GMO グローバルサイン・ホールディングス株式会社(東京都渋谷区)が開発・提供する電子契約サービス「電子印鑑 GMO サイン」が、総務省の「情報アクセシビリティ好事例 2025」に選定された。キーボード操作やスクリーンリーダー対応などを通じ、障がいの有無や利用環境にかかわらず、当事者が自立して電子契約を完結できる設計が評価された。行政手続きや契約締結のオンライン化が進むなか、契約業務の利用可能性を底上げする取り組みとして注目される。
GMO グローバルサイン・HDによると、GMO サインは契約内容の確認から署名・押印までをユーザー自身で完結できるようにする設計を掲げ、色や文字サイズの調整機能などを備える。クラウド型の電子契約サービスとしての機能提供にとどまらず、利用環境の差に左右されにくい契約手段の整備を進める動きとなる。
上場企業80%が利用
GMO サインは2015年に提供を開始し、2025年に10周年を迎えた。上場企業の約8割が利用しており、2026年1月末時点の利用企業数は3,196社に達した。電子契約の導入が進むなかで、特定の利用者にとって操作が難しい設計が残れば、契約行為そのものが業務上のボトルネックになり得る。今回の選定は、利用企業数の拡大局面で、画面操作や文書閲覧のしやすさをサービス品質の一部として扱う姿勢を対外的に示す出来事となった。
総務省は、年齢や障がいの有無にかかわらずデジタル機器やサービスを円滑に利用できる「情報アクセシビリティ」の確保に積極的に取り組む企業や、優れた製品・サービスを選定し公表している。デジタル社会の進展に伴い情報の利用格差の解消が急務となるなか、多様なユーザーの自立を支援する取り組みを周知し、社会全体でのアクセシビリティ向上を促す狙いがある。2024年4月の改正障害者差別解消法の施行により、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されたことから、B2Bの業務システムでも、単にオンライン化を進めるだけではなく、利用者の操作環境に応じた設計への対応が課題となっている。
GMO グローバルサイン・HDは、雇用、住居、教育、金融、行政サービスなど社会活動に関わる契約行為を重要なプロセスと位置づけ、特定の利用者にとって利用が困難な場合は社会参加の機会を制限することにつながり得るとの認識を示す。電子契約が普及する一方で、画面操作や文書閲覧のアクセシビリティが十分でない場合に新たな障壁となる可能性を課題として挙げている。電子認証・電子署名技術を提供し、日本発の最上位認証局「GlobalSign」を運営するなど、認証基盤と日常的な契約フローの双方を扱う企業グループが、アクセシビリティを設計・運用の要件として前面に出したことで、システム調達側の要求水準にも影響を及ぼしそうだ。
外部検査と改善を継続
評価対象となった取り組みでは、開発者のスキルや知識にかかわらずアクセシブルな画面作成を可能にする「デザインシステム」と「コンポーネントライブラリ」を運用している点が挙げられた。アクセシビリティ向上への持続的な体制構築を目的に、部署横断の専門チームを立ち上げ、自社向けガイドラインの作成や社内勉強会、アクセシブルな文書作成方法の啓発活動などの仕組み整備も進める。アクセシビリティ対応を個別案件の改修にとどめず、画面部品や設計ルールを共通化して運用するアプローチは、機能追加やUI更新が続くクラウドサービスにおいて、改修のたびに品質がばらつく事態を抑える狙いがある。
外部連携では、第三者評価機関と組み、専門検査員による目視検査と継続的な改善を実施している。2026年には障がいのあるユーザーによるユーザビリティテストの実施も計画しており、客観的な評価体制の構築と改善の枠組みを並行して進める。サービス提供側が自社内の開発プロセス整備に加えて外部機関の検査を組み合わせる形は、アクセシビリティを「実装したかどうか」ではなく「維持できるかどうか」という観点に重点を移すものだ。利用企業側にとっても、導入後の画面更新や機能拡張が続くことを踏まえ、継続的な検査と改善の枠組みがどの範囲まで機能するかが、運用設計の焦点となる。
GMO サインの運用面では、第三者評価機関との連携の深度や、2026年に予定する当事者テストの結果と反映プロセスが、導入・利用時の説明や体制把握における注目点となる。GMO グローバルサイン・HDは、国際規格への準拠や当事者参画型の検証・改善を重ねる方針を掲げる。電子契約は、取引先・委託先・顧客など複数の関係者が同じ画面にアクセスして手続きを進める業務であり、アクセシビリティの論点は単一企業の社内効率にとどまりにくい。このため、契約フローを構成する機能群のうち、署名者・確認者それぞれがどのように操作する設計かを、利用側が自社の契約実務に当てはめて整理する必要がある。
電子契約に新要件
電子契約市場では、今回の選定により競争軸に「操作のしやすさ」が加わる可能性がある。総務省が情報アクセシビリティの確保に積極的に取り組む企業や優れた製品・サービスを選定し公表するなかで、B2B領域の業務サービスが対象となったことは、公共調達や自治体・外郭団体のシステム調達における要件定義にも波及し得る。行政手続きや契約締結のオンライン化が進む局面では、本人確認や電子署名といった信頼性の要素に加え、手続きを遂行できる利用者の範囲をどこまで広げられるかが、サービス評価の重要な指標になりつつある。
改正障害者差別解消法により合理的配慮の提供が民間事業者にも義務化されたことで、契約締結をオンラインへ移行した企業ほど、取引先や顧客を含む外部利用者の操作性が実務課題として浮上しやすくなった。電子契約サービスは、導入企業が自社の従業員だけで使うものではなく、相手方の署名者が実際の操作主体になる場面が多い。GMO サインが掲げる「当事者が自立して電子契約を完結できる設計」は、契約手段を提供する側が、利用者側の「操作できること」まで含めて設計要件に取り込む方向性を示している。
競争環境の観点では、電子契約は法令対応やセキュリティ認証、他システム連携などが比較軸になりやすいが、アクセシビリティは機能の有無にとどまらず、日々の改修を含めた運用プロセスの成熟度が問われる領域だ。GMO サインが「デザインシステム」と「コンポーネントライブラリ」を運用し、部署横断の専門チームでガイドライン整備や啓発活動まで進める体制は、アクセシビリティを単発の改修で終えない設計思想を示す。外部の第三者評価機関による目視検査と改善を継続する枠組みも、継続的な品質担保を志向する構成と言える。
GMO グローバルサイン・HDは電子認証・電子署名技術を提供し、「GlobalSign」を運営するなど、認証基盤を含む領域を手がける。電子契約は、本人確認や電子署名の信頼性と、ユーザーが実際に操作して契約を締結できる体験が組み合わさって成立する業務インフラだ。アクセシビリティ対応が進むほど、契約のオンライン化を推進する企業にとっては、相手方の操作環境の違いに起因する手戻りを減らす効果が期待される一方、サービス提供側には検査や改善を継続する運用負荷が乗る。今回の選定は、そうした運用を組み込んだサービス設計が行政の評価枠組みの中で可視化された事例として受け止められそうだ。
