大同特殊鋼株式会社(愛知県名古屋市)は2月24日、4月1日付および6月下旬付での執行役員の担当・委嘱変更を決定した。営業、技術、経営企画、ESGなどの各領域で担当役員を再編する。これにより、経営基盤の強化とESG経営の推進体制を整える狙いがある。
今回の人事では、営業部門や事業部の統括体制を見直すとともに、ESG推進統括部の新任部長を明示し、サステナビリティ分野の強化を明確にした。併せて、同社グループ2社では新社長の就任が予定されており、ガバナンスの一体運営を進める構えだ。
営業・技術・管理体制を再編
4月1日付の異動では、山下敏明副社長執行役員が社長補佐と営業部門統括の任に加え、東京本社長を引き続き委嘱される。営業総括部とホットフォーマー事業部の担当範囲を整理し、営業機能の集約を図る。
一方、技術開発部門は狩野隆常務執行役員が統括し、技術企画部や品質管理(CQM)部、IT企画部を所掌する。CO₂削減では岩田龍司常務執行役員の協力体制を維持し、ESG施策と技術開発を連動させる。
管理部門では、竹鶴隆常務執行役員が総務・法務・人事・秘書各部を統括する。リスクマネジメントやCRM部門に関しては社長執行役員の清水氏に、ESG関連については岩田氏にそれぞれ協力する体制とした。
また、経営企画部長には斎藤賢一郎氏、ESG推進統括部長には齊藤幹郎氏が新たに就任する。経理・内部統制関連では、みずほ銀行人材戦略推進部出身の遠藤宏氏が新任執行役員として参画する。
グループ会社2社でトップ交代
6月下旬には、梶田聡仁常務執行役員が大同DMソリューション株式会社の代表取締役社長に、髙宮伸執行役員が下村特殊精工株式会社の代表取締役社長にそれぞれ就任する予定だ。
両社はいずれも大同特殊鋼グループの関連事業を担う企業であり、グループ経営の統合的運営を推進する狙いがうかがえる。
大同DMソリューションは金属加工や設計支援など、DX関連分野を含むソリューション事業を展開しており、生産技術や製品開発領域を補完する位置づけを持つ。
一方の下村特殊精工は特殊精密部品の製造で知られ、工作機械および産業装置分野の重要サプライヤーである。両社社長の異動により、グループ内の製造・販売・技術連携が強化されることになる。
中期経営計画とESG推進の文脈
大同特殊鋼は2026中期経営計画において、「経営基盤の強靭化」と「ESG経営の高度化」を柱に掲げている。ESG推進統括部を社内横断機能として設け、取締役会への報告体制を月次で運用しており、カーボンニュートラル、社会貢献、人権尊重などの重点テーマに取り組む。今回の役員再編は、その行動方針の実行を支える組織的な布陣を整える狙いがある。
同社は2013年度比で2030年度までにCO₂排出量を半減させる計画を進めており、Scope1とScope2領域での削減に加え、主要サプライヤーを含むScope3排出量削減にも取り組んでいる。
知多第2工場ではJクレジット制度とCO₂フリー電力を活用し、カーボンニュートラル工場化を目指している。これらの環境施策の実行部門と経営層の連携を強化するため、ESG担当役員と事業部門の橋渡し役を整備した形だ。
安定経営と人的資本強化の両立
外部環境の変化に対応するため、同社はサステナビリティ関連のガバナンス制度を全社的に強化してきた。取締役会と監査等委員会による監督に加え、サステナビリティ委員会を設けてリスクマップを作成し、情報管理・安全・人権・供給網などのリスクを継続的にモニタリングする体制を整えている。
また、人的資本経営にも重点を置き、2026年度に従業員エンゲージメント率80%を目標に掲げる。安全衛生教育やハラスメント防止教育など、労働環境の整備を進めている。
ESG説明会資料によれば、同社は人的資本の最大化と環境負荷削減を並行して推進し、社会的価値と企業価値の両立を中期経営課題に据えている。今回の人事変更の中で、経営企画・内部統制・ESG推進を担当する役員層が補強されたことは、これら双方の課題への継続的な対応を意識した構成だと言える。
見通しと注目点
今後は新体制のもとで、グループ各社を含めた経営管理の一体化と、2030年を見据えたトランジションマネジメントの実行度が焦点となる。ESG関連施策が経営企画や人事、技術開発と有機的に結びつく体制が定着するかが、次期中期経営計画の進展を左右する注目点だ。
