株式会社ディー・エヌ・エー(東京都渋谷区)の子会社である株式会社アルムは、医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join(ジョイン)」による循環器疾患の遠隔診療ネットワークを、ブラジル・セルジッペ州で新たに開始した。アルムのブラジル国内展開は、アラゴアス州、マラニャン州、アクレ州に続き4州目となる。救急搬送段階からの情報共有を通じた診断支援体制の運用が進む可能性がある。
セルジッペ州では、SAMU(公衆救急サービス)や高度専門病院、UPA(24時間対応・救急診療所)、州立病院調整本部、看護師、専門医によるメディカルチームをJoinで連携する形をとる。セキュアな環境下で迅速に情報共有できるようにし、広域エリアにおける専門医リソースの最適化を支援する狙いを示している。アルムにとっては、Joinを用いたブラジル国内での循環器救急領域の広域医療連携の取り組みの一環となる。
4州で約1300万人対象
セルジッペ州(人口約221万人)への拡大により、アラゴアス州(約312万人)、マラニャン州(約677万人)、アクレ州(約83万人)を含めた約1,300万人を対象とする形になる。対象エリアは日本の面積(約38万km²)を超える約41万km²とされ、循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞など)をめぐるJoin遠隔診療ネットワークの構築範囲が広がった。
運用の枠組みとして、全4州のネットワークには30の高度専門病院、56のUPA、24のSAMU、5つの州立調整本部が含まれる。メディカルチームは15名で、看護師と専門医(脳神経内科医、循環器内科医)がJoin上で連携する体制を示している。セルジッペ州単体でも4つのSAMU、10の高度専門病院、13のUPA、2つの州立病院調整本部が関与する形となる。
セルジッペ州の体制としては、看護師と専門医によるメディカルチーム(脳神経内科医、循環器内科医)がJoinで連携する。24時間365日で患者をサポートできる診断支援体制を構築しているとしている。ブラジル全体ではSAMUが公衆救急の基盤の一つとされ、2023年の利用件数は約300万件とされる。
Joinはアルムが開発・提供する医療関係者間コミュニケーションアプリで、高セキュリティ環境下でのコミュニケーションを可能にする。標準搭載されたDICOMビューワーで医用画像を閲覧し、チャットに共有することで、院外にいる医師へのコンサルテーションや、救急患者の転院時の病院間連携・情報共有などに利用されている。Joinは日本初の保険収載プログラム医療機器で、認証取得国として日本、米国(FDA)、欧州(CE)、ブラジル、サウジアラビアが挙げられている。
今回のセルジッペ州での開始は、救急搬送段階からの情報共有を想定した連携の枠組みを置く点に特徴がある。SAMU、UPA、高度専門病院、州立病院調整本部、看護師、専門医チームをJoin上でつなぐ設計を示しており、救急から病院までの関係者間で情報を扱う場面を想定している。
アルムは医療ICT事業を手がけ、30カ国以上にソリューションを提供してきたとしている。ブラジルでは、アラゴアス州、マラニャン州、アクレ州で循環器疾患遠隔診療ネットワークを実施してきた経緯があり、セルジッペ州の追加で4州に広げた。親会社の株式会社ディー・エヌ・エーは、アルムを子会社として医療領域の事業を展開している。
ブラジルは人口約2億1,200万人を擁し、27の州で各州政府が地域医療政策において重要な役割を担っている。国土は約851万km²とされ、広大な地理条件のもとで医療アクセス格差などが課題になる中で、専門医の都市集中といった状況も踏まえた連携の枠組みを示した。循環器疾患は主要死因の一つとされ、WHOの2023年報告では心血管疾患により年間約40万人が死亡するとされる。
SAMUやUPAを結節
セルジッペ州での連携は、救急搬送を担うSAMU、24時間対応の救急診療所であるUPA、高度専門病院、州立病院調整本部、看護師、専門医チームが同一のアプリ基盤でつながる形をとる。情報共有の対象としては、救急患者の転院時の病院間連携や、院外の医師へのコンサルテーションなど、複数主体が関与する場面が挙げられている。
一方で、どの医療機関がどの患者区分を担うか、各拠点間の搬送や紹介の基準をどのように運用するかといった詳細は、示されている枠組みの中でも個別の運用設計に依存する部分が残る。アルムは、ブラジル国内並びに海外でのさらなる展開を視野に入れながら、循環器救急領域を中心とした広域医療連携基盤の強化を進める方針も示している。
今回の動きでは、4州で約1,300万人を対象に、救急から専門医までをJoinで結ぶ体制が並行して運用される点が焦点となる。医療機関や自治体側では、SAMU、UPA、州立病院調整本部といった関係主体の接続範囲をどこまで含めるかが運用上の論点となり得る。アルムはセルジッペ州での開始を、ブラジル国内での循環器救急領域の広域医療連携の取り組みの一環として示している。
