出光興産株式会社(東京都千代田区)は、徳島県小松島市の水田において、太陽の動きに合わせて太陽光パネル角度を自動制御する可動式両面営農型太陽光発電所「出光徳島営農型太陽光発電所」の稼働を開始した。架台の高さを3.8メートルに設け、農機具の使用に支障がない構造とした。発電事業で得た収益の一部を地代として営農者に還元し、農業経営の安定と地域脱炭素の両面を支援する形だ。
同発電所では、株式会社クリーンエナジージャパン(神奈川県横浜市)が開発した可動式架台と両面受光型パネルの組み合わせを採用する。太陽の動きや水稲の生育期・非生育期に応じてパネルを自動制御し、農業と発電を両立する構成だ。出光興産は、農地上部空間の有効活用により、大規模発電所新設地の減少という課題にも対応する方針を示している。
設備容量1,998kWで稼働
出光徳島営農型太陽光発電所の農地面積は2.8ヘクタール(280メートル×100メートル)、栽培作物は水稲、設備容量は1,998キロワット。パネル角度を生育期は日射を作物に優先し、非生育期は発電を重視する運用に切り替え、通年で安定的な発電を維持する仕組みを採る。国内では可動式架台と両面受光パネルを組み合わせた営農型発電として最大級とされる(2026年2月時点、出光興産調べ)。
同社は発電収益の一部を地代として営農者へ還元する制度を導入。高齢化や後継者不足が深刻化する農業現場において、安定収入の確保と農業継続を支援する枠組みを整えている。将来的にはパネルによる適度な遮光がもたらす温度緩和効果を活用し、水稲の高温障害への有効性を検証する予定だ。
クリーンエナジージャパンが技術協力
可動式架台と制御システムは、クリーンエナジージャパンが開発した技術を採り入れた。太陽の移動に追随して角度を自動的に調整し、裏面受光を加えた効率的発電を行う仕組みである。構造上は農機の通行を可能にする作業空間を確保しつつ、安全性にも配慮した設計をとる。出光興産と同社の協働は継続的な技術運用を前提としたもので、営農現場の作業性と発電性能の両立を支える技術的基盤を担う。
第7次エネルギー基本計画が示す2040年度の再生可能エネルギー比率4~5割の実現には、太陽光発電の設置面積が15~20万ヘクタール必要と見積もられている。今回の発電所建設により、農地活用による国内再エネ導入拡大に向けた実証的な枠組みが整った形となる。
出光興産が国内農地活用を拡大方針
出光興産は、国内約440万ヘクタールの農地(うち水田約240万ヘクタール)を太陽光発電の潜在空間として分析。農地の約5%を活用すれば、日本国内の既存太陽光発電設備容量の約2倍に相当する発電設備が可能と試算している。これを踏まえ、同社は営農者や農業法人、自治体・企業などとの協業スキーム構築を進め、普及・拡大を探索する計画を公表している。
背景には、太陽光発電の主力電源化を掲げる政府方針と、発電用地確保の難化がある。農業と発電の両立は、国産エネルギー確保によるエネルギー安全保障強化にも寄与する構図だ。出光興産は、これを地域共生型モデルの一環と位置付けている。
今回稼働した可動式両面営農型太陽光発電所は、発電と農業の並行運営を目的とした複合事業であり、同社の再生可能エネルギー事業の中でも地元生産者と連携する実装事例となる。