株式会社ファンケルは、2035年に向けた成長戦略として長期経営構想「ファンケル・ビジョン2035(FV2035)」を策定し、2026年より始動する。2035年に目指す姿や理念体系、基本戦略、財務目標などを一体で示した。キリングループによるTOB完了から1年が経過した局面で、グループ内での役割を踏まえた長期の方針を打ち出した。
FV2035では、2035年に「お客様にとって、美と健康の『不』を解消してくれる最も信頼できるブランド」となり、「最も成長しているブランドマーケティングカンパニー」となる姿を掲げた。創業理念「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」をPurpose(存在意義)に明確に位置付け、Values(価値観)には従来の経営理念「もっと何かできるはず」を据える。Purposeの補助として「新しい市場と価値を創造し、社会と共振する企業文化を築き、真の豊かさを追求します。」を新たに加え、グループ全従業員の共通指針となる理念体系を再構築した。ファンケルはキリンヘルスサイエンス事業の中核企業としての役割が大きくなっている点も挙げ、理念と事業運営を同じ時間軸で整理する狙いを示した。
2035年目標2000億円
財務目標として、2035年の売上収益を2,000億円とした。参考として、2025年度の売上収益は1,126億円を示した。非財務面では「ファンケルグループが与える社会的インパクトを拡大」を掲げ、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針として「CSVパーパス」を策定した。CSVパーパスでは「健やかな暮らし」「誰もが輝く社会」「豊かな地球環境」の3つを重点テーマに設定し、各テーマで目標を定めて達成に向けて取り組む方針を示した。
FV2035の背景として、キリングループによるTOB完了から1年が経過し、キリンヘルスサイエンス事業の中核企業としての役割が大きくなっている点を挙げた。加えて、情報の高度化や生活者の価値観の多様化を踏まえ、製品力の向上に加え、ブランドとしての存在意義をより明確にし価値を高めていく必要性を示した。健康・美容領域では、情報の流通量が増える中でブランドへの信頼が選択基準の一つとして扱われる場面が増えたとの指摘もあり、ファンケルが掲げた「最も信頼できるブランド」という表現は、こうした環境変化と並行する文脈に置かれている。
ファンケルは創業以来、無添加化粧品や健康食品などで新たな市場と価値を創造してきたとし、顧客の声に真摯に向き合い本質的な解決策を提示する姿勢を根底に置くとした。こうしたDNAを未来志向で進化させていく決意のもと、10年という時間軸で企業のあるべき姿を描いた構想としてFV2035を策定した経緯を示した。通販・健康食品企業では、海外展開やチャネル戦略を強化する動きが広がりつつあり、ファンケルが国内チャネル戦略と海外戦略を枠組みに含めた点は、業界内での取り組みと同じ方向性にある。
7戦略で基盤強化加速
FV2035は、経営基盤の強化を加速させる方針を示し、4つの基盤機能として人財、IT・デジタル、R&D、SCMの強化を掲げた。これらを土台に、ブランド優位性を構築するためのマーケティング戦略を実行し、その実行力を高める国内チャネル戦略および海外戦略を推進する枠組みを示した。これら一連の取り組みを体系化したものとして「ファンケルグループ7つの基本戦略」を置いた。基本戦略には、マーケティング戦略、国内チャネル戦略、海外戦略、人財戦略、IT・デジタル戦略、R&D戦略、SCM戦略を並べた。
SCM戦略では、デジタル技術と組織力により品質と安定供給を両立させる方向性を示している。健康食品・化粧品業界では、品質と供給の両面をデジタルで推進する取り組みが広まりつつあり、ファンケルがSCMを7つの基本戦略に組み込んだ点は、供給面の運用を構想に含める設計となった。円安・インフレ環境下で、通販健康食品業界で事業効率化や事業展開の広がりに向けた動きが進むなか、基盤機能の強化を先に掲げた構成は、外部環境の変化を織り込んだ経営計画の組み立て方と重なる。
FV2035で示された枠組みは、人財、IT・デジタル、R&D、SCMを基盤機能に置き、その上にマーケティング戦略、国内チャネル戦略、海外戦略を重ねる形をとっている。社会面ではCSVパーパスの重点テーマを「健やかな暮らし」「誰もが輝く社会」「豊かな地球環境」とし、企業活動と社会課題の接点を明示した。背景には、ESGを含む社会的要請と企業活動の接続を意識したテーマ設計があり、ファンケルは非財務面の取り組みも構想に組み込んだ。
今後は、2026年から始動するFV2035のもとで、7つの基本戦略とCSVパーパスを同時に運用していく。取引管理や法人営業の観点では、人財、IT・デジタル、R&D、SCMを基盤機能に据える整理が焦点となり、協業や調達、供給に関わる実務ではSCM戦略の運用範囲に沿った対応が求められる局面が出てくる。ファンケルはFV2035を、キリンヘルスサイエンス事業の中核企業としての役割が大きくなる状況に合わせて策定し、2026年から始動する方針を示した。
