九州旅客鉄道株式会社(福岡県福岡市)は、兼松株式会社、株式会社JTB、株式会社SkyDrive、Skyports株式会社とともに、大分県内における「空飛ぶクルマ」の社会実装プロセスを検討する調査の最終報告をまとめた。離着陸場(バーティポート)の適地選定やユースケース検討を進め、今後の施設整備や運航検討の論点整理に資する内容とした。
調査は、大分県事業「令和7年度 次世代空モビリティ商用サービス開発事業費補助金事業」の一環で実施した。JR九州がコンソーシアム代表として採択された補助事業を活用し、運航ルートの蓋然性検証を踏まえた離着陸場の適地選定、産官学連携による地域課題解決に向けたユースケース策定、社会受容性の向上に向けたプロモーション動画の製作を進める狙いを掲げている。
候補地48カ所を抽出
離着陸場の検討では、地元ステークホルダーへのヒアリングとコンソーシアム内での調査に基づき候補地をリストアップした。地上アクセスや空域規制、後背地、周辺施設への配慮、面積などの指標に基づき、計48カ所の候補地を抽出した。選定にあたっては、鉄道駅や港湾施設との連携や土地の特性を重視し、開発可能性の高い候補地を選んだ。検討の中心は、2028年度頃の商業運航開始を見据え、開発の実現性が見込まれる3つの市(別府市、由布市、大分市)に置いた。
産官学連携の取り組みでは、立命館アジア太平洋大学と連携し、学生や地場企業・団体など約80名が参画するワークショップとフィールドワークを3回開催した。別府と湯布院で地域課題を抽出し、一般社団法人由布市まちづくり観光局の協力のもと現地視察も実施した。観光や生活における課題、次世代空モビリティの利活用について議論し、観光、地域交通、医療、物流・防災などのユースケースを検討した。社会受容性の向上に向けては、「次世代空モビリティがある大分」をテーマとしたイメージ動画を作成し、地域における将来像を提示した。
実施体制は、代表構成員をJR九州とし、構成員に兼松、JTB、SkyDrive、Skyportsが加わる形をとっている。離着陸場の検討は、2025年2月に大分県、JR九州、SkyDriveの3者が締結した連携協定に基づき進めた。調査で扱った要素は、運航ルートの蓋然性検証を踏まえた離着陸場の適地選定と、産官学連携の枠組みでのユースケース検討、社会受容性向上に向けた動画製作だ。
規模感の面では、離着陸場候補地の抽出数が48カ所に達した点に加え、産官学の議論の場に約80名が参画した点が目を引く。ワークショップとフィールドワークは計3回実施し、検討対象のユースケースは観光、地域交通、医療、物流・防災と複数領域にまたがった。空域規制や地上アクセスなど、運航と施設整備を同時に見据えた指標で候補地を絞り込んだ点も、今後の詳細調査や整備要件整理に直接つながる工程となる公算が大きい。
これまでの経緯では、JR九州が2025年2月に大分県およびSkyDriveと次世代空モビリティの連携協定を結び、県内での社会実装を視野に検討を進めてきた。今回の調査は、県の補助金事業を活用し、候補地選定とユースケース策定、社会受容性向上に向けた動画制作を同一の枠組みで進めた。協業企業側でも、SkyDriveは2025年大阪・関西万博でのデモフライト実施や、2028年のサービス開始を目指す動きを示しているほか、静岡県磐田市のスズキグループ工場で空飛ぶクルマの製造開始を掲げており、生産と運航準備を並行させる体制構築を急いでいる。
外部環境では、国土交通省が次世代空モビリティを、電動化・自動化と垂直離着陸を特徴とする運航形態を通じた「利用しやすく持続可能な空の移動手段」と整理し、Advanced Air Mobility(AAM)やUrban Air Mobility(UAM)として政策を進めている。大分県は同補助金事業を通じ、空飛ぶクルマの社会実装ノウハウの蓄積や、新たな移動価値と産業エコシステムの創出を掲げる。県内では2026年2月26日に、大分県がAirXと「空飛ぶクルマの社会実装に向けた包括連携協定」を締結し、観光遊覧や空港アクセスの活用検証、機運醸成イベント、バーティポート網構築、広域移動・観光・災害・救急対応といった論点を扱う枠組みも動いている。こうした県の施策群の中で、JR九州が代表を担う今回の検討調査は、候補地とユースケースを同時に整理した取り組みとして位置づけられる。
運航と整備の役割整理
コンソーシアムは、JR九州が代表構成員となり、兼松、JTB、SkyDrive、Skyportsが構成員として参画する体制をとる。離着陸場検討は、2025年2月に大分県、JR九州、SkyDriveの3者が締結した連携協定に基づき進め、検討の中心を別府市、由布市、大分市に置いた。候補地抽出では地元ステークホルダーへのヒアリングとコンソーシアム内調査を組み合わせ、地上アクセスや空域規制、後背地、周辺施設への配慮、面積などの指標を用いた。ユースケース検討では、立命館アジア太平洋大学と連携し、学生や地場企業・団体など約80名が参画するワークショップとフィールドワークを3回実施し、別府と湯布院での課題抽出や現地視察を踏まえて議論を重ねた。
今後は選定された離着陸場候補地の詳細調査を実施し、具体的な施設整備要件の整理、運航ルートの事業性検証、および事業開始までのロードマップ策定を進めるとしている。供給面では、候補地を48カ所まで抽出したうえで、鉄道駅や港湾施設との連携、土地の特性を重視して開発可能性の高い候補地を選定する流れを示した。運用面では、運航ルートの蓋然性検証を踏まえた適地選定、産官学連携の枠組みでのユースケース検討、社会受容性向上に向けた動画製作の3点を並行して扱った構図となった。
今後の注目点は、候補地の詳細調査で対象範囲をどう定め、施設整備要件の整理、運航ルートの事業性検証、ロードマップ策定をどの主体が担うかの役割分担にある。取引管理や法人営業の観点では、候補地の詳細調査の対象範囲と、施設整備要件・運航ルート検証・ロードマップ策定の作業分担が、各社の関与範囲やリスク・リターン配分を事実上固定する要素となる可能性があり、今後の協業スキームの設計を左右する局面を迎える。
