林テレンプ株式会社(名古屋市中区)は、2026年5月9〜10日に東京ビッグサイトで開かれるアウトドアイベント「FIELD STYLE TOKYO 2026」に初出展する。アウトドア志向のファミリーやペットとの移動を想定したカローラクロスのコンセプトカーを中心に展示し、一般来場者との対話を通じて車内外の快適性や使い勝手に関する声を集める。
展示の軸に据えるカローラクロスの構想車は、「Weekend Coast」をテーマに、海辺で過ごす週末の心地よさを車内空間で表現した。素材やレイアウト、色・柄の組み合わせで清涼感と上質感の両立を図る。従来はBtoB領域を主に展開してきたが、一般ユーザーのリアルな声を直接聞き、今後の製品開発や顧客提案に生かす取り組みと位置づける。
年1000万台超の供給
林テレンプの主力製品であるフロアカーペットは、年間1,000万台以上の生産能力を持つ。グループ会社を含めた大規模な供給で培った素材選定や設計のノウハウを、イベント展示での空間提案にも応用する考えだ。展示車両は「移動」だけでなく「滞在」まで含めたカーライフの提案を掲げ、ラゲッジスペースに気軽なアウトドアを想定したアイテムを搭載する。来場者とのコミュニケーションを通じて得た気づきを、製品提案や新たな価値づくりの参考とする。
同社は1910年創業で、自動車内装部品を中心に独立系サプライヤーとして国内大手自動車メーカー各社と取引してきた。量産部品の供給能力を背景に、素材・加工・音振対策など周辺技術との接点を広げ、イベント会場での反応を開発や供給体制の再構築に結びつける構想をにじませる。
外部環境では、アウトドア関連消費の裾野が広がっている。経済産業省の調査では、2025年の日本のアウトドア市場規模は約1.5兆円で、前年比増を記録した。ファミリー層に加え、ペット同伴の外出需要も伸びており、車室内の快適性や使い勝手への関心が高まりやすい分野といえる。車種面でもSUV需要が続き、アウトドア志向のコンセプト訴求は自動車メーカーの展示手法として定着してきた。
対話重視のブース運営
運営面では、一般ユーザーにブランドを知ってもらうと同時に、他出展社や異業種ブランドとの関係構築も目指す。将来的なコラボレーションや新たな事業機会につながる「横のつながり」を築く場としてFIELD STYLEを活用する方針だ。
会場ではWebアンケートを実施し、回答者にノベルティを配布する形で双方向コミュニケーションを重視したブース運営を行う。展示の中心に据える構想車のターゲットは、アウトドア志向のヤングファミリーやペットと外出を楽しむ来場者を想定する。
こうした一般来場者との対話を前面に出した場づくりは、完成車メーカーの展示だけでなく、部品・システム供給側にも広がりつつある。車内空間の過ごし方をテーマにした提案は、車両の性能訴求とは異なる評価軸となり、素材感や触感、収納や滞在の導線といった論点が来場者の言葉として集まりやすい。林テレンプはBtoB中心の事業運営から一歩踏み出し、一般ユーザーの声を直接拾う設計を採る。
同社は海外企業との連携も進めてきた。2021年にはドイツの防音材大手アドラーペルツァー社と資本提携を結び、2026年にはインドのNDRオート・コンポーネンツ社との合弁会社設立を通じた事業開始を予定する。内装領域は協業を通じた開発や供給体制の組み替えが進みやすい分野であり、今回のイベント出展で得るユーザー起点の示唆は、既存顧客への提案や連携先を含む開発テーマの具体化につながる可能性がある。
アウトドア文脈の内装競争
FIELD STYLE TOKYOへの出展は、内装サプライヤーが「車室内の過ごし方」を切り口に一般来場者へ接近する流れを映す動きといえる。アウトドア市場の拡大に伴い、車両の利用場面は通勤や買い物に加え、週末の余暇やペット同伴の移動へと広がっている。アウトドア市場が約1.5兆円規模に達したことは、関連需要が一過性のブームではなく、継続的な市場として定着しつつあることを示す材料だ。
完成車メーカー側では、アウトドア志向のコンセプト提案が相次いできた。トヨタ自動車はアウトドアコンセプトカーの出展事例を重ね、カローラクロスをベースとした提案も行っている。こうした文脈では、車室内の素材・触感・レイアウトは走行性能とは異なる差別化要素になりやすい。林テレンプが掲げる「Weekend Coast」というテーマは、色・柄や素材選びを通じて清涼感と上質感の両立を狙う設計思想を示しており、一般来場者からの反応を集めやすい題材となる。
競合の動きでは、内装・電装系の企業がアウトドア関連イベントへ出展し、車内キャンプやペット同伴を想定した空間提案を行う例が増えている。2024年のFIELD STYLE TOKYOでもSUV内装のアウトドアカスタムを展示し、海辺テーマや来場者アンケートを組み合わせた事例が報じられた。イベント会場での反応収集は、製品そのものの評価にとどまらず、異業種連携の糸口にもなり得る。林テレンプが「横のつながり」を掲げるのは、単独展示にとどまらず、周辺ブランドとの共同企画を視野に入れる姿勢といえる。
内装部品市場はグローバルで拡大局面にあり、アジアでの供給体制構築や合弁設立の動きが目立つ。林テレンプはインドでの合弁会社設立や欧州企業との資本提携を通じてサプライチェーンと開発体制を広げており、最終需要に近い情報をどう取得するかが焦点になっている。一般来場者との対話を通じて生活者の言葉を設計・提案へ戻す回路を増やす試みは、従来の自動車メーカー経由の要望把握を補完する取り組みと位置づけられる。
一方で、BtoB中心のサプライヤーが一般イベントで得る情報は、短期の受注に直結するよりも、提案の言語化や顧客への説明材料の拡充に向かいやすい。林テレンプが会場で重視するのは、車内外の快適性、使い勝手、素材感といった定性的要素の吸い上げであり、量産部品の供給能力という定量的な強みと生活者視点の定性情報を接続する狙いがある。主催者発表ベースで来場者が平均5万人規模とされるイベント環境は、ユーザー像の幅を確保しやすい一方、回答のばらつきも生じやすく、どの論点を次の提案に落とし込むかが運営上の課題となる。
林テレンプの今回の出展は、構想車の展示を通じて、一般来場者との対話と異業種連携の両輪で事業機会の拡張を図る動きといえる。
