川崎重工は、JFEエンジニアリング株式会社から「東邦ガス株式会社ガスエンジン発電設備建設工事」プロジェクト向けに、発電容量10万kW級のガスエンジン発電設備を受注した。対象は長期脱炭素電源オークションのLNG専焼火力枠で建設される案件で、系統運用面では周波数制御や需給バランス調整に必要な調整力の確保に関わる動きとなる。
本件は、東邦ガス株式会社が2024年度長期脱炭素電源オークションのLNG専焼火力枠を落札し、建設工事をJFEエンジニアリングが受注、その一部を川崎重工が担う枠組みとなる。川崎重工は、本設備および付帯機器、特高設備の供給と据付工事を担当する。発電設備はアンシラリーサービスに必要な調整力電源として位置づけられ、2030年度までの運転開始を予定している。
KG-18-V14基で10万kW級
設備は、発電出力7,500kWのガスエンジン「KG-18-V」14基で構成し、10万kW級の発電容量を確保する。複数台構成による柔軟な運用と高い稼働率の実現を掲げる。川崎重工によると、ガスエンジンを用いた中小規模分散型電源の特長や、同社の稼働実績が総合的に評価された結果として今回の受注に至った。
調整力電源は、一般送配電事業者が供給区域内の系統安定化業務を担う際に必要となる電源で、周波数制御や需給バランス調整のほか、潮流調整や電圧調整などのアンシラリーサービスに関わる電源として整理されている。長期脱炭素電源オークションの枠組みは、LNG専焼火力の新設・リプレースに長期の投資回収の予見可能性を付与する制度設計となっており、調整力確保に資する電源整備を後押ししている。
規模感としては10万kW級のガスエンジン発電設備であり、エンジン単体の積み上げで容量を構成する点が特徴だ。施工主体の役割分担では、EPC(設計・調達・建設)をJFEエンジニアリングが担い、川崎重工が特高設備を含む機器一式の供給と据付を担当する。EPCと機器供給・据付の境界を明確に区切った体制で進めることで、特高設備を含む供給範囲と据付工事範囲の整合を前提に工程が組まれる。
川崎重工は過去の実績として、沖縄電力から調整力電源用ガスエンジン発電設備を受注した事例を持ち、同設備は2020年9月の受注から2024年3月の運転開始に至っている。調整力用途のガスエンジン設備を供給してきた流れが、今回の受注にもつながったとみられる。
外部環境では、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、需給の変動に応じて出力を調整できる電源の確保が系統運用の主要な論点となっている。調整力電源はアンシラリーサービスの一部として、周波数・需給・潮流・電圧といった複数の制御要素に関わる。長期脱炭素電源オークションは、2050年カーボンニュートラルに向けて脱炭素電源の新設・リプレースや既設火力の脱炭素化に加え、LNG専焼火力の新設・リプレースも対象に含めることで、長期の投資回収の見通しを与える制度とされる。火力の役割を「調整力」へ寄せる設計が進むなか、ガスエンジンを用いた中小規模分散型電源を調整電源の一つとして組み込む動きが制度面からも促されている。
供給・据付を川崎重工
事業スキームは、東邦ガス株式会社がオークションで落札し、JFEエンジニアリングが建設工事を受注、その工事範囲の一部を川崎重工が担う形をとる。川崎重工の担当は、本設備および付帯機器、特高設備の供給と据付工事であり、発電設備は一般送配電事業者が担う系統安定化業務に資する調整力電源の一角を構成する。
運転開始時期は2030年度までとされ、長期脱炭素電源オークションのLNG専焼火力枠に基づく建設として、制度上の時間軸に合わせた整備計画となる。継続性の観点では、川崎重工が沖縄電力向けに調整力電源用ガスエンジン発電設備を受注し運転開始に至った既往があり、調整力用途での供給実績が積み上がっている。
JFEエンジニアリングは本件の建設工事を受注し、EPCおよび20年保守を担当する。中部地方で大型ガスエンジン発電設備の建設が進むことになり、ガス供給事業者がオークション制度を通じて電源投資を行い、エンジニアリング会社がEPCを担い、機器メーカーが供給・据付を担うという分業構造が具体の案件として表面化する。
オークション制度と脱炭素電源の波及
長期脱炭素電源オークションは、LNG専焼火力を含む新設・リプレースに長期の投資回収の予見可能性を与えることで、設備投資の意思決定を「調整力の確保」という系統運用上の要請と結びつけやすくしている。今回の案件では、調整力電源用としての用途が明確に位置づけられ、周波数制御や需給バランス調整などアンシラリーサービスに必要な機能を担う電源として整理されている。電源を単なる発電量確保ではなく、系統の安定運用に必要な機能を確保する観点から整備する動きが、制度活用の帰結として表れている。
業界内の類似事例として、電力会社が調整力用途でガスエンジン発電設備を導入した沖縄電力向け案件があり、川崎重工は同案件を2020年9月に受注し、2024年3月に運転開始へつなげた。今回は都市ガス事業者の東邦ガス株式会社がオークションで落札し、EPCをJFEエンジニアリングが担い、川崎重工が機器供給・据付を担う構図となり、発注者の属性と調達構造が異なる案件として位置づけられる。中部地方で大型ガスエンジン発電設備の整備が進む点も、電源投資の担い手が広がる方向性を示す材料となる。
脱炭素の文脈では、資源エネルギー庁が日本のCO2排出量を約12億トン/年とし、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてCCSによるCO2貯留量として1.2億〜2.4億トン/年が必要と整理している。2030年までに600万〜1200万トン/年の地下貯留目標も示されており、電源の脱炭素化と系統安定化を同時に進める政策パッケージのなかで、ガス火力をどう位置付けるかが産業側の設計論点となる。川崎重工は2025年7月に神戸工場内でダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)設備と、ガスエンジン発電所排ガスからのCO2回収設備を設置し実証試験を行う計画を示すなど、ガス利用とCO2回収を接続する取り組みも進めている。
今回の受注は、「オークション制度による長期投資の枠組み」と「アンシラリーサービスに必要な調整力」という2つの政策・運用要請が具体的な設備発注に結びついた事例となる。ガスエンジンは複数台構成をとりやすく、案件ごとに必要容量へ積み上げられるため、設備計画と運用計画を結び付けた設計が行いやすい。中部地方での大型案件が動くことで、都市ガス事業者、EPC、機器メーカー、系統運用の各レイヤーが調整力という共通要件で接続される構図が一段と鮮明になり、川崎重工にとっては調整力電源分野での実績を生かしつつ、長期脱炭素電源オークションのLNG専焼火力枠に基づく制度活用型の電源投資に対応した受注として位置付けられる。
