ハーモニック・ドライブ・システムズは、2026年3月期第3四半期累計の連結業績で増収・営業黒字となった。日本での工場稼働率上昇による原価率改善に加え、産業用ロボット向けと半導体製造装置向け需要の持ち直しが主因となった。地域別では日本が回復した一方、中国や北米では伸び悩みも出た。
同社は波動歯車装置「ハーモニックドライブ」を中核とする精密減速機メーカーで、産業用ロボットや半導体製造装置、医療機器など高精度な動きが求められる分野に供給している。減速装置に加えてメカトロニクス製品も手掛け、顧客のニーズに合わせて開発・設計段階から仕様を擦り合わせる受注生産型モデルを採る。小型・軽量・高精度を強みとし、用途に応じた製品供給を進めている。
売上高421.8億円に
2026年3月期第3四半期累計の連結業績は、売上高が421.8億円(前年同期比4.5%増)、営業利益が11.9億円(前年同期は3.3億円の赤字)だった。製品別では減速装置売上高が327.2億円と全体をけん引し、メカトロニクス製品は94.7億円(前年同期比3.6%減)となった。地域別では日本が大きく回復し、中国は需要低迷の影響を受け、北米はアミューズメント機器向けの減少やシステム更新費用の負担が重荷となった。欧州は売上総利益率の改善で黒字転換した。
2026年3月期通期の会社計画は、売上高570.0億円(前期比2.4%増)、営業利益15.0億円(前期比大幅増)を見込む。グループで国内外に生産・販売拠点を持ち、精密制御分野でグローバルに事業を展開しており、足元の回復局面では日本の需要が業績を押し上げている。
ハーモニック・ドライブ・システムズは1970年設立で、主要生産拠点として長野県安曇野市に工場を構える。2025年3月期の連結売上高は556億45百万円、連結従業員数は1,384人。こうした生産体制と人員規模を背景に、産業用ロボットや半導体製造装置など精密制御が求められる用途に向けた供給を続けてきた。
業績の内訳では、減速装置が売上高の柱である一方、メカトロニクス製品は前年同期比で減少した。用途別・地域別の需要変動が同時に生じる局面では、構成比の高い減速装置の回復が収益の振れを左右しやすい。日本での工場稼働率上昇が原価率改善につながったことは、固定費負担の吸収度合いが収益に反映されやすい事業構造を示している。
外部環境では、産業用ロボット分野で在庫調整が一巡しつつあり、需要が徐々に正常化しているとの見方が強まっている。半導体製造装置向けも底堅く、装置需要の戻りが精密減速機の出荷に連動しやすい。加えて、協働ロボットや手術支援ロボットなど、小型・高精度が求められる新用途が広がっており、同社が強みとする小型・軽量・高精度と、用途側の要求が近い関係にある。
一方で、地域別では日本が大きく回復したのに対し、中国は需要低迷の影響を受け、北米はアミューズメント機器向けの減少やシステム更新費用の負担が重荷となった。需要の戻り方が用途・地域でそろわない状況は、受注生産型モデルにおける案件の組み替えや稼働計画の調整に影響し得る。欧州は売上総利益率の改善で黒字転換しており、地域ごとの採算構造の違いも浮かぶ。
受注生産型で役割分担
同社は顧客ごとの仕様に合わせた多品種変量生産を掲げ、1台から数万台までの特注品を受注生産する。開発・設計段階から仕様を擦り合わせ、求められる性能や用途に応じた製品を供給する体制をとる。単なる部品供給にとどまらず、減速装置に加えてメカトロニクス製品も手掛ける点が特徴だ。
こうした環境下では、顧客側の設備投資計画や装置更新サイクルの差が、受注のタイミングや生産負荷の偏りとして表れやすい。同社は量産汎用品よりも、高性能が求められる用途で採用を積み上げるモデルを志向している。中期経営計画では、既存事業の収益力回復に加え、協働ロボット、人型ロボット、医療、モビリティ、航空宇宙といった新市場の開拓を進める方針を掲げ、設備投資も生産能力増強だけでなく効率化投資やIT投資を重視する方針だ。この中期計画で売上高営業利益率15%以上、ROE10%以上を目標としている。
市場環境については、産業用ロボット分野で在庫調整が一巡しつつあり需要が徐々に正常化し、半導体製造装置向けも底堅さを保っている。協働ロボットや手術支援ロボットなど、小型・高精度が求められる新用途の広がりも指摘されており、需要の戻りと用途拡張の両面が同社の受注生産型モデルと結び付いている。
足元の業績回復に工場稼働率の上昇が寄与した点は、受注の増減が製造側の稼働度に直結しやすいことを示す。顧客ごとに仕様を擦り合わせる形をとる以上、案件ごとの設計・製造の手戻りを抑える運用が、納期設計や生産計画の組み立て方に影響を与える。取引管理の面では、要求性能と供給範囲の合意形成が重要な論点となる。今回の業績は、産業用ロボット向けと半導体製造装置向け需要の持ち直しを受け、日本での工場稼働率上昇による原価率改善が収益に反映した局面といえる。
精密減速機市場の回復局面
精密減速機は、産業用ロボットの関節部や半導体製造装置などで、位置決め精度や繰り返し精度が求められる領域に組み込まれる。精密減速機市場は産業用ロボット・半導体製造装置の需要回復局面にあり、在庫調整の一巡で正常化が進行しているとの見方が広がっている。ハーモニック・ドライブ・システムズの業績に表れた「需要の持ち直し」や「工場稼働率上昇」は、こうした需要回復局面と整合的だ。
競合動向の文脈では、同社は精密制御用減速機のリーディングカンパニーとされ、小型精密減速装置でグローバルトップシェアを保有するとされる。需要の回復局面で供給側の稼働度が上がる局面では、標準品の大量供給よりも、用途別に精度要求が異なる案件での供給実績が積み上がりやすい。メカトロニクス製品も手掛ける点は、部品単体ではなく周辺の制御・駆動を含む範囲で案件化する余地を生むが、第3四半期累計ではメカトロニクス製品が前年同期比で減少しており、需要の戻り方が製品群で一致していないことも示されている。
半導体製造装置向け需要は底堅く継続するとみられ、ロボット分野では人型AIロボットが中長期の成長テーマと位置付けられている。同社が中期経営計画で人型ロボットを新市場の一つに挙げるのは、需要の源泉が産業用ロボットと半導体製造装置に偏り過ぎない収益構造を志向しているためだ。背景には、小型・高精度が求められる用途が協働ロボットや手術支援ロボットへ広がっているという市場側の変化がある。
地域別の濃淡は、需要回復局面でも供給網の最適化や販売面の重点配分に影響し得る。日本が大きく回復し、中国や北米で伸び悩みが出たという構図は、装置投資のタイミング差に加え、用途構成の違いが同時に現れた可能性を示す。欧州で売上総利益率の改善が黒字転換につながった点は、製品ミックスや採算管理が地域別で異なることをうかがわせる。
今回の連結業績は、需要の持ち直しと国内工場の稼働率上昇が同時に進むなかで、原価率改善が収益に結び付いた事例となった。焦点は、通期計画で見込む売上高570.0億円、営業利益15.0億円の達成に向け、日本の回復がどの程度継続し、中国・北米の伸び悩みがどのように推移するかという需給の濃淡に移っている。
