越後製菓(新潟県長岡市)は、海外市場への対応強化と人手不足への対応を目的に、工場部門で食品工場DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めている。米菓を製造する片貝工場(新潟県小千谷市)では、国際規格「FSSC22000」の認証を令和7年8月に取得した。包装工程ではデジタルツール導入後、包材の取り違えといった包装ミスが解消されたという。
DX推進のきっかけは、輸出強化に伴いFSSC22000の認証取得が必要になったことだ。FSSC22000は、製造工程で「誰が、いつ、何を、どのようにチェックしたか」を、改ざんできない形で記録することを求めている。片貝工場では紙で記録していた工程を見直し、書き換えができないデジタルツールの導入に踏み切った。デジタル化によりタイムスタンプが付与され、記録の信頼性が高まった。工場の記録・点検の運用を輸出対応と省人化の両面で組み替える動きとなる。
米菓の7割担う片貝
片貝工場は越後製菓最大の米菓生産拠点で、年間生産量の約7割を担う。国際規格への対応が求められる工程の比重が大きく、記録のデジタル化の効果が出やすい現場でもある。包装工程では、タブレット端末に表示される正しい包材の画像と、ライン上の包材を照合し、合致していれば画面をタッチしてチェックを入れる方式に切り替えた結果、別製品の袋に入れるといったミスがなくなったという。
人員面では、従業員は現在約800人で、吉原忠彦社長は将来的に400人台まで減ると見込む。定年退職者の増加に対し、人口減少で新規採用が伸び悩むことが背景にある。人手不足対策の一環で外国人材の受け入れも進め、技能実習生など約50人が働いている。吉原社長は、今後も外国人材の受け入れを拡大する考えだ。
越後製菓は1981年創業の米菓メーカーで、新潟県内を中心に米菓や切り餅を生産してきた。海外輸出比率は2023年時点で売上高の約1割で、主に米国や東南アジア向けが中心となる。片貝工場ではFSSC22000取得に先立ち、2020年ごろにISO22000を取得しており、国際規格に沿った品質・衛生管理を段階的に強化してきた。吉原社長は2015年に就任し、2018年からDX投資を本格化。2022年にはカミナシ社との提携で紙記録のデジタル化を進め、作業記録と点検の運用を抜本的に見直している。
背景には、食品製造の労働需給の逼迫と、輸出拡大局面での国際認証の重みがある。厚生労働省の2024年データによると、食品製造業の有効求人倍率は2.5倍で、全国平均の1.3倍を大きく上回る。外国人材の受け入れも食品分野で拡大しており、2024年の技能実習生は約5万人(出入国在留管理庁)とされる。市場面では米菓市場が2023年に約1500億円規模で前年比2%減となる一方、米菓の輸出額は約100億円で15%増(農林水産省)と伸長。FSSC22000の取得件数は食品分野で増加しており、2024年に約2000件で前年比2割増とされる。工場の記録を改ざん困難な形で残す要件は、輸出対応と現場運用の両面に影響を与えるようになっている。
記録の改ざん防止を軸
片貝工場では、FSSC22000が求める「後から書き換えできない形での記録」に合わせ、紙の記録からデジタルツールへ移行した。包装工程では、従来は製品と封入する袋が合っているかの確認を忘れたり後回しにしたりすることでミスが発生していたが、タブレット端末の画面上で包材を照合し、タッチ操作でチェックを残す方式に変えたことで、確認作業が工程上の必須ステップとして固定化された。タイムスタンプ付きで記録が残るようにしたことが、FSSC22000の要求水準と結びついている。
現場への浸透では、片貝工場の片桐美歩副工場長が中心的な役割を担う。デジタルツールに親和性の高い20~40代の従業員から運用を始め、その後、過半を占める50代以上の従業員にはタブレット端末の基本操作から時間をかけて習熟を図った。従業員同士で教え合う環境づくりも進め、工場全体へ展開した。食品製造業のDX浸透率は2024年に約4割(経済産業省白書)にとどまり、年齢層によるツール習熟の差が運用の焦点になりやすい中、段階的な展開で抵抗感を抑える手順を採った。
人材面では、外国人材の受け入れ拡大に合わせ、多言語対応の動画マニュアルなどのデジタル教材を、片貝工場など2工場で順次導入する計画もある。外国人技能実習生の受け入れは2019年から本格化し、2024年2月時点で約50人が働いている。多言語動画マニュアルは2025年3月に片貝工場と長岡工場へ導入予定で、現場教育の手段を紙中心からデジタルへ移す動きが続く。
同業では、岩塚製菓が2022年3月に全工場でFSSC22000を取得し、ブルボンも2023年5月に認証を得ている。米菓メーカー各社で、国際認証への対応をてこに点検記録や工程内照合をデジタル化する動きが広がる。越後製菓は片貝工場でのFSSC22000取得と包装工程のタブレット運用を起点に、工場全体でのDX推進と人手不足対策、輸出拡大を同時に進めようとしている。
