株式会社bitFlyerは、「2026年 オリコン顧客満足度(R)調査」で暗号資産取引所3部門の第1位を獲得したと発表した。利用者の選好が売買以外の運用手段にも広がるなか、取引所選定の判断材料が多様化している。暗号資産の活用が広がる局面で、評価軸の組み替えが進む可能性がある。
暗号資産に求められる役割は、売買・保有にとどまらず、ステーキングやレンディングを通じた継続的な運用手段へ広がっている。bitFlyerは今回の調査で、暗号資産取引所3部門の第1位を獲得したとし、評価項目を細分化した調査設計が、利用目的別の比較を促す構図を浮かび上がらせたとしている。この動きは、同社にとって暗号資産取引関連サービス群の訴求軸を「売買」だけに寄せない整理につながる可能性がある。
調査は3部門で1位
オリコン顧客満足度調査は、サービス利用経験者を対象に、口座開設、取引のしやすさ、手数料、カスタマーサポート、システム安定性など複数の観点でランキングを算出する。調査主体は株式会社oricon MEで、方法はインターネット調査。暗号資産取引の評価が単一軸に収れんしにくいなか、利用者の実務的な体験に沿って評価項目を積み上げる設計は、事業者側の改善投資や差別化の論点を可視化しやすい側面を持つ。
bitFlyerは今回、現物取引、ステーキング・レンディング、証拠金取引の各領域で1位を獲得した。国内の暗号資産取引所は金融庁登録業者を中心に、現物取引で15社、証拠金取引で10社が競合するとの調査がある。利用者調査のサンプル数は、現物取引が6,526人、証拠金取引が496人で、年齢は20〜69歳、過去3年内に裁量トレード経験がある層を対象に含むとされる。評価軸が複数化するほど、提供領域を横断したサービス設計やサポート体制の一貫性が比較材料になりやすい。
調査では、評価項目の多段化により、暗号資産取引所の強みや特徴がどの領域で発揮されているかを読み解きやすくしている。調査の定義や対象者条件が明確化されることで、結果の解釈にあたっても、調査設計とセットで評価する必要性が高まっている。利用者にとっては、目的別に取引所を選別しやすくなり、事業者にとっては、自社サービスのどの部分が利用者から評価されているかを把握する手掛かりとなる。
bitFlyerは、安全性・信頼性・利便性への取り組みが利用者からの評価につながるとの見解を示した。暗号資産を「単なる投資対象ではなく」、ステーキングやレンディングといった仕組みを通じて新しい資産運用のインフラになりつつあると位置づけ、暗号資産の利用目的が多層化する局面では、売買のしやすさに加え、保有後の運用選択肢や継続利用の導線が事業者選択の判断材料として重みを増すとみている。
同社は2014年の創業以来、ハッキング被害ゼロを維持しているとする。国内ビットコイン取引量では9年連続No.1(2016〜2024年、差金決済および先物取引を含む年間出来高、JVCEAおよび各社公表データを基にした同社調べ)としており、取引量の蓄積がもたらす流動性や約定環境と、セキュリティに対する評価が同じ土台で語られやすい環境を築いてきた。取扱暗号資産数は38種類(2025年3月時点)との整理もあり、現物取引の銘柄数の多さが、取引所比較の起点となりやすい状況も続く。
他方で、取引所間の競争軸は銘柄数、手数料、UI/UX、ポイント連携など多岐にわたり、利用者層別に重視点が分かれやすい。オリコン顧客満足度のように評価項目を分解し、利用体験に沿って点数化する手法は、利用者が「何をしたいか」に応じて取引所を選び分ける行動を後押しする。評価軸の分離は、こうした比較行動の変化を捉えたものといえる。
bitFlyerグループは、bitFlyer USA Inc.、bitFlyer EUROPE S.A.を通じて米国・欧州で暗号資産交換業を展開するほか、株式会社bitFlyer Blockchainが独自ブロックチェーン「Miyabi」を開発・提供している。「Miyabi」は取引所上場トークンの基盤システムとしても採用されており、サービス提供領域が取引にとどまらず基盤開発までまたがる構図が、システム安定性やサービス継続性の評価と結び付けられている。
評価軸分離が進行
複数の観点から評価する調査設計により、取引所の選定は「売買」中心の比較から、運用手段を含む比較へ広がりつつある。ステーキングやレンディングは、暗号資産を保有した後に収益機会を得る仕組みとして位置付けられることが多く、利用者にとっては売買頻度とは異なる尺度でサービスを選ぶ動機になりうる。取引所側にとっても、売買の導線だけではない利用継続の設計が、評価項目のどこに反映されるかが焦点になっている。
調査項目が「使いやすさ」「サポート」「システム安定性」などに分かれる構造は、利用目的の多様化が進むほど、改善テーマの優先順位を細分化する材料となる。例えば、売買を主目的とする利用者は約定環境や操作性を重視しやすい一方、保有を軸に運用を検討する利用者は、運用メニューの分かりやすさや資産管理の安心感を重視する傾向がある。利便性と活用機会の両立を求めるニーズの高まりは、この重視点の分岐を背景にしている。
bitFlyerが示した「安全性・信頼性・利便性への取り組みが利用者からの評価につながる」との見解は、評価項目の分解と親和性が高い。利用者が複数の評価項目を手掛かりに比較する場合、事業者は機能追加だけでなく、運用プロセスや問い合わせ対応、システム稼働の安定など、定量化されにくい要素も含めた点検を迫られやすい。特に暗号資産取引所は、現物取引と証拠金取引で利用者のリスク許容度や取引頻度が異なり、同一ブランド内での体験の整合性が問われる。
評価結果の読み取りが調査設計の理解と表裏一体であることは、B2Bの実務にも影響する。暗号資産関連サービスの導入検討や福利厚生、ポイント連携などの周辺施策を含め、利用対象者や利用目的を切り分けたうえで、適合するサービス領域を照合する動きが強まりつつある。法人の導入判断においても、利用範囲に応じてどの評価項目を重視するかの整理が求められる。
暗号資産運用の競争軸
暗号資産取引所の競争は、取引機能の拡張だけでなく、保有後の運用や周辺サービスへ広がってきた。国内では登録業者を中心に複数社が並立し、比較軸が多段化しやすい。他社が銘柄数や手数料などで差別化を図る一方、bitFlyerは流動性やセキュリティを強みとして位置付けられる場面が多い。調査が複数の評価項目を採用するほど、こうした強みが利用者の重視点と接続しやすくなる。
取引所の評価は国内施策だけでなく、グローバル展開や基盤開発の有無とも結び付く。bitFlyerグループは米国・欧州で暗号資産交換業を展開し、グループ内でブロックチェーン「Miyabi」の開発・提供も行う。暗号資産は制度・市場の変化が速く、提供領域が広い事業者ほど、機能拡充と運用の整合を取る必要性が高い。オリコン顧客満足度のような利用者評価は、こうした運用面の積み上げがどの項目で可視化されるかを示す指標にもなりうる。
長期保有を前提にセキュリティを重視する投資行動が広がるなか、「ハッキング被害ゼロ」の実績は信頼獲得要因として強調されやすい。ステーキングやレンディングは長期保有と親和性の高い運用手段であり、売買中心の体験とは異なる評価軸を生む。この結果、暗号資産取引所のランキングや顧客満足の読み取りは、取引機能の優劣という単線ではなく、保有・運用・サポート・システムを総合的に捉える方向へ分散しつつある。
取引管理や法人営業の現場では、比較検討時に利用目的に応じた整理が不可欠になりつつある。現物取引、ステーキング・レンディング、証拠金取引のいずれを利用対象に含めるかによって、評価項目の重み付けや社内説明の論点が変わるためだ。bitFlyerが「2026年 オリコン顧客満足度(R)調査」で3部門首位を伝えた動きは、暗号資産取引関連サービス群の訴求軸を「売買」だけに寄せず、運用やサポートを含めた総合力へ広げる契機となりそうだ。
