富士ソフト株式会社(神奈川県横浜市)は4月27日、2026年度からの新体制を発表した。9つの事業部制を3つのビジネスユニット(BU)に再編し、「CxO」制も導入する。2028年度以降に調整後営業利益で500億円以上を目指す方針だ。組織構造の見直しにより、ミッションクリティカルな社会・産業システムを支える体制を整え、成長の再現性を高める狙いがある。
新体制では、製造・産業市場向けの「組込/制御BU」、業務システム領域の「ソリューションBU」、公共領域向けの「社会インフラBU」の3BUに再編し、取締役 専務執行役員 Co-COO(共同最高執行責任者)の大迫館行氏が統括する。同時に、CEOやCFOなどの専門責任者がBUを横断して支援するCxO制を敷く。富士ソフトは「縦(BU)で稼ぎ、横(CxO)で鍛える」構図を明確にし、既存事業の強化と新たな価値創出を同時に進める位置づけとする。
9事業本部を3BU再編
BU制への移行は、従来の9つの事業本部で事業責任が分散し、非効率性が生じていた点を課題として捉えた対応だ。製造・産業市場、業務システム、公共領域の3つに再編することで、事業の柱を整理し、意思決定と実行の速度を高める構えである。3BUはそれぞれ「組込/制御BU」「ソリューションBU」「社会インフラBU」とし、BU単位での収益責任を明確にする。
この再編は、同社が掲げる「AI・IT・OT(制御系技術)の統合」による高信頼性領域への対応とも連動する。モビリティーなどの分野で約2500人の技術者を要する点や、組み込み/制御系システムの実績、設計から実装・運用までを担う業務システム分野のカバレッジを強みとして打ち出し、BU単位での重点領域を明確化していく。
CxO制で横断支援
CxO制では、CEO、Co-COO、CFO(最高財務責任者)、CRO(最高収益責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)、CHRO(最高人的資源責任者)、CAO(総務/法務/内部統制最高責任者)、CTO(最高技術責任者)を設置する。各領域の専門責任者が3BUを組織横断で支援し、変革と統制の両立を図る。BUで事業を推進しつつ、CxOで経営機能を鍛える設計により、変化に強い組織を目指す。
室岡光浩氏(代表取締役 社長執行役員 CEO)は会見で、縦と横を組み合わせたクロスマトリックス組織により「既存ビジネスを強化し、新たな価値を創出し、質的な成長へ転換する」姿を示した。BUの収益責任と、CxOによる専門性・統制の担保を同時に進める点が、今回の体制変更の中核となる。
2028年度以降500億円へ
富士ソフトは、2028年度以降に調整後営業利益で500億円以上の達成を目指す。室岡氏は、直近業績の約2倍の水準だと説明した。
時間軸としては、2026年度を「戦略と組織の基盤作り」、2027年度を「成長エンジンの確立」、2028年度以降をビジョンの実現と位置付け、段階的に体制整備と成長施策を接続させる考えを示した。
成長戦略の方向性では、AIのみでは困難だという変革局面で求められる「AIとITとOTの統合」や「フィジカルAIとIT/OT」を掲げる。加えて、オファリングビジネスへの移行を通じ、再現性ある価値提供を勝ち筋と位置付けた。
注力領域は自動車や産業・ハイテクノロジー、公共、金融、小売りなどとし、今後は領域ごとの成長戦略を発表するとした。
KKR傘下で非公開化
今回の新体制は、資本構成の転換を経た上での経営改革に当たる。富士ソフトは2025年2月に米投資ファンドKKRが公開買い付けで買収し、同5月の上場廃止に伴い非公開企業となった。会見では、2025年7月にCEOに就任した室岡氏(NEC出身)に加え、大迫氏(取締役 専務執行役員 Co-COO)、2026年1月に常務執行役員 Co-COO兼CFOに就任した小野健二氏(日本IBM出身)が説明に当たった。
室岡氏は、NEC時代にグローバルビジネスをけん引した経験を踏まえ、新たな資本のもとでグローバルビジネス変革の経験を発揮し、さらなる成長を目指す考えを示した。あわせて、組み込み/制御の実績、業務システムのカバレッジ、人材育成力を強みに挙げ、スマート工場やフィジカルAI分野の知見・ノウハウを含め、ミッションクリティカルな社会・産業システムを支える方向性を明確にした。
理念浸透と対話を重視
新体制に向けた取り組みは、(1)経営と現場のコミュニケーション、(2)企業理念の再構築と浸透、(3)変革と成長を実行する組織体制、(4)長期的な企業価値をもたらす成長戦略――の4つを柱に据える。(1)では、社内サイトで室岡氏の思いを積極的に発信し、全社会合(タウンホールミーティング)や現場社員との定期的なラウンドテーブル、役員討議の頻繁な開催などを実行している。(2)では創業以来の理念を尊重しつつ、「社会の発展とお客さまの価値創出に寄り添う、かけがえのない(オンリーワンの)存在であり続ける」との存在意義を定義し、未来志向での顧客との協働や誠実な技術プロフェッショナルとしての追求、新たな価値創造への挑戦を行動指針に定めた。
背景には、事業責任の分散による非効率性を課題として認識していたことがある。BU再編で事業推進の単位を整理し、CxO制で横断機能を強めることで、統制と変革の両立を狙う。
取引先や発注側の実務では、BUの再編に伴う窓口や意思決定ラインの変化、CxO横断支援の下での提案・運用体制の切り分けが、運用上の注目点となる。
