コスモスイニシア(東京都港区)は、発達特性(発達障害・神経発達症)に着目したインクルーシブプロジェクトを進めている。インクルーシブデザインの専門家であるCULUMUと連携し、空間づくりの根幹を見直す取り組みを開始した。得られた知見は分譲マンションやリノベーション、ホテルなどへの展開を検討しており、住環境の調整という観点から設計手法の刷新をめざす。
取り組みは、発達特性のある子どもと同居する家族にとって暮らしやすい住空間の提供を主な目標とする。「本人が頑張って合わせる」のではなく「環境のほうを調整する」ことを重視し、住宅を中心とする空間づくりの考え方を組み替える方向性を示している。プロジェクトはコスモスイニシアが企画・設計面の検討を担い、その思想を受け継ぐ形でグループ会社のコスモスホテルマネジメントが実際のホテルで実証実験を行う構成だ。
当事者の声を地図化
取り組みは2つのステップで進めてきた。まずコスモスイニシアがCULUMUと連携して「インクルーシブプロジェクト」を始動し、発達特性への基礎理解を深めた。そのうえで、当事者の声を「お困りごとマップ」として整理し、社内ワークショップを通じて課題を抽出した。
同社は住宅提供の主な対象を子育て世帯としつつ、議論を通じて「標準的な家族像」の枠組みでは多様な暮らしの実態を捉えきれていないとの認識を共有した。感覚過敏のある子どもにとって照明や音環境が強いストレスになる場合がある一方、光や音を調整できる空間は、出張で疲れたビジネスパーソンや妊婦などにも心地よい空間になり得るとの見方を示す。
連携先のCULUMUについてコスモスイニシアは、発達特性のある子どもたちと向き合い空間改善の実績を積んできた点を評価し、当事者や専門家の知見を取り込みながら協働する体制を構築した。ヒアリングや観察で得られた困りごとを抽象化し、空間づくりのヒントに翻訳していくプロセスを重視している。
一連のプロセスでは、個別の困りごとをそのまま設備仕様に落とし込むのではなく、言語化されにくい負荷やストレスの要因を拾い上げ、空間の使い方や整え方に関する論点へ変換する姿勢をとる。これにより、住まいの設計で暗黙のうちに置かれがちな利用者像を固定せずに、照明、音響、動線、収納など調整可能な要素を増やす方向を探る。
MIMARUで実証段階
グループ会社のコスモスホテルマネジメントは、アパートメントホテル「MIMARU」を運営している。MIMARUはコスモスイニシアが開発し、4人以上で泊まれる広い客室を特徴とする。宿泊でのハード・ソフト両面の改善に取り組み、蓄積した運営ノウハウを今回のプロジェクトにも生かす。
対象を発達特性のある子どもと同居する家族に置きつつ、特定の正解を定めず、多様な特性を包み込める「柔軟な空間」の必要性を共有する。住まいでの検討内容を、宿泊という短期滞在の利用環境に当てはめ、ハード面では光や音、動線、家具配置などの調整、ソフト面では案内方法やスタッフ対応といった運営面の工夫につなげる狙いだ。
実証の場をホテルに置くことで、住まいと同様に「過ごし方」が体験として表れやすい空間で検討を重ねることができる。宿泊施設では短時間の滞在でも環境変化の影響が顕在化しやすく、当事者家族への調査や企画検討で得た知見を、改善の論点として検証しやすい。
コスモスイニシア側の作業が空間づくりの「根幹の見直し」、コスモスホテルマネジメント側の作業が「実際のホテルでの実証実験」という役割分担も明確だ。住宅開発と宿泊運営の知見を横断し、発達特性を踏まえた空間づくりの手順を組み立てていく体制を整える。
プロジェクトは特定のモデル像に利用者を当てはめるのではなく、多様な特性を前提とした柔軟な空間づくりを共通テーマに掲げる。今後は、当事者家族への事前調査や企画検討で整理された論点をMIMARUでの実証実験に反映し、その成果を住まいや他の施設類型にも展開できるかが焦点となる。
