株式会社IHI(東京都江東区)は2月10日、2026年3月期第3四半期連結決算を発表した。売上収益は前年同期比1.8%減の1兆1,293億円、営業利益は0.9%減の1,025億円となった。親会社株主に帰属する四半期利益は850億円で、前年同期比10.7%増となった。受注高は1兆3,648億円と12.4%増加した。
航空・宇宙・防衛事業の好調が続く一方、事業譲渡による減収が影響した。同社は、防衛需要拡大と民間航空エンジンのアフターマーケット事業の拡大を背景に収益構造を強化している。今後は成長分野への資源シフトを進め、持続的な成長基盤の確立を図る方針だ。
売上収益1兆1,293億円、営業利益はほぼ横ばい
同社の2026年3月期第3四半期における連結売上収益は前年同期比1.8%減の1兆1,293億円で、営業利益は同0.9%減の1,025億円だった。
一方、税引前四半期利益は1,189億円(同3.8%増)、親会社株主に帰属する四半期利益は850億円(同10.7%増)と利益面は底堅く推移した。基本的1株当たり四半期利益は80.21円となり、前年同期の72.48円を上回った。
受注高は前年同期比12.4%増の1兆3,648億円と過去水準を上回った。特に防衛関連案件や航空エンジン整備に関する受注が拡大し、全社の業績を支えた。
営業キャッシュ・フローは732億円の支出超過だったが、金融調達により資金流動性を確保している。
航空・防衛分野が牽引、構造改革と再編を同時進行
報告セグメント別では、航空・宇宙・防衛事業が売上収益4,238億円、営業利益706億円となり、民間航空エンジンの整備需要増が寄与した。資源・エネルギー・環境事業は採算悪化の影響を受けたが、防衛や車両過給機事業の増収で補った。
社会基盤事業では橋梁・水門事業を手がける株式会社IHIインフラシステムと株式会社IHIインフラ建設を統合し、生産能力と人材活用の効率化を進めた。
また、産業システム・汎用機械事業の一部であった運搬機械事業、株式会社IHIアグリテックの芝草・芝生管理機器事業、株式会社IHI汎用ボイラなどの子会社の譲渡を実施した。
さらに社会基盤事業の一部として、株式会社IHI建材工業、新潟トランシス株式会社の全株式を譲渡するなど、非中核事業の整理を進めている。これによりボラティリティを抑えた安定的成長体制の強化を図っている。
資産総額2兆4,543億円、自己資本比率23%に上昇
第3四半期末の総資産は前期末比2,139億円増の2兆4,543億円、負債は1兆8,630億円(同1,313億円増)となった。資本は5,913億円と826億円増加し、親会社所有者持分比率は21.5%から23.0%に上昇した。資本増加の主因は四半期利益850億円の計上によるものだ。
一方、有利子負債残高はリース負債を含めて6,383億円と1,236億円増加した。
現金および現金同等物は317億円減の1,050億円。営業資産の増加や税支払いが響いた。
投資活動によるキャッシュ・フローは477億円の支出超過で、固定資産取得や設備投資を進めた。財務活動によるキャッシュ・フローは814億円の収入超過で、コマーシャルペーパー発行によって資金繰りを安定化させている。
中期計画の最終年度へ 航空・宇宙とクリーンエネルギーを重点領域に
IHIは2023年度からの3カ年中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づき、最終年度となる2025年度に成長事業を見極めた資源配分を進めている。航空エンジンやロケット分野を成長事業と位置づけるとともに、クリーンエネルギーを育成事業として展開する方針だ。
航空分野では、世界的な旅客機需要の回復に対応するため、鶴ヶ島工場を中心に整備能力増強とDXを活用した生産性向上を図っている。
加えて、防衛関連や宇宙事業では衛星データ提供に向けた衛星コンステレーション構築を推進中である。
クリーンエネルギー分野では、燃料アンモニアの製造から流通、利活用に至るバリューチェーン構築を進め、相生工場ではアンモニアガスタービンの実用化に向けた試験設備を稼働させている。成長性の低い事業の構造改革を進めつつ、成長分野への人材シフトを加速している。
配当と株式分割、安定的な株主還元を維持
同社は2025年10月1日に普通株式1株を7株に分割した。
これを反映した2026年3月期の期末配当予想は10円とし、分割前換算では70円となる。通期では140円相当を予定しており、前年と同水準の株主還元を継続する。期末発行済株式数は約10億8,275万株となった。
株主資本の増強を通じて財務体質を改善する方針であり、有利子負債の増加に対しても十分な流動性を確保している。
次期計画では、利益成長と株主還元のバランスを重視した資本政策を維持する見通しだ。
今後の焦点は防衛・宇宙需要の取り込みと事業再編の完了
米国の政策や為替変動への不確実性は続くが、航空・宇宙・防衛分野の需要増が業績を下支えしている。
航空エンジン整備や衛星関連事業の強化、防衛装備の製造体制拡充が引き続き重要なテーマとなる。これと並行して、非中核事業の売却や統合などの再編が収益構造改革の焦点となる見込みだ。
中期経営計画の集大成として、企業体質の強化と成長分野への再投資をどこまで進められるかが、次の事業年度における注目点となる。
IHIは引き続き、持続性を重視した事業ポートフォリオの再構築を進める方針である。