富士ソフト株式会社は3月27日、2026年度から実施している新体制を明らかにした。2025年に東京証券取引所での上場を廃止し、経営陣を刷新した後の取り組みとなる。新体制はビジネスユニット(BU)制と専門知識を持つCxO制を柱に据える。グループの意思決定を早め、再現性ある成長の運用へつなげる狙いだ。
新体制では、富士ソフトの事業運営を3つのBUに集約し、CxOが領域横断で責任を持つ枠組みに改める。代表取締役 社長執行役員 CEOの室岡光浩氏が2025年7月に就任して以降、環境変化を踏まえた組織変革を進めてきた。ITとOTにAIを統合し、ビジネスモデルを変革する必要があるとの問題意識が、新体制の導入理由となった。位置づけとしては、既存の強みを土台にしつつ、BUとCxOの連動で成長の再現性を高める経営運用の再設計である。
9事業本部を3BU統合
組織構造は、従来の9つの事業本部を3つのBUへ統合する形に改めた。従前は「インダストリー事業本部」「ASI(Automotive System Integration)事業本部」「エリア事業本部」「公共システム事業本部」「金融事業本部」「システムインテグレーション事業本部」「ソリューション事業本部」「ネットソリューション事業本部」「プロダクト事業本部」を置き、各事業本部ごとに営業本部を持つ体制だったという。
新設したBUは「組込/制御ビジネスユニット」「ソリューションビジネスユニット」「社会インフラビジネスユニット」の3つだ。
BUはCo-COOが統括し、営業はCROのもとで全BU共通の営業本部を設ける。マーケティングもCMOのもとで組織を置き、専門知識を深化しながら共創を進める枠組みとした。
再現性重視のクロスマトリクス
取締役 専務執行役 Co-COO(Business Operations)でソリューションビジネスユニット長の大迫館行氏は、BU制の目的として「業界動向・専門知識の深掘り」「リソース配置の最適化と研究推進」「BU横断でのシナジーの最適化」の3点を挙げた。
組込/制御BUは組込開発の強みを軸に自動車やロボットを含めて束ね、ソリューションBUは業務系開発で培った実績を組み合わせたビジネスを志向する。社会インフラBUは官公庁や電力などを担当する。3つのBUでデータから装置、アプリケーションまでを一気通貫で作り、意思決定につなげる体制を目指すという。
常務執行役員 Co-COO CFOの小野健二氏は、運用コンセプトとして「縦で稼ぎ、横で鍛え、中央で回す」を掲げた。狙いは変化に強い組織で、(1)既存事業の高度化、(2)新たな価値の共創、(3)量から質への転換の3点を回す設計とした。
財務、営業、マーケティング、人材、技術といった横串領域はCxOがBUやグループを横断して責任を持つ。小野氏は、Co-COOの役割を、CxOの動きを経営全体として連動させ、現場を縛るのではなく選択肢を整理して見通しをよくし、意思決定を早めるための「全体最適」に置いたと説明している。
CxOが財務・営業など担当
CxOの機能は、領域別の責任を明確にしてBU運営を支える形に整理した。
CFOが財務戦略やグループマネジメントで投資判断や資本技術を担い、CROが営業横断のキーアカウントやパイプラインマネジメントを担う。CMOは市場やブランディング、CHROは人材戦略やエンゲージメント、CTOは戦略とエンジニア育成を担当する。BUの縦軸と、CxOの横軸を同時に走らせる設計により、個別最適と全体最適のかみ合わせを事前に作る構えだ。
営業体制の再編も焦点となる。従来は事業本部ごとに営業本部を持っていたが、BU共通の営業を行う体制に改めた。富士ソフトは、営業効率の向上と新しいビジネスの可能性を探る考えを示している。
2028年に利益500億円へ
成長の時間軸は、2026年を戦略と組織の基盤作り、2027年を成長エンジンの確立、2028年以降をVisionの実現と位置づける。
室岡社長は、富士ソフト Gen.2として第2世代をスタートさせ、3つのBUが成長に責任を持ち、CxOが変革と規律をきかせることで、グループ全体で再現性ある成長を実現すると述べた。数値目標としては2028年に調整後営業利益500億円以上を掲げ、現在の営業利益240億円から倍増を目指す方針も示した。
背景には、人材需給の読み替えもある。AIの台頭で米国では人材縮小を進める企業が出るなど、従来のように「IT人材不足」とはいえない状況も起きているという。
富士ソフトでは過去8年間で新卒800人を採用してきた一方、今年度は半数に絞り込んだ。室岡社長は、取引先からの要請が高度人材の提供へと変わってきているとし、採用や人材教育のあり方を社内で議論している最中だと話した。
また、富士ソフトは強みとしてAIに加え、従来からのITとOTを統合して提供する方針を示している。AI技術だけでは完結しない領域では、ITとOTを組み合わせて提供できることが強みになり得るとの説明で、技術資産のオファリング化によりレバレッジと再現性を高める考えも示した。今回の体制変更は、上場廃止と経営陣刷新を経た後、事業単位の責任と横断機能を並行させて運用する枠組みへ移る転換点となる。
