富士製薬工業株式会社(東京都千代田区)は、緊急避妊薬「レソエルⓇ72」(要指導医薬品)の製造販売承認を取得した。販売はアリナミン製薬株式会社(東京都千代田区)が担い、3月9日に開始する。医療用医薬品から一般用への転用が本格化する中、要指導医薬品として薬剤師による指導下での販売が可能となる仕組みが整った。
今回の動きは、2016年から進められてきた緊急避妊薬のスイッチOTC化に関する検討を踏まえたもので、2025年に厚生労働省薬事審議会が了承した方針に基づく措置だ。同社がこれまで医療用として供給してきた「レボノルゲストレル錠1.5mg『F』」を一般用医薬品化したもので、製剤の内容は医療用と同一である。
国内シェア約90%を持つ既存製剤をOTC化
富士製薬工業の「レボノルゲストレル錠1.5mg『F』」は国内で約90%のシェアを持つ緊急避妊薬である。医療用で広く処方されてきた実績をもとに、「レソエルⓇ72」は同成分・同規格のまま要指導医薬品として提供される。販売は全国の要指導医薬品を扱う薬局で行われ、研修を修了した薬剤師による情報提供と服薬指導が販売時の条件とされている。
薬剤師による対面指導を販売の前提に
本剤の販売は、緊急避妊薬の取り扱い研修を修了した薬剤師が行うことが義務づけられており、購入者は薬局で服用方法などの説明を受けた上で購入・服用する形をとる。販売形態は一般用医薬品のうちでも最もリスク管理が求められる要指導医薬品区分に該当し、オンライン販売は認められていない。数量は1錠単位での提供で、再販予定は明示されていない。
スイッチOTC化の流れの中で、「特定要指導医薬品」と位置づけられる緊急避妊薬には、薬剤師の対面による指導・管理のもと適正使用を確保する仕組みが求められており、今回の製造販売承認と販売開始はその制度設計に則った対応となる。
行政手続と販売体制、法改正との整合性
2025年施行の改正薬機法では、要指導医薬品のオンライン服薬指導が条件付きで認められる一方、薬剤師の面前指導が必要な医薬品を「特定要指導医薬品」として区分する制度が導入された。緊急避妊薬はこの指定対象に含まれ、購入時の対面指導が引き続き求められている。製造販売承認を受けた富士製薬工業は、これらの制度変更に即した供給体制を構築しており、販売元であるアリナミン製薬が情報提供体制の運用を担う形となる。
医薬品区分と販売方法を明示した体制構築により、薬剤師主導での適正使用が確保される見込みで、本剤はスイッチOTC医薬品としての運用が制度上の要件を満たしている。
女性医療事業の一環として供給・運用を継続
富士製薬工業は、月経困難症や不妊症、更年期障害など女性医療分野を重点事業として展開しており、今回の「レソエルⓇ72」導入もその一環に位置する。同社はアリナミン製薬との協働により、製造・販売の分業体制を整え、要指導医薬品としての販売運用を進める予定だ。販売に際しては、研修修了薬剤師が常駐する薬局での対面指導を前提としており、一般消費者への直接販売は想定されていない。
販売制度下での注目点と事業上の位置取り
「レソエルⓇ72」の販売開始により、国内で初めて緊急避妊薬がOTCルートで入手可能となる。対面指導を要する要指導医薬品区分のもとで供給されるため、薬局現場での情報提供および販売記録管理が重要な運用条件となる。制度面では、特定要指導医薬品の販売管理と薬局による記録保存義務が課されており、販売体制を保持する薬局には研修修了薬剤師の配置が求められる。
富士製薬工業にとっては、医療用製品で培った供給網を活かしつつ、一般用への転用を進める初の主要案件であり、女性医療事業の継続的な展開の一端をなす。本件の製造販売承認取得は、社会的な議論を経た制度環境下で実施されたものであり、同社の女性医療領域の事業展開における整合的な動きといえる。
