亀田製菓株式会社(新潟県新潟市)は2月18日、取締役会で普通株式1株を3株に分割することを決定した。発効日は4月1日。この分割に合わせて会社定款の発行可能株式総数を引き上げ、株主優待制度も内容を改定する。株価の投資単位を引き下げて投資しやすい環境を整えるのが狙いだ。
同社は今回の決定を通じ、幅広い投資家層の取り込みを進めるとともに、株主の中長期的な関係構築を図る。株式分割は資本金に変更を伴わず、定款変更は会社法第184条第2項の規定に基づき取締役会で決議した位置づけとなる。
1株を3株へ、発行可能株式総数を約3倍に
亀田製菓の株式分割は、3月31日を基準日に1株を3株にする。これにより発行済み株式総数は現行の約2,231万株から約6,695万株に拡大する。発行可能株式総数も約5,925万株から約1億7,775万株へと3倍に引き上げる。基準日公告は3月16日を予定しており、効力発生日は4月1日とした。
2026年3月期の期末配当は分割前の株式を対象とし、資本金の額に変更はない。株式市場では近年、個人投資家の取引単位を軽減する目的で分割を行う企業が増えており、同社もその流れに沿った対応といえる。
株主優待は通販クーポン方式に変更
優待制度の改定は、株式分割に伴う保有株式数の変化に対応し、9月30日基準分から適用する。従来は100株以上の株主に対して自社製品詰め合わせを贈呈していたが、変更後は「通販いちば」で利用できるクーポン方式に切り替える。100株以上300株未満の保有者に500円相当から、3,000株以上の株主には4,000円相当まで段階的に設定する。
株式分割により投資単位が実質的に引き下げられることから、小口の株主が優待対象となる枠を拡大し、株主の日常的な接点を増やす狙いもある。
クーポン形式とすることで、物流コストや管理負担の軽減も見込まれる。
中長期の経営方針と制度整備
亀田製菓は「ライスイノベーションカンパニー」として、米を主軸とする総合食品企業への転換を進めており、2023年に中長期成長戦略を策定した。国内外での研究・開発に加え、北米やアジア各拠点での事業拡大を続けている。
海外売上高比率は既に全体の3割超に達しており、米菓製造の国際展開も進んでいる。
持続的成長を掲げる同社では、サステナビリティを重要課題として位置づけ、第三者認証の維持率を100%水準で継続。温室効果ガス排出量の削減など環境面での施策も進める。
保有株主の広がりを意識した制度見直しは、こうした経営基盤の安定化を裏付ける取り組みの一環といえる。
食品企業としての持続性に焦点
日本の食品メーカーでは、少子高齢化や調達環境の変化に伴い、企業価値の維持と社会的信頼の両立が課題となっている。
亀田製菓は品質と安全体制の維持、環境負荷の低減、持続可能な原材料調達などを明示した上で、中長期的な価値向上を目指している。今回の株式分割と制度改定は、こうした施策を支える株主層の多様化に対応したものだ。
保有株式数に応じたインセンティブを細分化することで、個人株主や新規投資家が企業活動への関与を高めやすくする狙いもあるとみられる。
今後は新たな株主構成下で、配当や優待などの資本政策がどのように機能するかが注目点となる。
業界内での動きと制度の位置づけ
食品関連企業では、近年株式分割や優待制度のデジタル化が進む傾向にある。物流や原価の上昇に対応しつつ、株主還元策の見直しで企業ブランドを維持する流れだ。特にクーポンやデジタル優待を採用する例が増えており、環境配慮や効率化の観点からも広がりを見せている。
亀田製菓の今回の制度改定も、物品の発送から電子的な提供へ移行する点で同様の方向性を示している。
食品メーカーとしての信頼性と同時に、株主との接続手段を現代的に整える対応だといえる。
今回の決定は、資本効率と企業価値の両立を目指す亀田製菓の資本政策の一端を象徴している。食品業界における株主還元とガバナンスのあり方を考える上で、ひとつの実行事例となりそうだ。