鹿島は、道路や橋梁などのインフラに光ファイバーを埋設し、交通状況や構造物の異常をリアルタイムで把握する技術の研究開発を進めている。阪神高速道路淀川左岸線(2期)海老江区間では、光ファイバーによる道路・交通の管理技術「デジタルロード」の実証実験を行い、路面に刻んだ溝へ光ファイバーを埋設し、取得データから車両の速度を割り出して表示する運用を示した。
実証は、鹿島が工事を担当する区間で自動車メーカーと共同で進め、阪神高速道路の「コミュニケーション型研究制度」を活用している。人工衛星の電波を使うGPSと異なり、高速道路全体に光ファイバーを通すことで、車両の走行状況や路面凍結、橋梁など構造の変化を線的に把握できる点を特徴として打ち出す。
海老江約1キロ埋設
海老江区間では、約1キロにわたって路面に溝を刻み、光ファイバーを埋設した。テスト車両の走行に合わせ、計測事務所のディスプレー上で車両を表す印が動く様子を確認できる。光ファイバーは温度や振動、ひずみに応じて内部を通る光が変化する性質を持ち、現場に敷設したケーブルから連続的にデータを取得する仕組みだ。
鹿島は7年ほど前からインフラ管理に光ファイバーを活用する研究を進めており、今回の「デジタルロード」実証もその延長に位置づける。埋設方法と計測データの分析ノウハウを強みとし、約20年以上使用した光ファイバケーブルでも高精度に計測した実績がある。道路の路面に溝を設けてケーブルを通す手法は、既設構造物への後付けに近い形でセンシング機能を持たせる狙いがある。
外部環境では、埼玉県八潮市で県道が陥没する事故が発生するなど、インフラの老朽化が課題となっている。国土交通省も持続可能なインフラ維持管理を目標に研究開発を推進し、長寿命化技術の検討や成果共有を進めている。光ファイバーなどセンシング技術は、点検・監視業務の高度化と効率化に資する手段として期待が高まる。国内では通信用光ファイバーの整備が進み、インターネット光ファイバーの世帯普及率は2023年3月末時点で99.84%に達した。既存の通信網をセンシングへ転用する発想も含め、インフラ監視の基盤条件が整いつつあるとの見方が出ている。
協業で路車協調
今回の実証は、鹿島が自社の工事区間で自動車メーカーと共同で進める枠組みを採る。光ファイバーの埋設方法や計測データの分析ノウハウを鹿島側の強みとし、道路側から凍結など路面状態を車に伝える「路車協調」を見据えた取り組みだ。大阪市は、建設中の高速道路の一部を「大阪市新技術フィールド実証」として提供し、大阪・関西万博の開催に合わせて新技術の検証の場として活用している。
協業の具体像として、鹿島建設とSUBARUは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場アクセス道路として使用される高速道路で、光ファイバセンシング技術を用いた路車協調型自動運転の実証実験を開始した。道路側のセンシングで得た情報を車両制御へどうつなぐかが焦点となり、建設会社と自動車メーカーが同じフィールドで連携して検証を進める。加えて、光ファイバーをグラウンドアンカーに用いた張力計測システムを高速道路で初適用し、切土のり面の健全性を監視した事例もある。交通インフラの運用と構造物監視を同じ計測基盤で扱う方向性が浮かび上がる。
関連分野では、通信用光ファイバーを用いたセンシングで地中空洞の検知に挑む動きや、光通信とAIを組み合わせて振動情報を感知・解析する技術の海外展開など、通信・電機系企業の取り組みも広がっている。鹿島も自動物流道路に光ファイバーを敷設し、落下物や火災を検知して搬送機器を停止する技術を開発しており、道路・物流のリアルタイム管理に光ファイバーセンシングを横断的に適用する道筋を示す。
供給・運用面では、実証実験の海老江区間で光ファイバーは路面に削った溝の中を通し、白線用の塗料で封印する構造とした。費用面では埋設コストの負担が課題であり、複数の事業主体でどこまで費用負担を分かち合えるかが普及に向けたカギとなる。既存の通信用光ファイバー網の活用や、他業種にとって魅力的なデータの発掘・提供をどう組み合わせるかが焦点となる。
今回の取り組みは、阪神高速道路の制度や大阪市の実証枠組みを使い、建設段階の高速道路で計測から表示まで含めた運用を示した点が特徴だ。今後は、光ファイバーの埋設区間の管理主体や、道路側データを車両側へ伝える協業の役割分担、埋設コストの分担方法などを巡る調整が課題となる。鹿島は海老江区間での実証を通じ、光ファイバーによる道路・交通管理技術「デジタルロード」の実用化に向けた検証を重ねている。
