コムシード株式会社(東京都千代田区)は2月12日、2026年3月期第3四半期の連結決算を公表した。売上高は前年同期比2.6%減の18億8530万円となった一方、営業利益は13.1%増の1億1598万円、経常利益は59.6%増の1億2376万円と増益を確保した。純利益は7218万円と黒字転換し、不採算だったブロックチェーン事業の整理が収益改善に結びついた。
コムシードはスマートフォン向けのソーシャルゲームや有料アプリ開発を主力とするモバイル事業を中心に、ブロックチェーン関連領域を含む複数事業を展開している。今回の結果は、収益構造改革によるコスト圧縮の効果と、主力コンテンツの健闘により利益率が改善したことが背景にある。同社にとって今回の決算は、ブロックチェーン事業の縮小が一巡し、モバイル事業への集中を進める節目のタイミングとなった。
モバイル事業が安定、ソーシャルゲームが支え
セグメント別では、主力のモバイル事業が堅調に推移した。売上高は前年同期比0.1%減の18億8114万円、セグメント利益は1億6317万円で前年同期比37.5%減となったが、事業の柱であるソーシャルゲーム運営が引き続き支えとして機能した。
特に、運営中の仮想ホール型ゲーム『グリパチ』に続く新サービス『スロパチスピリット』を10月にリリースし、バーチャルホールサービスの売上が前四半期比56.9%増となった点が特徴だ。広告や受託開発事業も好調で、ゲーム内広告事業では前年同期比20.1%の売上増を記録した。
『スロパチスピリット』は、パチンコホール運営大手の株式会社ダイナムと連携して展開する新型バーチャルホールアプリであり、同社子会社スピリッジ株式会社がパブリッシャーを務める。主要タイトル『eA夏色日記GO』などを配信し、リアル店舗との連動を特徴とする。
これまでグリパチ単独だった仮想ホールサービス事業は2本柱体制となり、売上基盤の拡張が進む。
ブロックチェーン事業撤退で損失縮小
一方、ブロックチェーン事業では、NFTやGameFiを扱う子会社HashLik株式会社による不採算事業の譲渡や撤退を実施した。
これにより、当第3四半期の売上高は2222万円(前年同期比73.7%減)と大幅減少したが、セグメント損失は4719万円に縮小し、前年の1億5407万円の損失から大幅に改善した。不採算部門の整理と減価償却負担の軽減によって構造的赤字体質を是正した形だ。
HashLikは2025年8月、GameFiプロジェクト「UNIVERSAL STALLION RE」をパブリッシャーのKING SYSTEM.Icへ事業譲渡しており、ブロックチェーン関連への新規投資を抑制する方針を鮮明にしている。
今後は同領域で蓄積した技術ノウハウを、受託運営や技術支援など安定的な収益基盤づくりに転用する。これによりグループ全体としてのコスト構造は大幅に改善し、連結営業利益率の上昇に寄与した。
財務基盤が改善、資産・純資産とも増加
第3四半期末の総資産は前年同期比で141百万円増の17億6073万円となり、流動資産が13億6900万円、固定資産が3億9173万円となった。
資金面では、現預金がやや減少した一方で、売掛金や無形固定資産の増加が目立った。売掛金の増加は、国内外配信事業の拡大に伴う取引増加を反映している。純資産は7億6196万円(前年同期比6886万円増)で、利益剰余金の積み上げが要因だ。
借入金残高がやや増加しているものの、自己資本比率は42.7%と前期末の41.9%から改善しており、財務基盤の安定化が進んだ。
配当については、期末時点でも無配を継続しているが、成長投資を優先する姿勢は変わっていない。
外部環境の変化と事業再構築の流れ
同社は、2025年4月にパチンコ・パチスロ大手の株式会社SANKYOと業務提携を締結し、遊技機シミュレーターアプリの共同開発や新規IPの創出を進めてきた。
これを機に、遊技機メーカーとの関係強化を通じて、オンライン・オフライン両領域でのエンターテインメント事業拡張を図っている。グリパチの累計利用者数は約680万人に上り、遊技シミュレーター市場で存在感を高めている。
また、ダイナムとの提携により、実店舗と連動した仮想空間サービスを推進している。
同社が2025年10月にリリースした『スロパチスピリット』では、全国のホールを模したバーチャル空間で体験型プレイを提供。来店チェックイン機能や限定アバターなど、デジタル施策を強化している。これらの施策は、スマートフォンゲーム市場の成熟化に対応する新たな顧客接点構築の一環だ。
経営方針と内部体制
コムシードは1991年設立で、名古屋証券取引所ネクスト市場に上場している。代表取締役社長CEOの塚原謙次氏は、モバイル事業部門を率いて企業再編を主導してきた。
グループ会社には、韓国法人のCommSeed Korea、HashLik、スピリッジのほか、ソフトウエア開発を担うアイビープログレスも含まれる。これらの連携により、開発から配信までの内製比率を高め、事業の安定化を進めている。
特に有料アプリ事業では、『パチスロ かぐや様は告らせたい』など新作の投入で収益を伸ばし、2025年10月のリリースから15日間で累積売上1億円を突破している。
また、第3四半期以降に予定されていた複数タイトルの配信体制が整ってきており、2026年3月期通期で前期比増収増益の見通しを維持している。
専門家の見方と今後の注目点
業界関係者は、ブロックチェーン事業からの撤退を早期に判断した点を評価している。市場では不確実性が高いNFT・GameFi領域から撤退し、ソーシャルゲームやパブリッシングといった本業回帰を明確に打ち出したことが、利益率の改善に直結したとみる意見がある。
持続的な収益構造の再構築に加え、アライアンスによる新規事業創出力への期待も高まっている。
次期に向けた注目点
第4四半期以降は、『スロパチスピリット』のユーザー定着と、複数の有料タイトル配信による収益上積みが焦点となる。
ブロックチェーン事業縮小により固定費の削減効果が表れつつあり、通期で営業利益150百万円、経常利益130百万円、純利益100百万円の会社計画を据え置いている。モバイルゲーム事業を軸に、既存タイトルと新規タイトルを両輪とした拡大路線を維持する構えだ。
今回の決算で見えた収益改善は、不要部門の整理と主力分野への集中を進めてきた中期経営計画の一環といえる。
ブロックチェーン領域の整理完了により、今後はモバイル事業と有料アプリ展開に経営資源を集中させる動きがより鮮明になる見通しだ。
