教育事業などを展開するヒューマンアカデミー株式会社(東京都新宿区)が運営するプロeスポーツチーム「Human Academy CREST GAMING」に、テイ・エス テック株式会社が開発中のAIを活用した次世代ゲーミングチェア用システムが導入される。選手のコンディション面の支援につなげる狙いで、スポンサー契約に基づき、選手の実使用から得る知見を開発側へ還元する。
両社は、テイ・エス テックが開発中のゲーミングチェア用システム「疲労度推定AIシート」をCREST GAMINGで試験的に活用する。選手に同システムを導入し、プレイ時のコンディションや環境面を多角的にバックアップすることを目指す。ヒューマンアカデミーは、eスポーツを「教育・職業」として確立させる取り組みの一環として位置づけ、テイ・エス テックはプロ選手からのフィードバックを製品開発に反映させる考えだ。
スポンサー契約で試験導入
導入は2026年2月から始まる。CREST GAMING側はチームとして「疲労度推定AIシート」を試験的に活用し、ヒューマンアカデミーは選手からのフィードバックを共有してテイ・エス テックの開発に協力する。競技時のコンディションや環境面をバックアップし、選手のプレイ時の状態を踏まえた支援につなげる。
CREST GAMINGは、総合学園ヒューマンアカデミー e-Sportsカレッジの学生に選手が直接指導する育成システムを持つ。チームはVALORANT部門「CREST GAMING Zst」など複数部門を保有し、学生向けイベント「CREST GAMING CUP 2025」などを展開してきた。今回の協業では、選手の競技環境を支えるデバイスであるゲーミングチェアを対象とし、現場の運用から得られる声を開発へつなぐ。
テイ・エス テックは四輪車・二輪車のシートや内装品を開発から生産まで一貫して手がけ、世界13カ国に拠点を展開する。人間工学を生かしたシートづくりを強みとし、安全性や快適性を高める技術開発を進めてきた。近年はAIを活用したシート開発など次世代車を見据えた技術革新にも注力しており、車載領域で培った要素技術をゲーミングチェア向けシステムに応用する。
同社は自動車用シート開発で培った乗員センシング技術を基に、疲労度・集中力をAIアルゴリズムで推定・可視化する技術を開発している。2025年8月には、この技術を搭載したゲーミングチェアの実証実験を実施し、AIアルゴリズムの正確性と競技パフォーマンス向上を確認したとしている。座っているだけで疲労度を可視化する「疲労度推定AIシート」の有用性をeスポーツで検証しており、今回のCREST GAMINGでの試験活用は、実証段階の取り組みをプロチームの運用へ広げる動きとなる。
一方、ヒューマンアカデミーを含むヒューマングループは2025年4月に創業40周年を迎える。教育事業を中核に多角展開しており、ヒューマンアカデミーはSTEAM教育やリスキリング支援に加え、学習プラットフォームの開発にも取り組む。eスポーツ領域では、プロチーム運営と教育カリキュラムを組み合わせた人材育成の仕組みを整え、CREST GAMINGのトップチーム選手が学生を直接指導する体制を敷いている。
背景には、eスポーツ市場で選手の長時間プレイに伴う健康課題が顕在化し、コンディション管理を支援する手段への関心が高まっている状況がある。疲労度推定AIシートは、プレイ時の状態を推定・可視化することで選手のコンディション管理に役立てる構想で、姿勢や負荷への配慮を織り込んだ競技環境づくりを後押しすることが期待される。育成面では、現役プロ講師が関与する指導体制のもと、VALORANTを用いたイベントや実践機会の拡充が進み、競技現場のデータや体感を教育や製品開発に取り込む動きが広がっている。
フィードバック共有が軸
運用面では、スポンサー契約に基づき、ヒューマンアカデミーは選手からのフィードバックを共有し、テイ・エス テックは得られた知見をもとにシステム改良を進める。プロ選手の知見と製造業の技術を組み合わせ、実使用に基づく改善サイクルを組み込む枠組みとなる。
ヒューマンアカデミーは、ゲーミングチェアを通じて長時間プレイに伴う姿勢負担や身体への影響など、eスポーツ選手が抱える健康面の課題に取り組む方針だ。フィードバック共有の仕組みや導入対象選手の範囲を運用設計に反映させることで、競技環境の改善と教育プログラムの高度化を同時に進める構えだ。今回の協業は、ヒューマンアカデミーが掲げる「教育・職業」としてのeスポーツ確立に向け、競技環境を支えるデバイスから支援範囲を広げる動きと位置づけられる。
