株式会社コーセー(東京都中央区)は、東京大学 高鍋・小畑・岸本研究室との共同研究により、使わなくなった化粧品を環境触媒にアップサイクルする技術の開発に乗り出した。日やけ止めなどに含まれる酸化亜鉛などの金属酸化物に独自の化学プロセスを施し、環境浄化や資源循環、エネルギー分野への活用が期待される触媒へ再生するもので、酸化亜鉛を利用した技術は特許を出願済みだ。研究成果は2026年1月28日から開催される国際ナノテクノロジー総合展・nano tech 2026で展示予定となっている。
コーセーはこの研究を、化粧品の「中身」に対する新たな資源循環の試みとして位置づけている。東京大学の電磁波を用いた化学反応の技術を軸に、廃棄化粧品の金属酸化物を再利用可能な触媒素材へ転換するプロセスを検討する。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けており、同機構の「官民による若手研究者発掘支援事業」に採択されている。
酸化亜鉛を基礎技術に転用
本研究では、酸化亜鉛を含む日やけ止めに白金化合物を加えてLED光を照射し、酸化亜鉛を触媒化する方法を開発した。この触媒は通常製法のものと比較しても同等の性能を示し、一酸化炭素の分解を確認している。現在、特許出願済みの酸化亜鉛以外の金属酸化物に関する展開も視野に入れている。
資源循環の視点からの研究開発
近年、化粧品業界では商品品質だけでなく環境配慮が重視されている。コーセーによる調査では、生活者の53%が化粧品メーカーに「廃棄物削減・資源循環」を最も求める取り組みと回答した。国内では年間約38.7万トンの化粧品が生産されており、容器回収や再利用の取り組みは進展してきた。一方で内容物の再資源化は課題が残されており、同社は2021年にメイク商品の絵具化を支援するモーンガータ社との協働を経て、成分レベルの再利用研究を開始した。
背景には、酸化亜鉛をはじめとした金属酸化物の輸入依存度やリサイクル率の低さがある。化粧品に使われる同成分を、高鍋・小畑・岸本研究室の電磁波反応技術を活用して再生材化することで、エネルギー変換などへの応用を検証する方向を示している。
共同研究による成果と今後の方針
開発はコーセーと東京大学との共同研究の形で進められており、大学側が化学システム工学分野の基礎技術を担う。一方コーセーは、化粧品由来金属酸化物の特性を踏まえて素材化の検討を行う構成をとっている。NEDOの助成を受ける研究フェーズのもとで進行し、実証段階に向けた試験系が整備される予定だ。展示発表はNEDOブース内に限定され、販売や再販に関する明示はない。
今回の技術開発は単発の実験的段階にあり、同社は酸化亜鉛以外の成分への応用可能性を探る研究を続けるとしている。研究成果の範囲は触媒合成技術にとどまり、市場投入や製品化に関する具体的な計画は示されていない。
今後、使われなくなった日やけ止めなどから触媒を生成する実証試験を進める予定としており、コーセーは化粧品を起点とした資源循環研究の一環に据えて研究開発を継続する方針を示した。