栗林商船株式会社(東京都千代田区)は、ドライバー不足を背景に内航海運を活用した海上モーダルシフトを推進している。主要荷主のいすゞロジスティクス株式会社と連携し、海陸一貫輸送体制を強化することで、荷主企業の持続可能な輸送網の構築を支援し、長距離陸上輸送の制約下でも輸送力の安定確保を図る。
取り組みの柱は、長距離の幹線区間で海上輸送を組み合わせる点にある。いすゞロジスティクスは、いすゞ自動車 藤沢工場で生産される大型・中型・小型トラックなどの車両を品川港などまで搬送し、栗林商船グループのRORO(ロールオン・ロールオフ)船を利用して全国各地へ輸送している。栗林商船は海陸一貫輸送の拡充を通じ、国内産業の安定供給を支える社会インフラとしての役割を強める構えだ。
藤沢発のRORO活用
現場運用では、いすゞロジスティクスの藤沢輸送グループが17人の体制で日々の車両搬送にあたる。生産変動の影響で直前まで搬送台数が確定しない局面もあるなか、安定的に海上輸送を組み込める体制の整備が課題となっている。天候影響時の迅速な情報共有や現場オペレーション改善に向けた継続的な対話が、海陸一貫輸送の品質向上を左右している。
いすゞロジスティクスの車輛輸送事業室 車輛輸送部 担当部長の長谷川忠司氏は、陸送を取り巻く制約が年々厳しさを増しているとの認識を示す。中距離まではトラック輸送でも対応できる一方、長距離輸送では海上輸送の活用が不可欠になっていると説明する。トラックドライバーの高齢化や若年層の採用難に加え、免許取得制度の変更などが重なり、人材確保が一段と難しくなっていることも指摘した。
藤沢輸送グループのグループリーダー、石和裕司氏は、イレギュラー案件でも解決策の検討に積極的な姿勢が心強いと評価する。各港での迅速な対応や24時間受け入れ体制が、ドライバーの待機時間削減や負荷軽減につながっているとし、輸送手段の多様化とリスク分散の重要性が増していると述べた。栗林商船は、陸上輸送と海上輸送を適切に組み合わせる物流体制の構築が、荷主企業のサプライチェーンを安定運用するうえで不可欠との見方を示す。
栗林商船は1894年の創業以来、内航定期船事業を中核に北海道から東京、名古屋、大阪に至る海陸一貫輸送サービスを展開してきた。自動車物流でも内航RORO船を活用し、陸送と連携した輸送網を整備しており、主要荷主であるいすゞロジスティクス向けには品川港などを経由した車両輸送を担っている。
物流分野では、いわゆる「物流の2024年問題」を機にドライバー不足が一段と鮮明になった。ドライバーの高齢化に加え、時間外労働の上限規制など拘束時間規制の強化が加わり、従来のように陸送のみで対応することが難しい場面が増えている。とりわけ300キロメートル超の幹線輸送では内航フェリーやRORO船の役割が増大しており、国内の海上輸送への貨物シフトが加速している。長距離陸上輸送の制約が輸送力の安定確保を揺るがす要因となるなか、海上モーダルシフトが有力な打開策として浮上している。
DX推進室を4月新設
栗林商船グループは2025年4月にDX推進室を立ち上げ、現場業務の課題解決にデジタル技術を本格的に取り入れる。いすゞロジスティクスからは、生産計画に基づく事前の輸送枠確保といった提案が出ており、車両の積み付け状況を可視化する仕組みの検討も進める。港湾作業や内陸輸送を含めたオペレーション全体の連携強化と、荷主企業との継続的な情報共有により、安定した輸送品質の維持・向上を目指す。
藤沢工場で生産された車両を品川港などに搬入し、そこでRORO船に積み替えて各地に送り出す現在のスキームでは、天候影響時の対応や各港の受け入れ能力が日々の輸送計画に直結する。天候急変時の情報伝達の迅速化、港での荷役対応力の底上げ、24時間受け入れ体制の維持が、車両搬送全体の安定運行に欠かせない。生産変動で搬送台数が直前まで変動する状況に対応するため、現場オペレーションの改善に向けた両社の対話も重ねている。
栗林商船グループは、海陸一貫輸送の強みを生かし、荷主企業の多様な輸送ニーズに柔軟に応える体制づくりを進める方針だ。DX推進室を核に輸送計画の精度向上や現場オペレーションの効率化を図り、荷主にとって使い勝手の良い輸送サービスの提供を目指す。輸送枠の事前調整や積み付け・配船状況の可視化といった取り組みを通じて海陸一貫輸送の効率化を一段と押し上げ、内航海運を活用した海上モーダルシフトを加速させる構えだ。
