不動産業界向けのDX支援サービスを展開する株式会社いえらぶGROUP(東京都新宿区)は、2016年から2025年の賃貸借契約更新データ46.5万件をもとに実施した「賃料改定トレンド調査分析」の結果を発表した。分析によると、2025年度は賃料増額事例が過去最高を記録し、首都圏での賃料インフレ転嫁が明確化しているという。首都圏ではインフレ転嫁の定着が進む一方で、地方では波及が限定的だった。
同社は自社の不動産業務支援システム「いえらぶCLOUD」に蓄積された10年分の契約更新データを活用し、市場の構造変化を可視化した。物価や人件費、資材費の高騰により賃貸市場にも価格見直しが広がるなか、2019年まで緩やかだった賃上げの動きがコロナ禍で停滞し、2023年度以降に経済再開とともに急速な賃料上昇に転じた経緯を分析した。いえらぶGROUPにとって今回の分析は、業務支援システム事業の実績を活かした市場動向の可視化の一環と位置づけられている。
全国46.5万件を分析
調査では、2015〜2019年にわたる緩やかな上昇期、2020〜2022年の停滞期、そして2023年以降の急上昇期の3段階で傾向を示した。2025年度には賃料増額が全体の12.2%に達し、過去最高水準となった。エリア別では東京都が約6割、首都圏全体で約9割を占め、全国的にも首都圏一極集中の構造が浮き彫りになった。
物件種別別では「事業用」と「マンション」が増額を牽引する一方、「駐車場」は据え置き傾向にあった。東京では多くの契約に対して段階的に小幅な値上げを行い、地方は相場とかい離の大きい物件のみを重点的に是正する戦略が多いことが示された。
データ分析を支える体制
いえらぶGROUPは、不動産業界向けSaaS型システム「いえらぶCLOUD」や「いえらぶBB」を全国4万4000社超の事業者に提供しており、これを通じて賃貸借更新データの蓄積を続けてきた。同システムは2024年度の富士キメラ総研調査で賃貸管理システム市場の占有率1位を獲得している。今回の調査分析も、こうした蓄積データをもとに実施された。分析では、地域別の活動度をヒートマップで可視化し、首都圏のインフレ転嫁定着と地方の変化の遅れを示した。
一方で、賃料改定の今後の具体的な価格設定や再調査時期など、次段階の計画については今回の発表で明示されていない。
いえらぶGROUPは生成AIを用いたデータ分析活用にも取り組む姿勢を示しており、エリア特性や物件種別ごとの賃料動向をサービス開発に反映させる方向を打ち出している。ただし、今回の調査は過去10年の客観的データ解析にとどまり、将来予測を目的としたものではない。地方主要都市では波及の度合いが限定的であるため、事業者間の対応方針の違いが焦点となりそうだ。
