株式会社KADOKAWAと株式会社VEXZ(ベクス)は、VEXZがプロデュースするVTuberプロダクション「AceeeZ(エーシーズ)」所属アーティスト「まりなす」「LiLYPSE」、サポートアーティスト「綺羅星ぺんた」などが、KADOKAWAのYouTube MCN「CSP(クリエイターサポートプログラム)」の利用を開始したと発表した。CSPを通じて著作物の二次利用が可能となり、動画制作やライブ配信で扱えるコンテンツの範囲が広がる。
CSPは、YouTubeのMCN機能にKADOKAWAが独自開発した二次利用の管理・収益分配システムを組み合わせた仕組みを採る。ゲーム・アニメ・カラオケ音源などの著作物を二次利用できる点が特徴で、VEXZおよびAceeeZのアーティストが音楽・映像・ライブ演出など創作活動の幅を広げることを狙う。KADOKAWAにとっては、自社が保有する著作物(IP)の許諾管理を起点に、外部クリエイターとの連携を強化する取り組みとなる。
CSPは780超が利用
CSPは2022年3月に提供を開始し、現在はVTuberやストリーマーのほか、アニメ公式チャンネルや切り抜きチャンネルなど幅広い国内外のYouTubeチャンネルが参加している。利用チャンネル数は780以上、累計チャンネル登録者数は6,800万人超(2026年3月時点)とされ、KADOKAWAがYouTube上での権利処理や収益分配の仕組みをパッケージとして外部に提供してきた蓄積がうかがえる。
VEXZは8年間のVTuber運用と6年間の興行制作の実績を持ち、バーチャルコンテンツの企画から制作、運用まで一気通貫で対応してきた。ユニットのプロデュースやイベントの主催・制作も手掛け、具体的にはVTuber音楽フェス「Life Like a Live!(えるすりー)」「Virtual Music Award(ブイアワ)」の主催、VTuber体験型博覧会「VTUBER EXPO 2026」の幹事実施など、オンラインとリアル・バーチャル会場を横断するプロジェクトを多数担ってきた。
KADOKAWAはCSPを通じて、自社アニメ(一部)やクリエイターコンテンツなどの二次利用を認め、「創作の連鎖」を世界的に広げる方針を掲げる。VEXZやAceeeZ側は、こうした二次利用可能な著作物を活用しやすくなり、楽曲カバーやゲーム実況、アニメ関連企画などでの展開が取りやすくなる。AceeeZのユニットでは、「まりなす」が歌唱・ダンス・変身エフェクトを特徴とする2人組(燈舞りん・鈴鳴すばる)、「LiLYPSE」がダークポップ路線の双子シンガー(暁みかど・暁おぼろ)、「綺羅星ぺんた」が踊り手・足太ぺんたのバーチャル姿として位置づけられている。
連携線引きの整理
今回の枠組みは、AceeeZ所属アーティストらがCSPに参加し、その機能を利用する形となる。動画内で用いる著作物の利用条件と、その収益配分をあらかじめ整理したうえで提示することで、制作現場における判断を簡素化する構造だ。
著作物の二次利用では、権利処理や分配が複数の権利者・事業者にまたがり、制作側が利用可能な範囲を個別に確認しながら運用するケースが多い。CSPは「許諾」と「管理・分配」を一体の仕組みとして組み込み、YouTube上の制作・配信に直接接続させる設計を採ることで、制作現場の負担軽減と収益の透明性向上を図る狙いがある。
まりなすらによるCSP利用は、今後の連携モデルのひな型と位置づけられ、両者が持つ強みを組み合わせた新サービスや協業についての検討も始まる。CSP側は二次利用許諾の枠組みとその運用システムを提供し、VEXZ側はVTuberの制作・運用や興行制作のノウハウを持ち寄る。役割の異なる2社が、具体的なアーティスト運用の実績を重ねながら、新たな共同企画や収益モデルの構築を探る流れとなる。
取引実務の面では、どの著作物をどの条件で利用できるか、その対価をどのように分配するかといった論点をCSPの枠内で標準化し、関係主体ごとの役割分担を事前にすり合わせたうえで配信・イベントへ接続する体制づくりが焦点となる。制作会社、権利者、配信プラットフォーム、タレント事務所が共通の枠組みを参照できるかどうかが、運用コストや紛争リスクの抑制にも直結する。
MCN連携の競争軸
VTuberや配信者を巡るMCN連携の競争軸は、チャンネル運営支援やマネジメントにとどまらず、著作物の二次利用を含む「権利処理・収益分配の設計」へと広がりつつある。VEXZのユニット運用や興行制作は、オンライン配信とリアル・バーチャルイベントが交差する場面が多く、ゲーム・アニメ・カラオケ音源などをどの条件で使うかが、制作計画や収益設計に直結しやすい。
KADOKAWAのCSPは、YouTubeのMCN機能と自社システムを組み合わせることで、権利処理と分配を運用面で接続し、クリエイターが利用しうる著作物を制度として束ねる方向性を示している。同種の連携はVTuber業界全体でも進んでおり、MCNを介して収益化やコラボレーションを支援する動きが広がるなか、CSPはKADOKAWAのIPの二次利用許諾を中核に据え、VTuber・ストリーマーからアニメ公式、切り抜きチャンネルまで多様なプレーヤーを取り込んでいる。
背景には、デジタル著作権管理と収益分配の効率化を業界共通の課題とみなし、MCNや権利処理支援の仕組みを解決策の一つとして活用しようとする動きがある。VEXZが主催・制作してきた「Life Like a Live!(えるすりー)」「Virtual Music Award(ブイアワ)」や「VTUBER EXPO 2026」などの取り組みは、配信外の接点を増やし、IPの価値を多面的に引き出す試みでもあり、スポンサー企業とのタイアップや物販、リアルイベント収入など、収益源の分散にもつながっている。
VEXZはCSP利用開始と同日に、メタバース空間「ユニバーチャルランド」を5月10日にオープンすると発表した。配信、イベント、仮想空間といった接点の多様化が進むなかで、著作物の取り扱いルールは、関与する制作主体が増えるほど複雑になりやすい。CSPは二次利用の管理と収益分配を一体で運用可能にすることで、こうした複線的な展開を支える基盤の一つとなる可能性がある。VEXZの制作・運用実務とどの程度かみ合い、新たなコラボレーションやビジネススキームをどこまで引き出せるかが、今後の注目点となる。
