関西電力が福井県内の2原発3基で、原子炉に入れる核燃料の配置方法の変更を計画していることが4日、分かった。使用期間が長い燃料を原子炉外周に現在より多く並べる。長期運転に伴い課題となる使用済み核燃料の発生量と、原子炉の劣化を抑える効果があるという。
計画は炉内燃料再配置として、原子炉中心付近に集中的に置いている古い燃料の一部を外周に配置転換し、炉外へ漏れる中性子の量を減らす狙いだ。対象は運転開始から50年超の高浜原発1、2号機と、49年の美浜原発3号機で、まず来年1月に始まる高浜1号機の定期検査で導入を目指す。海外で先行例がある一方、国内では初めての試みになるという。燃料利用の効率化が運転と検査の繰り返しに影響し得る点が焦点となる。
3基で各157体運用
関西電力によると、3基の炉内には各157体の燃料集合体が並び、検査ごとに約3分の1を交換する。最大13カ月の運転と検査を3〜5回繰り返すと、燃料4体程度の節約になるとしている。中性子が原子炉圧力容器に当たる数も数割減らせ、容器がもろくなる「照射脆化」の抑制につながる可能性があるという。炉外へ漏れる中性子を減らすことで核分裂反応を起こす中性子を無駄なく使い、燃料の利用効率を上げるとしている。
対象となる高浜原発1号機は1974年11月14日に運転を開始し、2号機は1975年11月14日に運転を始めた。美浜原発3号機は1976年12月1日の運転開始で、いずれも運転年数が長い設備に分類される。関西電力は長期運転に向けた手続きも進めており、2023年度に高浜原発1、2号機の運転期間延長申請を原子力規制委員会に提出し、2024年7月に審査合格となった。美浜原発3号機も2024年1月に延長申請を行い、審査の対象となっている。炉内燃料再配置は、こうした長期運転対応の取り組みの一つとなる。
制度面では、原発の運転期間は原子炉等規制法で「原則40年、最長60年」と定められてきた。政府は2022年に「原発の最大限活用」へ方針転換し、25年6月に「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が全面施行される。原子力規制委員会の審査などで停止した期間を60年に上乗せして延長運転できる枠組みが整うなか、電力各社は長期運転に伴う設備の劣化などへの対応が課題になっている。経済産業省によると、国内の使用済み核燃料の貯蔵量は2023年に約1,800トンとなり、2030年に2,200トン超へ増える予測が示されている。再処理施設の稼働遅延が続く状況では、発生量の抑制に向けた燃料利用の効率化が、運転継続と合わせて論点になり得る。
警報遅れが主要論点
一方で、炉外へ漏れる中性子が減ることは監視の仕組みに影響し得る。核分裂反応の様子は炉外の中性子検出器で監視しているため、漏えい量が減れば異常を知らせる警報が鳴るのが遅くなる恐れがある。関西電力は、警報が鳴ってから反応が連鎖的に続く「臨界」に至るまでの対処に要する時間を定めており、これを守れる範囲内で実施する考えだ。
運用面では、対象を高浜原発1、2号機と美浜原発3号機の3基に限定し、定期検査のタイミングに合わせて燃料の入れ替えと同時に配置転換を組み込む。3基とも炉内に157体の燃料集合体を並べ、検査ごとに約3分の1を交換するサイクルを維持してきた経緯がある。今回の炉内燃料再配置は、既存の交換運用の枠内で、中心付近に集中的に置いてきた古い燃料の一部を外周へ動かすことを柱とする。炉内の異常に気付くのが遅れる恐れがある点を論点とし、安全性に影響がないよう確認しながら進めるとしている。
長期運転技術の競争
炉内燃料再配置は、長期運転に伴う「燃料」と「設備劣化」を同時に扱う技術メニューの拡充を象徴する。原子力規制委員会の整理では、国内商業用原発52基のうち40年超運転中は6基となり、60年超の申請見込みは10基超とされる。停止期間を運転期間から除外できる制度の整備が進むなか、長期運転を支える個別技術の採否が、定期検査と運転計画の組み立てに直結しやすくなっている。関西電力が3基を対象に、まず高浜1号機の定期検査で導入を目指す動きは、延長運転の審査手続きと実際の運用の接点を意識したものといえる。
海外では、加圧水型軽水炉(PWR)で高燃焼度燃料の配置最適化に取り組む事例が積み上がってきた。米Entergy社のWaterford原発3号機では、2010年代初頭に高燃焼度燃料の配置最適化を実施し、使用済み燃料の削減率が約5%となったとされる。国内では、東北電力が女川原発2号機で2023年に、長期運転対応の炉心燃料配置調整の試験を実施し、中性子漏れ低減の確認や照射脆化の抑制効果が報告された。各社が燃料配置や炉心解析の高度化を進める流れは、運転年数の長い設備が増える局面で、燃料利用の効率化と劣化抑制を同時に図る必要性が高まっていることを示す。
国内の競合動向では、燃料の利用効率向上に向けた解析・設計の投資も進む。中部電力は浜岡原発で2024年に炉心解析ツールを導入し、燃料節約が2〜3体/サイクルとなった実績を示している。東京電力は柏崎刈羽原発で、圧力容器の照射脆化対策として中性子シールド材の検討を進めており、中性子の影響を抑える技術的発想は複線化している。背景には、長期運転の議論が制度面の整備にとどまらず、設備健全性の維持と燃料サイクル制約への実務対応へと移りつつある構図がある。
電源構成の議論とも接続する。関西電力は2030年度の電源構成で原子力28〜34%を目標に掲げ、GX脱炭素電源法の施行を見据えつつ長期運転技術の開発に注力している。電力白書では、2024年時点の原子力発電量の国内シェアは7.5%とされ、GX目標では2030年に20〜22%へ引き上げる方向性が示される。運転停止期間の扱いが変わる制度改正と並行し、燃料利用の効率化や照射脆化の抑制といったテーマは、設備更新の投資負担や燃料供給制約の中で、運転計画の選択肢を広げる論点となっている。
今回の取り組みは、炉外監視に用いる中性子検出器との関係が運用の焦点となり、警報が鳴るタイミングと対処時間の設定のもとで実施される。来年1月開始の高浜1号機定期検査を起点とした工程と、対象3基に限定した適用範囲が前提となるなか、関西電力は高浜原発1、2号機と美浜原発3号機で炉内燃料再配置の導入を進める計画だ。
