国立大学法人東京大学と株式会社ITコミュニケーションズは、2026年4月1日に「マーケティング最適化のための統合的システム分析」社会連携講座を開設する。産業財(BtoB商材)の購買意思決定プロセスを、システムデザイン・システム思考に基づく動的モデルとして可視化することを目指す。これにより、意思決定支援につながる狙いがある。
講座では、従来のマーケティング・ファネルや単純で静的なモデルでは捉えきれなかった複雑性を扱う方針を示している。東京大学の研究チームが専門とするシステムデザイン・システム思考の理論を、BtoBの購買センター(Buying Center)を前提とする意思決定の分析に導入する。株式会社ITコミュニケーションズが現場で重視してきた「組織力学の読み解き」や「合意形成の停滞要因の見極め」を、工学的・理論的に再現し、再現性のあるマーケティング介入手法として確立することを目的に掲げる。
講座は3年間で設置
設置期間は2026年4月1日から2029年3月31日までの3年間とする。代表教員は東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻の稗方和夫教授が務める。講座名は「マーケティング最適化のための統合的システム分析」とした。
研究では、曖昧性を含む情報を客観的に記述・整理するため、システム思考に基づく利害関係者分析や要求工学の手法を活用する。製品・サービスの価値や強みは因果関係ダイアグラムなどの定性的モデルとして構造化し、評価指標設計や広告・コミュニケーションチャネルの組み合わせに関わる実務上の意思決定支援を目指す。
BtoBの購買は、技術部門、調達部門、経営層など複数の関係者からなる購買センターによって行われるとされる。合理的な評価軸だけでなく、組織内の利害関係や影響力、合意形成のプロセスが絡み合い、意思決定の全体像を捉えることが難しいという課題がある。
東京大学側は、複雑な社会・産業を対象としたシステムデザイン・システム思考を、海上物流のゼロエミッション化や地方交通サービスといった課題へ適用してきたとしている。株式会社ITコミュニケーションズは2007年設立で、BtoBマーケティング支援に携わる中で、判断が熟練者の経験や勘に依存し、ノウハウが属人化しやすいという課題を認識しているという。
役割分担と未確定点
講座は東京大学と株式会社ITコミュニケーションズが共同で開設する枠組みをとる。研究の代表教員は稗方和夫教授と明示され、本社会連携講座責任者として株式会社ITコミュニケーションズの菊地浩幸専務取締役COOの氏名が記載されている。問い合わせ対応では、事務局業務の委託先として株式会社イノベストが示されている。
今後は、設置期間の枠内で、定性的モデルの構造化を基にした評価指標設計やコミュニケーションチャネルの組み合わせに関する意思決定支援が、どの範囲で実装されるかが焦点となる。取引管理や法人営業の観点では、講座で扱う分析手法の適用対象や、知見の共有方法がどこまで明示される形をとっているかを確認する必要があるといえる。
