株式会社キマルーム(東京都千代田区)は12月22日、賃貸取引専用の電子申込・契約サービス「キマルーム 電子申込」「キマルーム 電子契約」の利用拠点が2万3000カ所を突破したと発表した。大東建託グループの一員として2024年7月の提供開始から1年半で大幅に拡大した。法令改正をきっかけに進む賃貸契約の電子化を背景に、全国的な導入が進んでいる。
同社は賃貸取引の電子化を業界標準として定着させることを目的に掲げる。申込から契約までを一気通貫で処理できるのが特徴で、操作ナビゲーションやチャット連携などの機能を備える。利用者が増加した背景には、宅地建物取引業法改正による電子契約の全面解禁と、繁忙期の契約業務効率化需要の高まりがある。今後は社宅代行会社との連携や新機能開発を進め、2030年までに7万拠点への拡大を目指す。
2万3000拠点に到達、処理時間7割短縮
キマルームの電子契約システムは、入居者や仲介業者、管理会社が同一画面上で契約手続きを進められる構成だ。契約書面の作成・送信・押印・管理をオンラインで完結させ、従来の書面型手続きに比べて平均70%の業務時間を削減した。
結果として、残業や郵送対応の削減にも寄与したとされる。書類紛失リスクも低減できるため、法人契約を含めた電子契約率が上昇しているという。
2025年12月時点の利用拠点は2万3000カ所に達し、前年から急速に拡大した。
宅建業者間のツール統一性不足が指摘される中、操作性を重視した設計が導入を後押ししている。
今後は外国語対応の拡充や導入プロセスの標準化により、事業者の負担を抑えて普及をさらに広げる計画だ。
賃貸契約DXの遅れを背景に
賃貸取引の電子化は、2022年5月の宅地建物取引業法改正により全面解禁された。だが、国土交通省の調査では書面電子化を導入済み、または導入経験を持つ企業は全体の3割に満たず、依然として紙ベースの契約が主流である。書面単位での課金体系の複雑さやツールの分散、現場に根強い紙文化が阻害要因とされる。
こうした状況を受け、キマルームは「賃貸借契約の全工程を電子化する」ことを方針に掲げた。
操作画面上に常時ナビゲーションを表示して次の作業を案内し、入居者や関係者とチャット連携しながら契約まで進める。
必要項目のみを展開するアコーディオン形式の表示で、作業負荷を軽減する設計だ。業界関係者の間では、電子契約の標準化が管理コスト削減や人的業務の削減につながるとの見方が強い。
藤井社長「DX推進は業界共通の課題」
不動産DX専門誌「R.E.port」によると、株式会社キマルーム代表取締役社長の藤井志郎氏は不動産取引のDX普及に関する記者説明会で、「賃貸借契約電子化の課題は業界全体で共有すべき」と述べた。
同氏は、重要事項説明や書類管理の対面依存を解消し、仲介・管理両社が共通設計の下で扱えるツールを整備する必要性を強調した。
また藤井氏は、法人契約の電子化と外国籍入居者への多言語対応を次の重点分野として位置づける方針を示した。
業界未開拓領域だった社宅代行会社との連携を具体化するほか、新機能開発やサポート強化により現場の運用負担軽減を図るとした。
DX推進をグループ全体の重点施策に据え、利用拠点拡大を進める方針だ。
電子契約普及の壁と展望
不動産業界では依然として「紙契約中心」の習慣が残ることから、電子契約の普及には利用者教育や規制対応の継続が不可欠とみられている。
帳票類の大量印刷や押印作業が常態化していたため、ツール移行における手続きギャップが生じやすい。
キマルームは導入サポート体制を強化し、進捗管理など現場での実装を支援する方針を示している。
外部では、法改正による電子帳簿保存法や電子署名制度の周知が進み、電子契約システムへの移行障壁は低下しつつある。クラウド型契約管理の導入が法人業務の定着を後押ししており、不動産分野でも連動する形でデジタル契約の事例が増加している。
電子契約の適用範囲が拡大する中、キマルームの展開は制度改正と市場動向の接点に立つ取り組みといえる。
今後は、宅建業界の約70%を占める中小事業者への導入支援がどこまで進むかが注目される。
中長期的には、多言語対応や法人契約機能の充実を通じ、賃貸契約のデジタルインフラとしてどこまで浸透できるかが焦点となるだろう。