将来宇宙輸送システム株式会社(東京都中央区、代表取締役:畑田康二郎、以下ISC)は、インキュベイトファンド、B Dash Venturesなどを引受先とする第三者割当増資により約32億円を調達した。完全再使用型の単段式宇宙往還機(SSTO)「ASCA 3」による高頻度宇宙輸送を2040年代に実現することを最終目標に掲げ、当面は再使用型ロケット「ASCA 1」の開発を進める。資金面の手当てにより、開発の継続に向けた体制整備を加速させる。
ISCは今回の資金調達を、宇宙往還を可能とする輸送システムの実現に向けた開発を継続するための経営基盤の確保と位置づける。開発テーマとして、再使用型の人工衛星打上げ用ロケット「ASCA 1」に加え、有人宇宙輸送システム「ASCA 2」の概念検討、完全再使用型の単段式宇宙往還機「ASCA 3」による高頻度宇宙輸送を2040年代に行う最終目標を掲げる。資金調達では、将来的な事業連携を見据えた投資家との関係構築も重視した。
第三者割当増資32億円
調達額は約32億円。引受先にはインキュベイトファンド株式会社、B Dash Ventures株式会社のほか、愛知産業株式会社、あおぞら企業投資株式会社、株式会社北洋銀行、株式会社JALエンジニアリング、NES株式会社、XTech Ventures株式会社などが名を連ねる。第三者割当増資全体のうち、事業会社(コーポレートベンチャーキャピタル=CVCを含む)による出資が約4割を占める構成とした。
政府支援の採択実績も示した。文部科学省の中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)宇宙分野(事業テーマ:民間ロケットの開発・実証)に採択され、ステージゲート審査を通過し最大50億円の補助金対象となっている。宇宙戦略基金事業(第二期)でも、技術開発テーマ「有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術」に採択されている。
ISCは2022年5月2日に創業し、現在は100名を超える従業員規模に拡大した。累計の民間資金調達額は約44億円、補助金採択等の政府支援額は約94億円(契約前・確定前を含む)に達する。民間投資と公的支援の双方を組み合わせ、資金面の厚みを増している格好だ。
今回の増資は、金融機関や事業会社、ベンチャーキャピタルが混在する投資家構成が特徴だ。とりわけ事業会社(CVC含む)の比率を約4割とした点は、資金供給だけでなく、将来的な事業連携を見据えた関係性構築の意図がにじむ。引受先には株式会社JALエンジニアリングなど運航・整備の現場を担う企業も含まれ、宇宙輸送機の開発と航空・宇宙分野での運用ノウハウの連携に関心が集まる。
一方で、資金の出し手を多様化させる動きは宇宙領域にとどまらない。国内外では大型の資金調達が相次いでおり、宇宙関連では米Sierra SpaceがシリーズCで約870億円を調達した例がある。国内でも総額50.5億円を調達した企業のケースなどがあり、複数の投資家・事業会社を巻き込む大型ラウンドの形成が広がっている。
事業会社出資4割の構図
ISCは将来的な事業連携を見据えた関係性を重視しており、事業会社との具体的な連携内容は順次公表していく考えだ。今回調達した資金は、宇宙往還を可能とする輸送システムの実現に向けた開発を継続するための経営基盤の強化に充て、再使用型人工衛星打上げロケット「ASCA 1」の開発や、有人宇宙輸送システム「ASCA 2」の概念検討を進める。
最終目標としては、完全再使用型の単段式宇宙往還機「ASCA 3」による高頻度宇宙輸送を2040年代に実現する方針だ。事業会社(CVC含む)が参画する投資家構成とすることで、資金調達と将来的な協業の接点を同時に設計し、技術開発から運用、サービス展開までを見据えたエコシステム構築を狙う。
第三者割当増資の引受先が複数にわたることで、資本関係は投資家ごとに独立した形となる。ISCは、事業会社(CVC含む)を含む引受先との役割分担や取り組みの範囲を、今後の発表を通じて順次示していく見通しだ。今回の約32億円の増資により、再使用型ロケット「ASCA 1」を軸とした宇宙輸送システムの開発体制を強化し、宇宙往還ビジネスの具体化を急ぐ。
