)。事業運営の中で取り扱う契約の範囲が広がる局面では、審査スピードの確保とガバナンスの維持が課題となりやすく、今回の「LegalOn」導入は、法務部門の業務設計を再構築する施策の一つと位置づけられる。
同社は、コンプライアンス意識の高まりや契約内容の多様化・高度化により、法務部門に求められる確認事項が増加しているとみる。現行体制では、定型的な審査業務と高度な専門判断を要する審査業務の両立が難しくなる傾向があり、業務負荷の集中がリスクとなっていた。効率性と正確性を両立させた審査プロセスを構築するため、「LegalOn」を活用した体制見直しに踏み切った。
活用イメージとしては、まず事業部門が生成AIを用いて初期レビューやリスク抽出を行い、契約審査の前段階で論点を整理する。法務部門に引き渡す情報の粒度をそろえることで、法務側はより高度な判断を要する案件やコンプライアンスリスクへの対応に集中する。事業部門と法務部門の作業分担を再定義し、審査プロセスの入口を整流化することで、全体の処理能力と品質の底上げを狙う。
リーガルテック領域では、契約書レビューの省力化にとどまらず、案件の受付から進行管理、ナレッジの蓄積・検索までを一体で扱う統合サービスへの移行が進んでいる。LegalOn Technologiesも、個別機能提供から包括的な法務DX基盤の提供へと軸足を移し、「Professional AI for Legal」を掲げる。弁護士監修コンテンツや外部情報と連携しながら自律的に処理を行い、業務プロセスのなかでナレッジが蓄積される設計は、導入企業が長期的な運用設計を描きやすい点で評価されている。
事業部門の初期レビュー
日本光電工業が構想する運用では、事業部門が生成AIを用いて契約内容の初期レビューとリスク抽出を担い、あらかじめ論点を洗い出した上で法務部門に案件を送る。法務部門は、こうして整理された情報を前提に、契約条項の妥当性の精査やリスク対応方針の立案といった高度な判断業務に比重を移すことができる。属人的なスキルに依存していた「入口部分」の作業品質を均一化し、案件処理のばらつきを抑えやすくなる効果も見込まれる。
「LegalOn」は、法務特化型AIエージェント「LegalOnアシスタント」を通じ、法務相談、マターマネジメント、リーガルリサーチ、契約書レビュー、契約書管理まで一連のタスクを支援する。弁護士監修コンテンツと外部情報を組み合わせて自律的に処理を行う構成で、利用を重ねるなかでナレッジが蓄積される環境を設計している。日本光電工業は、システムの精度向上と機能拡張が進むことで、法務部門だけでなく事業部門も安心して業務を委ねられるインフラへと発展していくことを期待している。
契約業務から包括支援
リーガルテック各社の競争軸は、契約書レビューの自動化から、法務相談や案件管理、契約書管理を連結させた統合領域へ移行しつつある。LegalOn Technologiesは、契約業務にとどまらず、法務案件の発生から終了までをシームレスに支援する世界水準の法務AIとして「LegalOn」を展開する。蓄積された情報や文書をAIが自動整理・関連付けし、ナレッジの自動検索やレコメンドにつなげる設計により、法務組織の知見を資産として活用しやすくしている。
この潮流のなかで、日本光電工業が採ろうとしている「事業部門で初期レビューを行い、法務部門が高度判断に注力する」という運用構想は、ツール導入効果を個別作業の時間短縮にとどめず、部門間プロセスの再設計へ踏み込む点に特徴がある。契約件数や種類が増える企業ほど、審査プロセスにおける入口の整流化は経営課題になりやすく、生成AIによるリスク抽出をどの範囲まで任せるか、法務側の判断プロセスとどう接続するかが実務上の焦点となる。
LegalOn Technologiesは機能拡張も進めており、法務組織の稼働状況を可視化する「CLMレポート」機能の提供を打ち出している。契約管理に近い可視化機能を含め、業務量や処理状況の把握を支える機能群が増えるほど、導入企業には単体機能の活用にとどまらない運用ルールや役割分担の設計が求められる。日本光電工業のように事業部門での初期レビューを想定する場合、どこまでを事業部門が扱い、どこからを法務部門が引き取るかといった線引きが、取引管理とガバナンスの両面で重要な検討事項となる。
