株式会社エンジョイワークス(鎌倉市)は大分県別府市で、複数の空き家を一つのコンセプトで再生する「空き家の面的再生」による中長期滞在拠点「TOJIHAUS PROJECT」を本格的に始める。1棟目の宿泊施設が3月上旬に開業する。国土交通省の令和7年度(2025年度)「空き家対策モデル事業」に採択され、別府市と連携する。二地域居住の推進と関係人口の創出をねらう。
取り組みは、7泊〜30泊の中長期滞在に特化した宿泊施設として、複数の空き家を取得・改修する構想だ。点在する空き家を分散型の宿泊拠点として再編集し、地域の商店、温泉、路地空間など「まちの日常」を体験できる環境の提供を掲げる。エンジョイワークスは全国各地で蓄積してきた「空き家×宿泊・民泊」モデルの知見を活用する。
2026年秋まで10棟超
「TOJIHAUS PROJECT」は、今年度は2棟の整備を進め、2026年秋までに10棟以上の事業化を目指す。1棟目は別府市野田の「TOJIHAUS」で、吹き抜けのある間取りに改装した。2棟目も同じ町内で整備中で、3月中に民泊として開業予定だ。加えて、別府市の空き家約12,000戸のうち120戸(1%)を面的再生の対象とし、まち全体の活性化を図る。
別府市は温泉都市である一方、市内の宿泊施設の約9割が1〜2泊を前提としたホテル・旅館とされ、湯治に適した中長期滞在向けの宿泊拠点が不足しているという。市内には12,640戸の空き家が点在し、空き家率は18.2%(令和5年(2023年)「住宅・土地統計調査」)に達している。プロジェクトでは、既存の建物が持つ素材感を残しつつ、仕事も暮らしも同じ空間で完結できる空間設計をうたう。対象物件には温泉を引き込むか、徒歩数分で入れる温泉・公共浴場を配置し、温泉を暮らしのリズムに組み込んだ滞在を可能にする。滞在者・地域住民・関係人口が交わる「センターハウス(仮)」も設置する計画だ。
事業の推進軸となるのが、国土交通省の令和7年度(2025年度)「空き家対策モデル事業」への採択と、別府市との連携だ。エンジョイワークスは鎌倉市を拠点に、空き家活用を自治体との共創で進めてきた経緯があり、自治体共創プロジェクトは35件に達する。別府での計画は、同社が全国で進めてきた空き家活用のノウハウを、温泉を核とする滞在型拠点群へ展開する試みとなる。
外部環境として、別府市は「新湯治・ウェルネス」を掲げ、滞在型の観光や関係人口づくりを進める方針を打ち出している。市内の空き家は12,640戸、空き家率は18.2%に及び、既存住宅の利活用は都市経営の主要テーマの一つだ。宿泊が短期中心になりやすい供給構造の下で、中長期向けの受け皿が乏しかったという事情もあり、源泉数・湧出量日本一とされる温泉資源を、長期滞在の設計と結びつけていく狙いがある。
運営はグッドネイバーズ
1棟目の「TOJIHAUS」は、リノベーションをエンジョイワークスの一級建築士事務所が担当し、施設運営は関連会社の株式会社グッドネイバーズが担う。別府市の「新湯治・ウェルネス」に沿って地域金融機関・教育機関とも連携し、二地域居住の推進と関係人口の創出を図る。空き家を点ではなく面で捉え、複数物件を取得・改修していく進め方を事業の骨格とする。
供給の形は、7泊〜30泊の中長期滞在に特化した宿泊施設を複数棟で構成し、点在する空き家を分散型の宿泊拠点として再編集するものだ。工程面では、今年度に2棟を整備し、2026年秋までに10棟以上の事業化を目標とする。「センターハウス(仮)」も整備し、ワーケーションや長期滞在者と地域住民が交わる場として機能させる構想だ。
資金面では「TOJIHAUSファンド(仮称)」の組成を計画し、2026年前半の設立を目標とする。物件取得や改修、企画、運営準備に充てる方針で、空き家の面的再生における「地域巻き込み型モデル」として、地元企業・金融機関・教育機関・関係人口に加え、大手企業との協働も視野に入れる。別府市の空き家約12,000戸のうち120戸(1%)を面的再生対象とする計画を掲げ、取得と改修を積み上げていくことで、長期的な事業の継続と地域経済への波及効果を狙う。
