豊和工業株式会社(愛知県清須市)は2月12日、2026年3月期第3四半期(2025年4月~12月)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比1.5%増の168億円と横ばいだったが、営業利益は前期比21.6%減の8億円に減少した。工作機械関連事業での減損損失計上が響いた。経常利益は9億7千万円、純利益は5億4千9百万円となり、通期予想に対する進捗率は120%を上回った。
主力の防衛関連事業の増収が全社業績を下支えする一方、工作機械関連事業では構造改革費用がかさみ、利益を押し下げた。会社は「低成長・不採算事業の構造改革」と「中核事業の生産性強化」を掲げた中期経営計画(2026~2028年)に基づき、事業ポートフォリオの見直しを進めている。
売上高168億円、営業利益8億円に減少
豊和工業の第3四半期累計業績は、売上高168億700万円(前年同期比1.5%増)、営業利益8億1千万円(同21.6%減)、経常利益9億7千万円(同18.8%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益5億4千9百万円(同35.4%減)となった。前年同期の営業利益10億3千万円から減少し、営業減益が鮮明となった。
一方、通期経常利益予想(8億円)に対しては第3四半期末時点で進捗率121.3%に達している。前年同期比では減益ながら、経常段階では通期見通しをすでに上回る水準にあり、今後の動向が注目される。
防衛関連が増収、建材黒字転換
事業別では、防衛関連を含む火器事業が大幅な増収となった。米国向けスポーツライフルの出荷数は減少したが、防衛省向け装備品の納入増に加え、防衛生産基盤強化法に基づく特定取組契約の売上計上が寄与した。
こうした動きは、政府が掲げる防衛装備品サプライチェーン強化策の流れと重なるもので、防衛産業の安定供給体制の下支えにあたるものとみられる。
建材事業では、一般サッシの販売減を防音サッシの伸びで補い、採算改善により黒字転換を果たした。特装車両事業は路面清掃車の販売台数減少により減収となり、営業赤字に転じた。
工作機械関連事業では、中国からの撤退を視野に構造改革を進めるなか、中国向け在庫の棚卸資産評価損や減損損失を計上し、セグメント利益を圧迫した。
自己資本比率59.7%に上昇、財務体質は堅調
財政状態は比較的安定している。総資産は341億円と前年末から7千万円増加。純資産は203億円と約16億円増え、自己資本比率は59.7%と4.7ポイント上昇した。主因は利益剰余金の積み増しとその他有価証券評価差額金の増加による。
短期借入金の減少により総負債は135億円と前年末比15億円減少した。
キャッシュ面では、現金・預金が38億円と約10億円増。手元資金の厚みを保ちながら、構造改革や製品開発への余力を確保している。
構造改革が利益圧迫も、防衛関連で収益維持
同社は2026年3月期から3年間の中期経営計画を始動させ、「収益構造の抜本的改革」を掲げている。工作機械や空油圧機器分野での採算見直し、中国事業撤退の準備などを同時に進める一方、防衛事業の受注拡大による安定収益確保を図る構えだ。
構造改革に伴う一時的な費用が今期利益を圧迫しているが、防衛省関連案件の契約増が緩衝材となった。防衛関連の取引拡大は、防衛装備移転三原則の改定および生産基盤強化法の成立により、国内装備品製造体制を支援する政策が進んでいる背景があるためだ。
愛知県清須市を拠点に、同社は長年にわたり防衛装備品や産業機械の国産化を担ってきた経緯を持つ。
連結子会社と国内体制の動向
報告セグメントのうち、「工作機械関連」「火器」「特装車両」「建材」「不動産賃貸」に、国内販売子会社と運送子会社を加えた7区分で構成している。第3四半期のセグメント利益は、火器事業が9億2千3百万円と前期比75%増となる一方、工作機械関連は8千2百万円の赤字に転じた。建材事業は2億8千4百万円の黒字を確保し、不動産賃貸事業も安定推移した。
また、従業員向けの株式給付信託(J-ESOP)制度を維持運用しており、第3四半期末の信託残高株数は17万株。経営と従業員の一体感を高める施策として継続している。
会社設立と事業基盤の歴史
豊和工業は1907年(明治40年)に織機メーカーとして創業し、昭和期以降は豊田系技術を受け継ぐ形で工作機械と防衛装備に軸足を移した。現在は工作機械、空油圧機器、防衛関連装備品を3本柱とする。愛知県清須市に本社を構え、従業員は約1,000名。東証スタンダード市場(証券コード6203)に上場している。
同社は繊維機械から防衛装備まで技術転用を繰り返しながら、100年以上の企業史を有する老舗製造業であり、愛知県内の長寿メーカー群の一角を占める。技術基盤を源流に、国内外の安全保障環境変化への対応力を強みとしてきた。
外部環境の変化と課題
外部環境では、世界的な地政学リスクの高まりにより、防衛関連需要が拡大する一方、工作機械分野では中国景気の減速や円安コスト負担などが懸念材料となっている。防衛装備移転三原則の改正と、防衛生産基盤強化法施行以降、国内装備品メーカーにはサプライチェーンの強靭化と適正利潤確保が求められており、豊和工業にとっても制度対応とコスト管理の両立が課題となる。
また、民需の工作機械市場では需要の二極化が進み、省人化・自動化支援製品への移行が課題として残る。名古屋圏では人材確保競争も厳しさを増しており、効率化投資と技能継承を同時に進める必要がある。
防衛基盤政策との接点
防衛産業基盤を取り巻く政策環境が変化するなか、防衛装備庁のガイドラインでは大企業から中小に至るまで、部品供給網の維持と情報保全強化が求められている。倉園行政書士事務所による2025年時点の分析でも、防衛生産の「国防インフラ化」が進み、装備品メーカーに財務基盤と継続性を備える経営姿勢が期待されているとされる。
豊和工業が計上した防衛生産基盤強化法に基づく特定取組契約は、こうした国家的支援スキームの一環とみられ、国内装備品安定供給の体制づくりに資するものだ。防衛装備移転三原則のもとでの取引適正化も進みつつあり、装備輸出審査やサプライチェーン管理の透明性向上が企業経営に直結する局面を迎えている。
市場と専門家の見方
経常減益ながら通期進捗は順調である点について、証券市場では「3Qまでに経常利益が通期計画を上回り、保守的な計画修正余地が生じた」との見方もある。
松井証券のマーケットデータでは、過去5年平均進捗率75.5%に対し、今期は121.3%と高水準にあり、通期での上振れ可能性を指摘する声もある。
一方で、営業利益率の低下基調が続いており、構造改革が来期以降どこまで効果を発揮するかが焦点とされる。防衛需要が当面の収益安定要因となる反面、非防衛セグメントのコスト構造整理が引き続き課題だとの評価が多い。
今後の見通しと注目点
会社は通期見通しを据え置いており、売上高232億円(前期比6.6%減)、営業利益6億7千万円(同46.5%減)、純利益2億4千万円(同68.0%減)を見込む。
配当予想は前期同様1株当たり20円。防衛関連の伸びに対し、民需分野の回復時期が業績の鍵を握る。
今後は、防衛装備基盤強化政策の定着と、海外需要減退局面における工作機械再編の進み方が注目される。国内設備投資や防衛関連供給網の広がりの中で、ものづくりメーカーの再構築プロセスを象徴する動きとなりそうだ。
