株式会社Finatextホールディングス(東京都千代田区)は、金融機関のAI変革を支援する「AIイネーブルメント」を本格化する。グループ全体の行動指針に新たに「AI+(エーアイ・プラス)」を加え、AIを前提とした仕組みづくりを通じて、生成AI時代の業務運用を金融インフラの中核から支える体制を進める方針を示した。
同社は、証券・保険・貸金分野で自らの金融事業を運営しながら、金融機関向けにクラウドネイティブな基幹システム(System of Record)を提供してきた。これまでの生成AI支援やデータ基盤開発の経験を踏まえ、AIを付け加える「+AI」ではなく、AIを前提にビジネス設計を行う「AI+」を掲げた。AIを軸にした次世代型金融システム構築を、グループ横断的な取り組みとして進める位置づけとなる。
AI+チーム新設など5分野で運用体制構築
AI関連施策として、技術運用を担うCTO直下に「AI+チーム」を設置する。AIツールの全社展開と並行してModel Context Protocol(MCP)のセキュア環境を構築する。また、証券・保険・クレジットの各プラットフォームでAIエージェント機能を順次導入し、金融システムのAIネイティブ化を進める。さらに、AI特化コンサルティング事業とAI BPOサービスを拡大し、AI導入を含む実務の支援体制を広げる。
国産MCPゲートウェイサービスの提供も予定しており、同社が培ってきたセキュリティ技術を基に厳格なガバナンス環境を整える。これらの事業領域は単発施策ではなく、グループが保有するライセンス事業(証券・保険・貸金)の運用知見を軸に設計されている。
AI活用支援で金融実務を再構成
Finatextグループは2013年に設立され、「金融を“サービス”として再発明する」を掲げるフィンテック企業群として活動する。既にパートナー企業と共同で金融サービス開発を進めており、生成AI活用支援を2023年から開始していた。AI変革が進む中、契約書や応対記録など非構造化データの処理が業務効率を左右するため、同社はAIを基盤とした再設計の必要性を強調している。
背景には、硬直化した基幹システムやデータのサイロ化といった金融機関共通の課題がある。グループではこれらへの対応として、クラウドネイティブ基盤とAI技術を結びつける運用を進める方針を示している。
今回の取り組みでは、全社的にAIツールを展開し、既存の基幹システムの刷新とAIエージェント導入を同時に図る構成を採る。「AI+チーム」が横断的に開発運用を支え、MCPを標準搭載する構成とするなど、セキュリティと連携性の両立を前提にしている。
MCPゲートウェイサービスの開発では、外部システム連携と安全管理の境界設定が焦点となる。Finatextグループが担う範囲は、AI活用を含めたクラウド金融インフラ全般であり、取引先金融機関には接続準備やデータ統制の確認が求められる形になる。
本件は、従来の「+AI」方針からAIネイティブDXへの転換を明示する動きとして位置づけられる。同社は今後、「AI+」の理念のもと、攻めのAI運用と安全基盤整備を並行して進める体制をとることを示した。