クラスター株式会社(東京都品川区)は、デジタルツイン・フィジカルAI・調査の3事業領域を統合し、事業構想から技術実装・運用までを一貫して支援する専門組織「事業開発本部」を新設したと明らかにした。メタバースプラットフォーム「cluster」で培った技術資産を産業領域に展開し、3次元データ活用の実務側に利用範囲を広げる動きとなりそうだ。
事業開発本部は、建設・不動産・モビリティ・製造・インフラ・施設管理など幅広い産業領域を対象に、課題解決や新規事業開発、ソリューション設計から技術開発、デリバリーまでをワンストップで提供する狙いを示している。クラスターが持つ大規模同時接続基盤、3D空間生成技術、行動データ分析を組み合わせ、「デジタルツインに『人』の要素を加える」点を打ち出した。自社開発・運営の「cluster」で形成した基盤を、産業向けの支援体制として横串で束ねる取り組みになる。
最大10万人同時接続基盤
クラスターは「cluster」を通じ、PC・スマートフォン・VRゴーグルなど端末を問わず最大10万人が同じ空間に同時に入れるインフラを構築してきたという。空間内での行動データを取得・分析する技術も蓄積しており、産業領域では「誰でも・いつでも・どこからでも」3次元データを確認・議論・活用できる環境の提供を掲げる。
事業領域はデジタルツイン、フィジカルAI・ロボティクス、調査の3つとした。デジタルツインではBIM/CAD/点群データからのデジタルツイン空間自動生成(特許出願済)や、IoTセンサー連携によるリアルタイム環境可視化、行動データと空間データの統合分析を扱う。調査領域では、大規模同時接続基盤を生かしたメタバース調査・実験ソリューション「Cluster INSIGHT」を基盤に、体験ベースの大規模な調査・実験の実施を通じて、行動データと定性データを統合し意思決定を支援する枠組みを示した。
フィジカルAI・ロボティクスでは、デジタルツイン空間内で自律的に行動するAIエージェント基盤「AI Agent FLEX」(特許出願済)を開発・提供し、デジタル空間で学習したAIの知見を物理空間のロボット・デバイスに転写し、リアルとデジタルの双方向でデータを循環させる方針を掲げる。
主要実績として、すでに大手ゼネコンやモビリティ・不動産領域の企業、省庁、自治体、病院など複数の領域で取り組みや共同研究が進行しているとした。個別の内容は順次発表するとしている。
国際スタートアップカンファレンス「TakeOff Tokyo2026」の登壇セッションで発表した。事業開発本部の内部機能として、事業共創(事業共創部)、技術・研究(メタバース研究所+ソリューションエンジニア)、プラットフォーム提供・技術デリバリー(ソリューションエンジニア+プラットフォームエンジニア)を1組織に統合したと説明している。
事業共創では、顧客の事業課題を起点に3次元データの活用戦略策定、新規事業開発、ソリューション設計を共同で推進し、デジタルツイン環境を活用した体験ベースの調査手法を提供する。技術・研究では、VR/HCI/ML領域の研究者やリサーチエンジニアが同一の研究所に在籍し、IEEE VRやIEEE ISMAR、ACM CHIといった国際会議での論文発表の研究知見を取り込みながら、技術戦略の設計からPoC実行、本番実装までの伴走を掲げた。プラットフォーム提供・技術デリバリーでは「cluster」と独自技術を用い、デジタルツイン環境、AIエージェント、フィジカルAI連携基盤の構築から運用、効果検証までの支援を示している。
クラスターは、建設・製造・モビリティなどで建物や街、製品を3Dデータで再現する動きが急速に広がる一方、専用ソフトを扱える専門家に利用が限られ、オーナーや現場担当者、住民が気軽に触れにくい状況があると整理した。加えて、デジタルツインの活用が「空間を3Dで見る」段階にとどまりがちで、データが大きく処理が重いことから、同一空間に複数人が同時に入って歩行や議論をすることが技術的に難しいとも述べた。人が入り歩き回れる状態になれば、動線選択や滞留のデータ化、遠隔地からの設計レビュー、現場再現訓練、関係者間の合意形成といった活動がデジタル上で可能になるとしている。
