医療画像解析を手がける株式会社エム(東京都港区)は、エーザイ株式会社の子会社テオリア・テクノロジーズ株式会社(東京都文京区)と、脳画像データを活用した「脳の健康」に関する意識向上や行動変容を促す取り組みを共同で進める事業提携契約を締結した。エムの脳画像解析技術と、テオリアの行動変容支援ノウハウを連携させ、働く世代への早期気づきと具体的な行動変化につなげる仕組みづくりを目指す。
提携の狙いは、加齢や生活習慣により知らずに進行する脳の変化を、30〜40代から可視化し、未病段階でのリスク低減を支援することにある。エムが提供する全脳解析AI「MVision health(エムビジョン ヘルス)」の解析結果と、テオリアが展開する健康行動サービスを接続し、脳の健康データを日常生活の改善アクションへつなげる流れを構築する。両社にとって、中核事業の延長線上での協業となる取り組みだ。
全国300施設で展開する解析技術
MVision healthは、MRI画像から脳萎縮や白質病変を数値化し、認知機能低下の兆候を早期に把握できる技術。既に全国300以上の健診施設で導入されており、医療機関の運用負担を増やさずに多様な受診者層に提供している。エムの技術は、医療分野で高く評価され、代表の森進氏は米ジョンズホプキンス大学で脳画像科学を研究してきた。テオリアは、企業や自治体向けに健常期から発症後までを支える仕組みを運営し、今回の連携を通じてデータの活用範囲を広げる考えだ。
テオリアはエーザイグループの認知症関連事業を担い、健常期からの一次予防施策を各地で展開してきた。エムの解析技術と統合することで、脳の器質的変化と生活習慣データを相関させる仕組みを実装する方針を示している。両社は、2025年以降も企業健康経営分野などでの運用拡大を目指す体制を整える予定とされている。
背景には、日本国内で進む高齢化と、働き盛り世代の脳の健康に関する課題認識がある。研究によると認知症関連の脳変化は30〜40代から始まることが指摘されており、早期管理の重要性が増している。
脳の健康情報を統合、両社で開発体制
今回の協業では、エムの受診者がテオリアのプラットフォーム「THEO ONE」上で脳画像診断レポートを電子的に閲覧できるようにする。複数の脳指標を統合的に表示し、生活習慣データと組み合わせて改善行動を促す機能を開発する計画だ。脳の健康度を把握するだけでなく、どのような生活要素が変化に関わるかを示す仕組みを共同構築する。
エムが画像解析と科学的検証を担い、テオリアがフィードバック機能や生活改善支援を設計するなど、役割分担を明確化して進める。協業は単発企画ではなく、企業や自治体の健康施策とも接続する形で位置づけられている。両社は今後、解析結果を生かした生活支援ソリューション開発を進める方向性を示している。
今回の取り組みは、医療データを「受診後の行動」へ結び付ける実証事例として注目される。エム側では自社解析AIの応用範囲を拡大でき、テオリア側は行動科学を基盤とする支援プロセスに医学的裏付けを加える形となる。
今後の運用上の注目点は、テオリアのサービス環境とエムの解析データをどう統合的に扱うかという点だ。新たな仕組みを定着させるには、プラットフォーム間での情報連携やデータ管理の整備が求められる。今回の提携は、両社が蓄積してきた脳画像・行動データを社会の健康管理に生かす取り組みの一環となる。