株式会社イノシア(東京都港区)は、施設基準管理システム「施設基準@INX」で、令和8年度診療報酬改定に関する告示・通知のマスタ化とシステム実装を完了した。導入病院では、改定情報の全読み込みや自院への影響箇所の洗い出しが不要となり、医療現場の業務負担を大幅に軽減する狙いがある。
「施設基準@INX」は、厚生労働省が告示・通知を公開し次第、イノシアが全文をテキスト化して情報を整理し、システムにマスタ実装する仕組みだ。病院側で最も労力がかかるとされる読み込みや整理をイノシアが担う点を特徴とし、令和8年度改定でも公開から速やかな実装につなげた。診療報酬改定対応の業務を支援する取り組みの一つとして位置づけられる。
導入100施設超の運用
イノシアは、令和8年度診療報酬改定の最新情報をシステムに実装し、導入病院が改定対応に使う機能も明らかにした。自院の届出状況と改定内容を照らし合わせて自院に影響のある箇所を自動生成する「星取表(自院への影響箇所)」、施設基準の要件ごとに新旧を対比して変更箇所をハイライトする「新旧対比表」、改定対応をプロジェクトとして扱いプリセットタスクから登録できるタスク管理機能を用意する。病院の改定対応では、公開される膨大な情報から自院に関係のある項目を正確に読み解く必要があり、変更点の把握に加えて、人員配置や資格要件のチェックなどを限られた期間内で進めることが求められてきた。
改定対応の負担が大きいとされるなか、診療報酬改定は2年ごとに実施され、令和8年度(2026年)改定は2026年3月31日の告示が予定されている。施設基準に関連する項目は約5000項目とされ、病院の平均対応工数は1回あたり200時間とする統計もある。人員の手当てや資料の読み込みが集中しやすい領域で、病院事務職員の人手不足率が28%という調査結果もあり、現場の逼迫した実情が浮き彫りになっている。
イノシアは2023年7月に設立し、「施設基準@INX」を2024年3月に開始した。施設基準の届出・管理をデジタル化し、厚生労働省の告示・通知に基づく基準遵守を支援する設計を掲げてきた。診療報酬改定への対応では、令和6年度改定で告示・通知のマスタ化とシステム実装を実施し、星取表の自動生成や新旧対比表の機能を提供した経緯がある。令和7年度改定でも公開後速やかなマスタ実装を進め、導入病院向けに改定対応のタスク管理機能を強化してきた。2025年時点で全国100施設以上が導入している。
医療分野では、診療報酬改定に伴う実務を支えるデータベース化や差分表示、影響分析の支援が各社で進んでいる。診療報酬改定情報をデータベース化し病院の影響分析を支援する取り組みや、改定対応モジュールの搭載、新旧対比機能の追加といった動きもみられる。厚生労働省が2024年に示した「医療DX推進計画」では、改定情報の自動化を義務化方向で進める方針や、2026年までに全病院のDX対応を目標とする施策が盛り込まれており、制度運用と現場実務の接続を巡るツール整備が一段と重要性を増している。医療DX市場規模は2025年推計で1.2兆円とされ、施設基準管理のDX領域が年成長率15%とする調査もある。
告示公開後の分担設計
イノシアは、告示・通知の公開後に全文のテキスト化を行い、情報を整理したうえでマスタ実装まで担う形をとっている。導入病院は、システム上で自院への影響箇所の把握や変更点の確認、改定対応タスクの登録と進捗の見える化を進める運用を想定している。一方で、告示・通知の公開タイミングに合わせてテキスト化と整理を行う運用であることにも触れている。
令和8年度改定の実装により、導入病院側は星取表の自動生成や新旧対比表、タスク管理機能を通じて、改定内容と届出状況の突合、変更点の確認、対応作業の管理を同一のシステム内で進めることができる。運用面では、イノシア側のテキスト化とマスタ実装、病院側の届出状況の管理とタスクの進行が役割分担として整理され、告示・通知の公開後に情報整理が進むプロセスを前提とした業務フローが構築される。
今回の動きは、令和8年度診療報酬改定に関する告示・通知のマスタ化とシステム実装を完了し、導入病院での読み込み・洗い出し作業を減らす手段を提示した取り組みとなる。法人向けの運用では、改定対応をプロジェクトとして扱う運用設計に沿い、届出状況の更新とタスク登録の粒度をどの部署が担うかが注目点となる。イノシアは「施設基準@INX」を通じて病院の施設基準管理の効率化と、安全で持続可能な病院経営の実現を支援する方針だ。
