フューチャー株式会社(証券コード:4722)の主要事業会社であるフューチャーアーキテクト株式会社(東京都品川区)は、AIを活用したOCRプラットフォーム「Future OCR」の給与支払報告書向けサービスを刷新し提供を開始した。報告書は住民税計算の基礎となる重要書類であり、依然として人手によるデータ入力が多く残る領域だ。同社は業務負荷が集中する自治体や業務委託先の効率化を狙う。
今回の刷新では、新様式への対応や読み取り精度の向上に加え、入力確認工程の簡素化機能を新たに備えた。開発・提供はSGシステム株式会社(京都市)と共同で行い、フューチャーアーキテクトが技術面を担いながら販売代理も務める。両社は2010年代から業務電子化支援を進めており、今回の改良版はその継続的な改善の一環と位置づけられる。
読み取り精度99%台へ、非定型帳票も自動化
今回の新バージョンでは、令和8年様式の新レイアウトに合わせた対応を完了し、給報に含まれる「個人別明細書」や「総括表」など非定型帳票をより高精度に処理できるようになった。
自治体や事業者間で書式が異なるため従来はOCR化が難しかったが、10万以上のテストパターンを経て精度は平均99.2%に到達した。読み取りエラーは前年から約20%減少し、特に個人明細書の解析性能が向上している。
また仕分けエンジンを刷新し、従来は判別困難だった「仕切り紙」の自動判定に対応した。徴収区分(特別徴収・普通徴収)の分類もAIで自動化できるようになり、帳票全体の処理精度は前年に比べて大幅に改善した。総括表のエンジンも再設計され、読み取りエラーを従来比で半減させるなど自治体の後続処理負担の軽減が見込まれる。
全国で320万枚を超える読み取り実績
フューチャーアーキテクトとSGシステムは、2021年に同サービスの共同提供を始めて以来、継続的なバージョンアップを重ねてきた。
2024年度の読み取り実績は全国で320万枚を突破し、導入先はBPO事業者にとどまらず、地方自治体でも採用が拡大している。地方税の電子申告システム「eLTAX」における給与支払報告書の電子利用率は約69.7%にとどまっており、依然として紙帳票を扱う職員の入力負荷が課題となっている。フューチャーアーキテクトは、こうした未電子化領域での自動化を重点分野と位置づける。
給報は全国約6,000万人の給与所得者を対象に、各企業が自治体へ報告する法定書類であり、毎年1月末に提出期限を迎える。提出形式は自治体ごとに異なり、報告時期に合わせてデータ入力が一時的に集中する。
そのため、繁忙期に外部委託を行う自治体も多く、AI-OCRによる変換効率向上が労働投入量削減の鍵とされてきた。今回の新バージョンは、こうしたピーク処理を見据えた設計となっている。
使いやすさ重視の画面刷新、Windows対応も
新バージョンでは操作画面も全面的に改修された。利用者の要望が多かった「結果確認画面」を標準搭載し、読み取りに自信のない項目のみを抽出して確認できる仕様とした。これにより確認作業時間を大幅に短縮できるといい、操作手順自体も簡素化された。
また従来のLinux環境に加えてWindowsでも動作可能になり、自治体や事業者のシステム環境に合わせた導入が容易になった。
フューチャーアーキテクトはSGシステムとともに、公共手続きの電子化を支える基盤技術の改良を続けている。
SGシステムは佐川急便を中核とするSGホールディングスグループでIT統括事業を担い、地方公共団体や金融、物流業界の業務支援システムを展開してきた。両社の連携は、民間と行政のデジタル化を横断的に支える枠組みとして定着しつつある。
電子申告普及と人手不足対応の両面狙う
給与支払報告書をめぐっては、国税庁や総務省が各自治体に電子申告の拡大を求めている。
大阪市や那覇市をはじめとする自治体が、2025年度提出分から新様式を導入するなど、現場の業務標準化の動きも進む。背景には、人手不足が慢性化する行政窓口の入力業務を軽減する狙いがある。自治体では短期間に数十万件規模の書類を処理するため、AI-OCRの信頼性と速度は業務効率を左右する要素となっている。
一方で、帳票フォーマットの多様性や紙の保管義務が完全に解消されておらず、AI-OCRだけではカバーしきれない入力パターンも残る。こうしたリスクは処理コストや運用安全性に影響を与える可能性があるため、自治体や委託事業者が実運用上の調整を進める必要がある。業界関係者の間では、精度向上とともに運用ルールの標準化も課題として浮き彫りになっている。
フューチャーアーキテクトは、自治体や事業者の省力化支援を通じてAI-OCRの技術精度を高め、公共手続きの効率化に貢献するとしている。
今後もSGシステムと共同で地方税関連処理を中心に改良を進める計画で、非定型帳票の解析や仕分け精度のさらなる向上に注力する考えだ。今回の刷新は公共領域のDX推進の流れの中で、業務標準化の一段階として位置づけられる。