京都市は、市バスの自動運転導入に向け、西京区の洛西ニュータウン(NT)で自動運転バスの実証実験を3月に始めた。3月24日から29日には、市民向けの試乗体験会も実施した。市は新年度以降も実験を続け、2028年度の実用化を目指す。
実験は、市バスの自動運転に関する知見を運行現場で蓄積することが狙いだ。試乗体験会では、市民が実際の走行を体験し、走行時の感覚や運行面の要望を伝えた。京都市は自動運転レベルのうち、特定の条件下で運転手が不要となる「レベル4」の実現を目標に掲げている。
6.9キロ周回で走行
実験では小型電気バス(定員15人)を使う。誤差数センチの精度で位置情報を取得できるシステムに加え、カメラ10台とレーザーセンサー8台を搭載する。車両は3次元地図と周囲の状況を照合しながら走行する仕組みで、3月24日の試乗体験では、洛西バスターミナルを起点に洛西NTを周回する6.9キロで、運転手が監視する「レベル2」での自動運転を行った。赤信号での停車や交差点の走行は、ほぼ運転手の介入なしでこなしたという。
試乗した市民からは、走行の安心感に関する評価に加え、運行設計への注文が出た。右京区の男性(67)は「今日のコースは不安はなかった。人が飛び出し、急ブレーキで乗客が転ぶこともあるので対応を考えてほしい」と話した。西京区の巽麗子さんは「思ったよりスムーズ。お年寄りが多く交通手段がないと困るので、自動運転でも本数が多いほうがいい」と述べ、運行の滑らかさと生活交通としての便数確保を求めた。
実験場所に洛西NTを選んだ理由として、京都市歩くまち京都推進室は、道路幅が広く交通量も多くない点を挙げる。市街地中心部と比べて走行環境の変数を抑えやすく、車両の認識・制御や停留所周辺での取り回しなど、運行の基礎要素を体系的に検証しやすいとみている。松井孝治市長は、政令指定都市の公営交通では初めての実験との認識を示し、洛西が京都の自動運転の先導役になるとの見解を示したうえで、具体的な課題の抽出と解決策の検討を進める考えを語った。
外部環境では、全国の自治体が公共交通の維持に向けて自動運転などの新技術の社会実装を探っている。京都市も走行技術だけでなく、運行を支える周辺業務まで含めて論点を洗い出す方針だ。実証を新年度以降も継続し、2028年度の実用化を目指すことで、単発のイベントにとどめず、段階的に運行形態を高度化していく構えをみせる。
街路樹誤認識が残る
運行面では、現時点で街路樹を障害物と認識する場面がある。路上駐車を避ける際に運転手が操作を引き継ぐケースもあり、「レベル2」であっても周辺環境の変化に応じた介入が運行に組み込まれている。こうした事象は、走行環境の設定や車両側の認識アルゴリズムの調整など、今後の実験で検証すべき技術課題となる。
運転以外の業務も重要な論点だ。京都市は、ドアの開閉、運賃収受、乗降時の支援などを課題として挙げ、運転手に代わり対応する保安員の乗車を想定する。あわせて、大型2種免許を前提としない要員配置が望ましいとする。自動運転の導入は走行制御の自動化にとどまらず、車内外での案内や安全確保、乗降介助といったサービス全体の体制設計を伴う取り組みとなる。
試乗体験会で寄せられた要望は、走行時の安心感だけでなく、急ブレーキ時の安全対策や運行頻度など、利用者の視点に立った運用条件に及んだ。京都市は、こうした声を反映させながら、走行技術と周辺業務を一体で検討し、実証を重ねる方針だ。
公営交通で実証広がる
自動運転の社会実装では、車両の認識精度や制御の高度化に加え、現場での運用体制をどう構築するかが課題となる。京都市の取り組みは、カメラやレーザーセンサー、精密測位を組み合わせた車載システムを用いて6.9キロの周回コースを「レベル2」で運行し、交差点通過や信号停止といった具体的な走行場面を検証している点に特徴がある。政令市の公営交通が主体となる実験は、自治体運営の交通インフラが自動運転の担い手になり得ることを示す事例となる。
公営交通で自動運転の実証が広がれば、自治体は車両調達や運行主体の設計、利用者対応を含む総合的な実装計画の策定を迫られる。京都市は新年度以降も洛西NTでの「レベル2」運行と市民試乗を土台に実験を続け、2028年度の実用化を見据えながら、走行時の介入のあり方や保安員配置など車内業務の割り当てを具体化していく考えだ。
