株式会社博展(東京都中央区)は、体験デザインの開発組織「Experiential Design Lab(EXD-Lab)」を「HAKUTEN|Studioコー(ハクテン・スタジオコー)」へ改称する。公式な対応として名称変更を実施し、組織の対外的な認知を切り替える。活動の接点を広げる狙いがあり、協業やプロジェクト形成の動きにも波及しそうだ。
博展は、2022年に発足した体験デザインの開発組織EXD-Labの名称を「HAKUTEN|Studioコー」に変更する。博展が運営主体となり、地域と教育を中心に進めてきた体験デザインの取り組みを、クリエイティブコレクティブという位置づけで対外発信し直すためだ。この名称変更は、社会実装型のプロジェクトが増えてきた流れを踏まえ、活動やつながりを広げる判断として整理できる。
EXD-LabをStudioコーへ
新名称の「Studioコー」は、「正解のない時代に、正解のない問いを持って。ーじゃあ、コーしよう。」というメッセージと合わせて打ち出した。
名称に含めた「コー」には、3つの指針として「耕」「工」「交」を据える。リアルな観察で課題や問いを掘り起こして思考の土壌を耕す「耕」。手を動かし、リアルなプロトタイプとして形にする「工」。体験を通じて新たな関係を紡ぎ直す「交」を掲げる。
博展は体験デザインを、単なる演出ではなく社会課題に正面から取り組む手段と位置づける。土を耕すように社会や営みを観察し、対話と実践を重ねて関係性を再構築する姿勢を「じゃあコーしてみよう」と表現し、今回の改称に結びつけた。
今後も地域と教育を中心に、持続可能性を踏まえたつながりを模索し、「これからの体験をデザイン」していく方針だ。
3年半の実装案件が増加
改称の背景として博展が示したのは、組織発足後に約3年半にわたり「これからの体験とは何か」という問いを起点に、地域と教育を中心に大きな社会課題に対する体験デザインへ取り組んできた点だ。
社会実装型のプロジェクトが増えるなかで、活動とつながりをさらに広げるため、開発組織の呼称からクリエイティブコレクティブへと見え方を切り替える。
名称変更はブランディング上の表現変更にとどまらず、社外の共創パートナーや導入先といった関係者に対して「観察」「プロトタイピング」「関係性の再編集」を中核に置く姿勢を明確にする意味合いを持つ。
博展は、対外的な活動の受け皿を「Studioコー」として示し、プロジェクト横断の連携を取りやすくする狙いもにじませる。
教育と地域で成果を提示
Studioコー(旧EXD-Lab)の実績として、教育領域では「Kumoo(クモー)」を挙げた。かえつ有明中・高等学校をクライアントに、学校教育現場で進む「主体性や探求心などを育む教育」への転換を踏まえた体験型コミュニケーションツールとして設計した。もともとはパーテーション制作の相談が起点となり、現場課題を踏まえてより適した形を考案した経緯がある。10分の1サイズの模型でアイデアを試し、その後に実物スケールで空間を再構築するプロセスを通じ、思考から実践への流れを自然に育む設計だという。
素材には周辺の地場産業から出た木端(こっぱ)を再利用し、環境配慮とともに地域産業への関心を高めるきっかけにもした。学校以外にも企業の人材育成での活用が進み、社員教育用キットとしてワークショップとともに導入が広がっている。プロジェクトは国内外のデザイン賞を獲得した。
教育領域の別事例として「Ping - Pong Block Project」も示した。共創パートナーは新渡戸文化学園と株式会社タマスで、卓球ラケットの製造工程で生まれる「余材」を「Ping-Pon Block」という素材として捉え直し、生徒とともに半年以上かけて観察や実験を重ね、体験を生み出した。廃棄されることが多かった端材を対象に、素材の個性に目を向け、「これで何ができるだろう?」という好奇心から発想を広げることを出発点に据えた点が特徴となる。
新木場で3日間3,000人超
地域領域では、2024年10月に株式会社エイチ・アイ・エスと共同で熊本市内の周遊促進に関する実験的施策「旅とスナック」を実施した。
熊本市では世界最大手の半導体メーカーの進出によりビジネス客や訪日外国人の往来が増加する一方、市内の観光資源や街の魅力を十分に伝えきれておらず、地域活性化との接続が課題だとした。フィールドワークを通じて、熊本市中央区に多い「スナック」のママやマスター、常連客が地域の魅力をよく知る存在であることが分かったという。スナックを「まちの案内所」に見立て、地元の人との交流を通じてリアルな熊本の魅力に触れられる観光スタイルを提案し、コミュニケーションキットをデザイン作成した。熊本市の観光における体験拡張の可能性を探った取り組みと位置づける。
もう一つの事例が「SHINKIBA CREATIVE HUB」だ。Studioコーと新木場の榎戸材木店が中心となり、新木場の企業や工場とともに立ち上げた地域回遊型プロジェクトで、共創パートナーには新木場の各社・団体が16以上参加した。木材産業の集積地として発展してきた新木場が、需要構造の変化や担い手不足で産業の転換期にあるという問題意識のもと、街に積み重なった素材や技術、人々の営みに着目し、街の資源をひらく試みを行った。
2025年12月の初開催では新木場・辰巳エリアの企業や工場など8会場とJR高架下に展開し、3日間で延べ3,000人以上が来場した。Studioコーは構想から実装までを横断し、各企業との対話を通じた全体の企画構成、展示ディレクション、会場構成、周遊体験の設計までを一貫して担った。
今回の改称は、博展が3年半にわたり蓄積してきた教育・地域の実装案件を基盤に、共創相手との関係構築やプロジェクト設計の枠組みを「HAKUTEN|Studioコー」の名で再提示する動きといえる。
