株式会社ジェイズ・コーポレーション(大阪府茨木市)は、兵庫県の株式会社セントラルサーキットの全株式を取得する契約を締結した。譲渡実行は2026年1月末を予定し、新体制での運営を引き継ぐ。関西屈指のモータースポーツフィールドである同サーキットの刷新と、次世代型モータースポーツ環境の構築を目指す。
ジェイズ・コーポレーションはチューニングパーツの開発・販売を手掛ける企業で、今回の買収は事業領域をサーキット運営に広げる狙いだ。自社が国内外の走行拠点で培った安全思想や技術力を活用し、設備改修やイベント拡充に反映させる。これにより、車両開発・販売・体験を一体化したモータースポーツ事業の基盤を整えたい考えだ。
安全・体験強化を柱に新体制へ
契約締結に伴い、ジェイズ・コーポレーションは譲渡後、セントラルサーキットの運営権を取得し、施設改修とサービス強化を段階的に実施する。設備面では安全基準の見直しを進め、ピットや観覧エリアの改装、電動車両への対応設備拡充を計画する。
また、初心者からプロドライバーまでが参加できる走行会や耐久イベントの拡大も掲げた。これまで別々の領域で展開してきた車両開発と走行環境の整備を融合させ、技術検証や製品開発を含む実践的な場として位置づける。
さらに、若手ドライバーを対象とした育成プログラムを新設する方針だ。
ジェイズ・コーポレーション代表の梅本淳一氏は、「セントラルサーキットを次のフェーズに進化させる」と述べ、長年の協力関係を活かした新しい運営モデルを示した。
取得対象となるのはセントラルサーキット事業で、運営移管後も地元スタッフを中心に体制を維持する方針を明らかにしている。
30年の関係を土台に連携深化
両社は約30年にわたり交流を重ねてきた。セントラルサーキットは1996年に開業し、全長約2.8㎞のコースを有する関西を代表するレーシング拠点として知られる。
ジェイズ・コーポレーションも創業以来、「パーツ開発は常にサーキットで培われる」の理念のもと、車両テストやイベント企画を通じて同サーキットと協力してきた経緯がある。
今回のM&Aにより、両者の関係は単なる取引先から経営統合へと発展し、共同でモータースポーツ文化の振興にあたる体制が整う。
セントラルサーキットの井入宏之社長は、近年求められる安全基準や設備更新の負荷を背景に、持続的な運営のために経営資源の再編を進めると判断したという。
同社ではJAF公認コースとして多様なカテゴリーのレースを年間通じて開催しており、その実績を維持するには大型投資が不可避とみられていた。
譲渡後もサーキットのブランドと運営スタイルは継承される見通しだ。
関西モータースポーツの基盤再構築へ
今回の取得により、関西におけるモータースポーツのインフラ強化が進む見通しだ。国内ではコース老朽化や利用者層の多様化が課題となっており、地方都市に立地するサーキットでも安全対応やEV化への投資が急務となっている。
ジェイズ・コーポレーションはイベント拡張と並行して大規模なコース延伸も検討しており、国際競技の受け入れやメーカーのテスト利用を視野に入れる。同社の海外ネットワークを背景に、北米やアジアとの交流促進も想定されている。
セントラルサーキット側では、M&Aを「再生ではなく進化のための決断」として位置づけている。
地域では観光需要や雇用創出への効果も期待され、自治体関係者からも注目が集まる。梅本氏は「地元社会への還元を果たすことが使命」と述べ、産業面だけでなく地域との共生を重視する姿勢を示した。背景には、モータースポーツを通じた人材育成と地域活性化を結びつける全国的な動きがある。
既存発表から見える運営課題
ただ、サーキット運営を取り巻く環境は必ずしも安定しているとは言い難い。走行イベントの安全対策や騒音規制、天候リスクなど運用面のコスト増加が業界共通の課題となっている。特に設備投資は安全性確保と直結するため、資金配分やメンテナンス体制の整備が注目点となる。井入社長も「安全で魅力ある走行環境の提供を確信している」と述べる一方、運営持続のための仕組みづくりの重要性を指摘している。
業界関係者の間では、ジェイズ・コーポレーションが得意とする車両開発ノウハウや国際販路を運営面に取り込むことで、サーキットの競争力が高まるとみられている。
自社ブランド「ジェイズレーシング」で培った技術や設計思想を活かすことで、イベント企画や利用プログラムに独自性を持たせる方向性がうかがえる。
連携拡大と施設改修の進捗に注目
譲渡実行は2026年1月末を予定しており、その後は段階的にリニューアル計画が動き出す見通しだ。
施設改修、イベントの多様化、育成プログラムの整備など複数のテーマが並行して進む予定で、スケジュール管理と人材配置が運営初期の焦点となる。
ジェイズ・コーポレーションは今後の計画を通じて、モータースポーツ文化を支える基盤づくりを進める方針を示している。