エレコム株式会社(大阪市中央区)は1月31日、オンライン開催された「離島医療会議」に協力企業として参画し、三重県鳥羽市の診療所におけるオンライン診療の取り組みを紹介した。離島や遠隔地での診療機会確保に向け、民間企業が機器提供を通じて医療現場を支援する事例として位置づけられる。
エレコムは、オンライン診療や患者説明での利用を想定した大画面タッチスクリーンを提供している。会議では、こうした機器を活用した遠隔医療の実装例が共有され、離島を含む遠隔地での診療環境整備に向けた議論が深められた。
鳥羽市診療所でのタッチスクリーン活用
紹介された事例は、三重県鳥羽市の診療所へのインタラクティブタッチスクリーン導入だ。Newline社製の大画面タッチスクリーンを用い、オンライン診療時の情報共有や、患者への視覚的な説明に活用している。導入から1年が経過し、業務効率化や説明内容の可視化に一定の効果があったとの評価が示された。
離島医療会議は、鳥羽市、島根県海士町、株式会社風と土と、アンター株式会社、認定NPO法人離島経済新聞社が共催し、公益財団法人日本離島センターと一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会が後援した。配信会場は鳥羽市マリンターミナルに設けられ、医療・看護・介護従事者のほか、自治体関係者、研究者、学生、地域づくり関係者、一般参加者まで幅広い層を対象とした事前登録制のオンライン形式で運営された。
エレコムは協力企業として運営に関わり、会議当日はオンライン診療の運用実態を示す役割を担った。説明は、同社ヘルスケア事業部で執行役員部長を務め、医師資格も持つ葉田甲太氏が担当し、診療行為の流れや画面共有の方法など、現場での具体的な活用方法を紹介した。
離島医療の課題とオンライン診療の位置づけ
離島医療会議は「未来の離島医療を共創すること」を掲げ、医療従事者、行政、民間企業、地域住民らが課題と解決策を共有する場として運営されている。複数の自治体や企業、団体が共催・後援に加わることで、診療体制の維持、専門医へのアクセス、情報通信基盤の整備など、離島特有の課題を多角的に議論する仕組みとなっている。
エレコムが提示したタッチスクリーンの事例は、医師と患者が同じ画面を見ながら説明を受けられる点や、遠隔地の専門医と画面を共有しやすい点が評価され、オンライン診療を「対面に近づける」ツールとしての側面が強調された。地理的な制約によって専門診療へのアクセスが限られがちな離島において、通信環境と表示機器の組み合わせによる診療の質向上が、一つの解決策として示された格好だ。
外部環境では、オンライン診療の普及度合いを定量的に把握する動きも出ている。日本健康支援学会の年次学術大会では、オンライン診療関連点数の算定を伴う外来受診件数を全外来受診件数で割り、都道府県別に普及率を算出する試みが報告された。人口構造や医療資源の分布とオンライン診療利用率の関係を分析することで、地域ごとの差異が浮き彫りになり、自治体や医療機関が自らの取り組み状況を検証する材料となる。
エレコムのヘルスケア事業と成長投資
エレコムは、IT周辺機器の開発・製造・販売を主力としながら、ヘルスケア分野を新たな成長領域と位置づけている。ヘルスケア事業部は「届いていないところに届ける」をビジョンに掲げ、医療資源が乏しい地域や在宅環境に向けたソリューション展開を進めている。離島医療支援は、その中核テーマの一つとなる。
2024年3月期の連結売上高は1101億6900万円、経常利益は133億6000万円と堅調な業績を確保しており、周辺領域への投資も継続している。2021年4月にはフォースメディアを完全子会社化し、ネットワークストレージや監視カメラの販売強化に踏み切った。これにより、映像データの保存やセキュリティといったインフラ面のサービス提供力を高め、医療・介護施設向けのシステム需要にも対応しやすい体制を整えている。
電気機械器具卸業界では、機器単体の販売から、ネットワークや保守サービスまでを一体で提供するビジネスモデルへの転換に向け、M&Aが相次いでいる。エレコムも監視カメラやストレージの強化を通じて、医療・介護現場向けのトータルソリューションを志向しており、オンライン診療用ディスプレーや関連機器の提供は、その一環と位置づけられる。
今回の離島医療会議への参画により、エレコムは遠隔医療分野でのプレゼンスを高めるとともに、自治体や医療機関との接点を広げた。鳥羽市診療所での事例紹介は、オンライン診療の具体的な運用イメージを提示するものであり、今後、他地域の離島医療や在宅医療の分野でも、同様の機器導入や連携が広がるかが焦点となる。
