株式会社EEFULホールディングス(東京都港区)は、総額4.1億円の資金調達(プレシリーズA)を実施した。グロービス・キャピタル・パートナーズがリード投資家を務め、Dual Bridge Capital、Identity Academy(Future Identity Capital)が参加した。調達資金は介護事業所の譲受やPMIの推進に充当し、介護インフラの構築を進める。
EEFULホールディングスは、介護事業所のM&Aと統合後のPMI(経営統合)を進めるとともに、HR・TECH・FINANCEをてこに持続的な介護インフラの構築を推進する。基幹コンセプトにCCRCC(Continuing Care Retirement Communal City)を掲げ、在宅介護事業、介護事業者向けクラウドサービス、高齢者向け生活支援事業を展開し、現場運営から得られる知見をサービス開発や経営改善に生かす考えだ。
4.1億円で体制を拡充
今回の資金調達はプレシリーズAラウンドで、グロービス・キャピタル・パートナーズがリード投資家となった。グループ全体の従業員は約350人で、介護事業運営とテクノロジー開発の両面で事業基盤の構築を進める。譲受とPMIに加え、AX(AI Transformation)基盤の整備も進める。
運営現場から得られる知見をサービス開発や経営改善に生かしつつ、在宅介護事業、介護事業者向けクラウドサービス、高齢者向け生活支援事業をまたぐ事業運営とデータ蓄積の両立を図る。介護事業者向けクラウドサービスでは、EEFUL DB、シニアカレッジ、福利厚生くん、介護M&Aシミュレーターなどを展開する。
同社は2023年に株式会社emomeとして創業し、2025年11月に現社名へ変更した。今回の調達を通じて、譲受の加速に向けたソーシング体制の強化や、案件発掘から意思決定までのプロセス高度化、統合後の経営改善を前提としたPMI体制の整備を進める。CCRCCのコンセプトの下、複数領域を束ねて介護インフラの構築を図る。
背景には、介護事業の退出増加と事業承継ニーズの顕在化がある。厚生労働省の統計では、介護事業所数は約18万か所で推移し、前年比で微減となった。小規模事業者(従業員10人未満)の比率は約70%に達する。東京商工リサーチによると、2025年の介護事業者の休廃業・解散は653件と過去最多を更新し、倒産件数176件の約3.7倍にあたる事業者が事業継続を断念した。従業員10人未満の小規模事業者が倒産の約8割を占め、後継者不在や人手不足を背景に「あきらめ廃業」が増えているとされる。総務省の推計では、2025年の65歳以上人口は3625万人で、総人口に占める割合は28.7%に達する。
譲受とPMIを一体運用
介護事業所のM&Aでは、承継ニーズや成長機会を有する事業所の譲受を加速し、地域単位での事業基盤構築を進める。PMIでは、業務・組織・収益構造の可視化、役割と責任の明確化、レポートラインや業務フロー整備を通じて、属人性を排した組織運営へ移行する方針を掲げる。統合局面での運営を「見える化」し、統合後の経営改善につなげる狙いだ。
運用面では、予算策定と目標数値の可視化、進捗管理の徹底によりPDCAが継続的に回る体制を構築し、管理職との継続的な対話やマネジメント強化を通じて統合後も改善が自走する組織づくりを進める。経営人材についてはCXOレベルを含む採用強化を掲げ、連続的な資金調達やM&Aの遂行、コーポレートガバナンス整備、AXを推進できる経営機能を担う人材を求める。人事・評価制度では、目標設定・評価基準・昇給制度の明確化により、努力と成果が適切に報われる仕組みの確立を目指す。採用広報およびブランディングを強化し、介護職採用で再現性のある成功パターン構築を図る。
AX基盤では、利用者領域(支援情報)、従業員領域(労務・配置)、事業所領域(運営データ)を横断統合するプラットフォームの設計・開発を進め、AIを通じたデータ活用高度化のアーキテクチャを構築している。現場運営で得られる知見をサービス開発や経営改善に生かし、在宅介護事業とクラウドサービスの接続を意識した設計とする。
介護M&Aの資本競争
介護領域では、事業承継ニーズの拡大と同時に、M&Aと運営標準化を一体で進める動きが広がっている。東京商工リサーチが示した2025年の休廃業・解散653件、倒産176件という水準は、退出が「倒産」だけでは捉えきれないことを示し、事業承継局面の受け皿をどの主体が担うかという論点を浮かび上がらせる。帝国データバンクの2025年調査では、介護業界の後継者不在率が約40%とされ、全産業平均の30%超を上回る。譲受の対象が中小・小規模に偏りやすい市場構造と重なり、買い手側にはPMIの再現性がより強く求められる局面にある。
矢野経済研究所は介護市場規模を2025年度見込みで約13兆円、介護M&A件数を2025年約150件とし、前年比20%増の伸びを見込む。高齢化の進展が需要の増勢を押し上げる一方、供給側では退出が続き、需給両面のギャップが広がる構図だ。日経BP「介護経営白書2025」では介護業界の経営人材不足率が約60%とされ、管理職経験者不足が課題となっている。
業界内では、介護DXプラットフォーム強化とM&A加速を掲げる企業が、資金調達を通じてPMIとデータ統合を進める事例が相次ぐ。たとえば介護M&A市場では、株式会社ケアプロ(CarePro)が2024年にシリーズDで約20億円を調達し、業務標準化とデータ統合を推進したと報じられている。株式会社カイポケ・ホールディングスは2023年にプレシリーズAで約5億円を調達した後、2025年に介護事業所の買収を複数実施し、後継者不在事業所の譲受に注力した。株式会社ツクイスタッフホールディングスも2025年に介護事業M&Aで10件超の譲受や、AX導入による人員配置最適化を進めたとされる。
資金調達では、リード投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズが介護・ヘルスケア分野で複数の投資実績を持つとされる。Dual Bridge Capitalは初回出資から追加出資を行い、既存株主によるフォローオンが入った。Identity Academy(Future Identity Capital)の参加も含め、譲受とPMI体制の整備に資金が回る設計とする。
